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【U18】チャンピオンシップ3年連続準優勝。名古屋ダイヤモンドドルフィンズU18の強さの理由を探る【写真13枚】

「世界に通用する選手やチームの輩出」をミッションとするBリーグは、2021年からB1ライセンスの取得条件に「U18」を保有することを盛り込み、ユース世代の強化育成を進めている。

しかしながら、U18年代は高校の部活が主流で、多くのクラブが試行錯誤しながら環境整備を進めている過渡期にある。その中で、名古屋ダイヤモンドドルフィンズU18(以下、名古屋D U18)は、BクラブのU18チームNo.1を決める「B.LEAGUE U18 CHAMPIONSHIP」で、3年連続準優勝に輝くなど、同大会を連覇中のレバンガ北海道U18とともに先頭を走る存在だ。

名古屋D U18はいかにして「ユースの強豪」の地位を築いてきたのか? 名古屋D U18の大西順ヘッドコーチ、Bリーグデビューを飾った今西優斗選手、若野瑛太選手の取材から浮かんできたのは、「憧れの継承」というキーワードだった

 

プロ選手を身近に感じられる環境が選手の視座を上げる

夕方。練習を終えたトップチームの選手がまだ何人か残っている体育館に、次々とU18の選手が入ってくる。シュート練習を始めたU18の選手に、トップチームの選手がひと言ふた言声をかける。名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(以下、名古屋D)の練習場では、いつもの風景だ。

「最も大きいのは、ハードの面でもソフトの面でも、トップチームとアカデミーが接点をもって一緒にやっていこうというクラブの育成に対する姿勢だと思います」

名古屋D U18はなぜ強いのか? といういささか乱暴な問いに対し、U18のヘッドコーチ(HC)を務める大西順さんはトップチームのスタッフ・選手への感謝を口にした。 

 

 

同じ体育館やトレーニングルームを使用しているクラブは他にもある。それに加えて、名古屋DではU18の選手がトップチームの練習に参加する機会を多く提供している。プロのプレーを間近で体感することで、選手の目線は自ずと高くなる。

ユース育成特別枠選手の今西優斗は中学年生の時に、若野瑛太は中学3年次に初めてトップチームに参加した。その時のことを2人はこう振り返る。

 

 

「同じスキルトレーニングをしていても、一つひとつの質が全く違うと感じました。ドリブルやパスの強さも違いますし、ちょっとしたドリブルをつく位置の違いやステップなども常に試合を想定して細かいところまでこだわっている。ディフェンスのいない練習でも、自分で厳しい基準を設けて取り組んでいるところがすごいなと思いました」(今西)

「プレーの質もそうですが、一番驚いたのは声です。常に喋っていて、体育館がうるさいくらいコミュニケーションを取っていました。ユースでも『コミュニケーションが大事』と言われていましたし、自分はU15のキャプテンをやらせてもらっていたので、声かけには自信があったのですが、全然足りていないと感じました」(若野)

 

 

ナレッジを共有し、一貫性のあるバスケットを追求

アカデミーがトップチームと同じゲームコンセプトや戦術の一部を採用していることも名古屋D U18の特徴だ。大西HCらアカデミーのスタッフがトップチームのミーティングに参加するなど常に「ナレッジシェア」を図っている上、トップチームのショーン・デニスHCや梶⼭信吾GMもしばしばユースの試合に足を運ぶ。

 

 

「名古屋Dが目指しているバスケットボールという“幹”は、トップチームもU18U15U13も共通です。トップチームはスキルやアイデアなど”枝葉”が豊かですが、アカデミーはその枝葉を育てている段階。豊かな木を育てるために、私が最も重視しているのは『選手自身が自分で考えること』です」

「考える力」を身につける上でも、トップチームという一つの“模範解答”が身近にあることはプラスに働く。例えば、名古屋Dゾーンとマンツーマンを織り交ぜたチェンジングディフェンスを採用しているが、「ユースの選手たちが練習でできなかった部分があっても、トップチームを見て『こうやってやればいいんだ』『このタイミングで変えるんだ』と理解を深めることができます。だから、トップチームの試合をユースの選手たちは真剣に観戦しています」(大西HC)。

 

  

「ユース育成特別枠」を活用し、最年少でプロデビュー

「ユース育成特別枠※」を積極的に活用して、ユース選手をトップチームへのコールアップしていることも、有望な中学生が名古屋D U18を選択する理由のひとつだ。

※2022-23シーズンより、BリーグはBユースの価値向上と育成強化の促進を目的に新たにを設けた。自クラブのアカデミー所属選手を上限2名までトップチームにエントリーすることができる。

 

今西は高校年生だった202212月にユース育成特別枠としてトップチームに昇格。1224日のアルビレックス新潟BB戦でプロデビューを果たすと、同試合で初得点を挙げて、当時のB1最年少出場記録・得点記録(1610カ月19日)を更新した。

若野は20231028日の宇都宮ブレックス戦でBリーグの舞台に立ち、3Pシュートを決めた。当時今西が持っていたB1最年少出場記録・得点記録を16歳7カ月8日に塗り替えた。

「今西も若野も高校の部活からオファーがありました。でも、出口が見えない、誰も卒業してない段階で、名古屋Dなら高校の部活とは違う経験ができると信じて入ってきてくれた。彼らだけでなく、ユースを選んでくれた選手たちの気持ちに応えるために日々ベストを尽くすことが僕自身の目標です」と大西HCは強い使命感で指導にあたる。 

大西HCが言うように、特に進学時にはユース育成特別枠がなかった今西にとっては、賭けの要素もあっただろう。

「確かに今は、高校の部活の方が注目される機会が多いと思います。でも、高校・大学に進んだとしても、最終的にプロになることを考えたら、なるべく早いプロのレベルを感じられる環境に身を置いた方がいい。名古屋Dのユースはトップチームと同じような戦術も多いので、早い段階からチームルールに慣れることができるのも魅力でした」とユースを選び、その道を自らの力で正解にしようとしている。 

1学年下の若野も「ギリギリまで悩みましたが、ユースを選んだ一番大きな理由はプロに近い環境があること。あとは、(今西)優斗とずっと一緒にプレーしてきて憧れている部分もあったので、高校でも一緒にプレーしたいという思いもありました」と今西の切り開いた道をより確かなものにしようとしている。

 

チャンピオンシップを刺激に、U18の頂へ

2023-24シーズン、名古屋Dのトップチームは初の地区優勝を飾り、ホームでチャンピオンシップ(CS)のQFSFを戦った。今西と若野は出場することはなかったが、ロスター入り。「高校生でCSを経験できたのは日本の中でも僕たちだけ」と若野は胸を張る。

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