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“カラフル”すぎる選手たちがしっかりと混じり合ってきれいな色を作り上げたい【ファイティングイーグルス名古屋・笹山貴哉インタビュー】

B2時代から所属する唯一の選手であり、昨シーズンからキャプテンを務める笹山貴哉。今シーズン、大幅に若返ったチームで、ベテランの域に差し掛かった31歳の司令塔が果たす役割は大きい。

10年間のプロ生活で考えてきたことや若手選手に期待することなど、冷静で穏やかな語り口の奥に隠された情熱を探った。

(インタビューは9月9日に収録)

 

Contents

 

ケガ人が出たことを成長につなげられたシーズン

 

―今シーズンのファイティングイーグルス名古屋(以下、FE名古屋)は大幅に選手が入れ替わり、B2時代から在籍しているメンバーは笹山選手だけになりました。

笹山貴哉選手(以下、笹山):毎年メンバーが入れ替わっていますが、ヘッドコーチが変わっていないこともあって、継続性をもってチームづくりができていると感じています。

昇格して年目の202223シーズンは昇格メンバーでB1を戦って、B2B1のギャップに苦しみました。年目となる昨シーズンはB1でのプレー経験がある選手が入ってきて、FE名古屋が目指しているバスケを遂行できるメンバーが揃った感触がありました。

開幕前から上位を狙えるシーズンだと手応えを感じていたので、チャンピオンシップ(CS)に出られなかったのは非常に悔しかったです。「一勝の重み」を痛感したシーズンになりました。今振り返ると、僕たちには大事な局面で上位チームに勝ち切れる力がまだなかった。それが最終的にCSに届かなかった要因の一つだと思います。

―序盤にケガ人が多く出たことが悔やまれますね。

笹山:バスケにはある程度ケガはつきものなので、全員が揃った状態でシーズン戦うのは難しいとは思います。昨シーズンの前半戦はケガ人が相次いだことで、FE名古屋が武器にしてきた帰化選手のエヴァンスルーク選手と外国籍選手人が同時にコートに立つ「オン3」が生かせませんでした。でも、それがいい方向に向かい、日本人選手に自分たちがやらなければという意識が芽生えたとも思っています。ケガ人がいたから苦戦したというより、それがあったから日本人選手の成長が見られたとプラスに捉えています。その結果、戦力を落とさずに最後まで戦うことができました。

 

―個人的にはどのようなシーズンでしたか?

笹山:1番(PG)でプレーする時と番(SG)の時と、試合の中でも役割が頻繁に変わり、状況によって自分のやるべきことを変えながら結果を残さなければいけない難しさがありました。新しいチャレンジができて、自分にとってよい経験になりました。

―前所属の名古屋Dではスタートで出ることが多く、FE名古屋では途中から出場することが多くなりました。その違いに難しさを感じることはありますか。

笹山:途中から出る場合は常に準備をしておかなければいけない大変さはありますが、やりがいもあります。悪い流れを変えるのは比較的やりやすいのですが、一番難しいと感じているのは、よい流れの時に交代して、相手に流れを渡さないこと、そのままよい流れを継続させることです。よい流れを加速させようと積極的にプレーをして、うまくいかなかったら、交代前の方がよかったという評価になってしまう。そういう時に限って、相手のシュートが連続で入ったり、自分たちのシュートが入らなくなったりすることが多いんですよ。そこに関しては、今シーズンも悩むんじゃないかなと思います。

―バスケットボールは流れのスポーツと言われますが、プロ10年の経験があってもいかに流れを引き寄せるかを試行錯誤されているのですね。その中で、こういう方法でうまくいったというような、笹山選手流のよい流れを継続させる方法はありますか。

笹山:FE名古屋はディフェンスから走るというチームのスタイルがあります。5人全員でディフェンスをして、リバウンドをみんなで取って、そこからみんなで攻める。だから誰か一人が単発で攻めるより、チームでプレーできているときは流れがよくなることが多い。コートにいる全員にチームでプレーすることを意識させるのは一つの方法だと思います。

あとは、どれだけ流れが悪くても、得点が入れば流れを切ることができます。得点が止まったときにチームを助けられるように、1点でも2点でも、力づくでも、どれだけ遠くから打っても、大事なところで決め切れる力は持っていたい。

どれだけいいドリブルをしてもパスをしても、最後のシュートを外してしまったら得点にはなりません。最後のシュートだけは個人の技になるので、僕自身もシュートの確率はすごく意識していますし、周りの選手にも常々責任を持って決め切らなければいけないという話をしています。

  

悪い時期をいかに短くするかを意識するようになった

 

―昨シーズン、キャプテンに就任されましたね。

笹山:昨シーズン、川辺(泰三)ヘッドコーチから「キャプテンをやってくれないか」と打診されて。メンバーを見ても僕か根來(新之助)さんかなと思っていたので驚きはなかったです。小学校、中学校、大学ではキャプテンの経験はあったのですが、プロでは初めてのキャプテン。でもプロ選手はそれぞれがしっかりしているので、特別にやることはありません。

あえて言えば、オンコートでもオフコートでも周りを見る意識は高くなったかなと思います。結果が出ないときはどうしてもチームの雰囲気が悪くなったり、選手もマイナスの感情に陥りがちです。キャプテンになったからかはわかりませんが、いかに悪い時期を短く終わらせるかは意識しました。今シーズンはさらに若い選手が多くなったので、うまくいかない時期をいかに短くするかがより大事なテーマになってくると思います。

―実際にチームの雰囲気が悪い時期に、キャプテンとしてどのようなアクションをしたのですか。 

笹山:昨シーズンも何度かあったんですけど、連敗をするとどうしても『自分たちのやっていることは正解なのか』という迷いが出てきます。選手はそれぞれ自分なりの正解を持ってプレーしています。ただそれがチームの方向性とは違っていることもあります。そうしたときに、どういう言葉をかけるのか、どのようなタイミングで声がけをするのかがすごく重要になると思うんです。それぞれの意見を否定することなく、「こういう考え方もあるよ」と選択肢を増やすことで若い選手の成長につながればと考えています。 

―素晴らしいですね。そういう接し方は学生時代にキャプテンをしてきた経験によって培われたのですか。

笹山:学生時代というよりはプロになってからの経験が大きいと思います。僕は今年でプロ10年目なのですが、僕は若いときから試合に出させてもらっていて、当時は自分が全て正解だと思ってプレーしていました。若気の至りじゃないですけど、自分が正解だと思っていることをすぐに口に出して、苦労した経験もあります。伝え方次第で、相手が歩み寄ってくれるのか離れていくのかが変わります。僕は若い頃に手痛い失敗をたくさんして、それを学びました。

僕はキャプテンとして、絶対に言わなければいけないことはたとえ嫌われたとしても言います。でも場合によっては、僕が直接言うよりももっと年上の人の言葉の方が響くこともあります。例えば、僕はカルバン・オールダムアシスタントコーチのことを人間的にもとても尊敬していて、どんな風に接したらいいのかと相談をしたり、選手への声かけをお願いしたりすることもあります。カルバンも「頼ってくれ」と言ってくれているので、すごく頼りにしています。

 

 

 自分のプレーを言語化することで、プレーの選択肢が広がった

 

―笹山選手は現在31歳、ベテランと呼ばれる域に入りつつあります。年齢を重ねることで、バスケットボールとの向き合い方に変化はありますか。

 

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