肉体&意識改革で飛躍。司令塔・ 久保田義章 がバイウィーク明け連勝に導く【2024-25シーズン 第9節】
りそなB1リーグ第9節
Game1 三河 84-67 横浜BC、Game2 三河 83-65 横浜BC(刈谷市体育館)
「たまたまです」
取材中、何度この言葉を口にしただろうか。
「体勢は良くなかったけど、時間がなかったので打ったら、たまたま入りました」
「今日はたまたま運が良かった」
「今日はたまたま目の前の道が開いていた」
「うちのチームは能力の高い選手が多いので、たまたま自分が空いた」
バイウィーク明けの横浜ビー・コルセアーズ戦、Game1で18得点、Game2で17得点を挙げて、連勝の立役者の一人となったシーホース三河の司令塔・久保田義章。シーズンハイの活躍にも「たまたま」と平然としているのは、「まだこんなものではない」という自信の裏返しのように感じられた。なぜなら、今シーズンの活躍が偶然ではないことは本人が一番知っているはずだから。
躍進を支える身体と心の変化
昨シーズン、シーホース三河に加入した久保田は、ライアン・リッチマンヘッドコーチ(HC)やベテランポイントガード(PG)の柏木真介の薫陶を受け、「PGとしてコントロールすべきところやオフボールの動き方の部分をたくさん教えてもらい、PGとしての本質的な部分で成長できた」。しかし、初めてのチャンピオンシップには怪我の影響もあり、万全の状態で臨むことができなかった。
不完全燃焼に終わった久保田は、2シーズン目を迎えるにあたり、肉体改造に取り組み、体脂肪率を10パーセントまで落とした。リッチマンHCも「この夏一番変化があった選手。身体が強くなったし、スピードが速くなった」と絶賛。久保田も「身体が動いている」と自分自身の変化を実感している。
変化したのは身体だけではない。佐古賢一チームディレクターはオフ明けの久保田を見て、「身体が変わったということはマインドが変わったということ。普段トレーニングをしている人がさらに体脂肪率を落とすためには、食事も生活のリズムも変えなければいけない。昨シーズンは、僕がたまに焼肉屋に行くと必ず義章がいたから、相当通っていたと思う(笑)。そういうことも我慢をしながら、この夏の3ヶ月であれだけ改革したというのは、本気でバスケに向き合ったということ。ここからチャンスが始まる」と飛躍を予言していた。
得点だけでなく、的確なゲームメイクが光る
「今シーズンは、得点を取ることにフォーカスしたい」と話していた久保田。その言葉の通り、平均得点は昨シーズンの6.1点から9.8点と伸びているが、それ以上に際立つのはゲームメイクの的確さだ。自分で得点するところと周りの選手にパスを出すところのバランスや、速く攻めるところとセットで落ち着いてプレーするところの緩急。横浜BCのラッシ・トゥオビHCも「三河はペースを上げたり下げたりするタイミングがすごくよかった」と称賛していた。
判断の良さは数字にも表れている。平均約23分プレーしながらターンオーバー数は脅威の0.5。ターンオーバーあたりのアシスト数は5.9(昨シーズンは3.0)で、三遠ネオフェニックスの大浦颯太(7.2)に次いでリーグ2位につけている。
ゲームメイク力の向上の裏には、今シーズン加入した須田侑太郎の影響があったと久保田は明かす。
「すっさん(須田)とは試合中はもちろん、試合後やオフコートでよく二人で話をするんですけど、『もっとポイントガードがチームメイトを集めて話をしたり、PGの自分がセットプレーをコールして、オフェンスを作って、チームを動かした方がいい』とアドバイスをくれました。それもあって、試合中に自分から発信できるようになってきています。
プレーの判断も昨シーズンよりもできていると思いますし、ペースの上げ下げも特に意識せずにできているので、相手のHCにそう言っていただけるのは嬉しいことです」
須田は久保田に助言をした意図をこう説明する。
「昨シーズン、外から三河を見ていて、主にライアンHCが指示を出しながらプレーしているという印象があったんですけど、選手一人一人の特性を考えると、流れでオフェンスに入った方がこのチームにはいいなと感じていました。だから、『PGであるヨシ(久保田)がもっとプレーコールをすべきだ』とヨシにもライアンにも話をしました。選手内でしっかりとコールをして流れでオフェンスに入っていくことで、曖昧なプレーが減ってきて、いい形でプレーできる時間が増えてきていると感じています」
バイウィーク中にも「5on0などで、ディフェンスのいい流れの中からセットコールをしたり、セットコールをせずに流れのままに臨機応変にみんなで考えながらバスケをする練習をして」(久保田)チームの連携を高めてきたという。
「たまたま」ではなく、強い意志で。三河の正PGは、強気に、でも的確にゲームを動かし、チームを勝利に導いていく。