近藤真市 監督(岐阜聖徳学園大)インタビュー 第1回
愛知野球通信plusの特集記事の第2弾。
前回は静岡大の佐藤選手にインタビュー。
今回は岐阜聖徳学園大の近藤真市監督にインタビューをさせていただきました。
※プロフィール
近藤真市(こんどうしんいち)
愛知の享栄高校から5球団の競合の末ドラフト1位指名で中日ドラゴンズへ。
今後も達成者が出ることは無いであろうと思われる、高卒新人プロ初登板ノーヒットノーランを達成。
そこからの度重なる怪我による低迷、挫折。復帰登板を果たすも1994年に引退となり、1年間の打撃投手を経てスカウトに転身し、岩瀬投手ら好選手の獲得に貢献。
2003年から投手コーチに就任し、中日の黄金期を支え、再度2019年からスカウトを経験後、2022年から岐阜聖徳学園大の監督へと就任します。
今回のインタビューではこの2年間の大学監督生活の振り返りから、ドラフト指名時の裏話、現役の時の怪我の証言、スカウトの時の話、コーチングや育成についてと様々なことをお話いただきました。
アマチュア野球ファン、中日ドラゴンズファン、プロ野球ファンにとっても貴重なお話の数々になります。
是非お読みいただければと思います。
全3回でお送りします。
その第1回。こちらは無料記事でお届けします。
〇監督になっての2年の振り返り
-本日はインタビューを受けていただきありがとうございます。
この度「愛知野球通信plus」というサイトを立ち上げました。
その際に目玉が欲しいということで、自分の年代(40代、50代の方)には大スターである近藤監督のお力をお借りしたいと思いまして。よろしくお願いいたします。
いえいえ、お力になれるかは分かりませんが、光栄ですよ。
-それではまずは監督に就任されての2年間を振り返っていただけますか?
スタートがねぇ。ラグビーみたいな試合で。(リンク参照)
※2022年の近藤監督の船出。注目された試合は、3回表に10点、その裏に9点という大荒れの試合に。結果22-16というおおよそ野球のスコアとは思えない試合となりました。
結構難しいな、というのが最初の実感ですよ。あんな試合になるなんて夢にも思わないですし。

監督最初の試合が忘れられない試合に。
-自分も観戦していましたが、あんな点を取り合う試合は初めてでした。
自分の野球人生でも初めてですよ(苦笑)。俺らしいといえば俺らしいのかもしれないですけど。
そこから試合展開をどう組み立てていくかも色々考えました。監督業自体初めてでしたし、難しいながらも色々工夫しながらの2年間だったと思います。
-成績は2022年春が3位、2022年秋が2位で東海地区代表決定戦進出(1回戦敗退)、2023年春と秋がともに2位という結果でした。あと一歩といえばあと一歩でしたが。
(岐阜大学リーグは勝率制のため)どうしても各チームと2試合しかやらない。(1敗が響くという)難しさはあります。
これで3季連続の2位。それぞれ優勝チームは違う(2022年春が中京学院大、2022年秋が岐阜協立大、2023年春・秋は中部学院大)のですが、ワンチャンスだとは思うのですよね。ここを勝ち切れば、という勝負所で力を発揮する経験が本学生たちにまだ足りない。
この秋は最終週で連勝すれば優勝、というところで勝ち切れなかった。ただ緊迫した戦いが出来たこと、悔しさを直接経験したことはプラスでしょう。4年生は引退してしまいますが、3年生以下はこの経験をどう来年以降に浸透させてくれるかにかかってくるかと思います。
ただ自分としては最後中部学院大に連敗したわけですけど、その前の週に朝日大に勝ち切れなかったこと。(1勝1敗)これが一番痛かった。
-そこを勝っておけば優位な状況で最終節を迎えられた。
ただ、中部学院大さんはそこを経験してきていた。春の代表決定戦では3日間に及ぶ激戦をしていたし、全日本大学選手権で2勝。JABA高山大会では社会人チームに食らいついた。そういう経験があるから物怖じしないんですよ。堂々としていました。強かったですよ。
-来年も中部学院大が強いというイメージはありますね。
3年生がいっぱい残っていますしね。だからといって諦めることはないです。勝つために何が必要か、新チームのスタート時に選手に話をして。まぁ打倒中部学院大で頑張ります。ただもちろん、他の大学も力をつけてきますし、そこにも勝たないといけないわけですから。
-秋は朝日大も強かった。
(朝日大は)運もありましたが、勝つことで乗っていった印象はあります。朝日大さんは4年生がかなり抜けるので、来年どうかは分かりませんが、どこも力は付けてくるでしょうし。
うちはどことやっても同じ戦いになる(苦笑)。大体競った試合になるので、そこをどう勝ち抜くか。ただ、競り合いを勝てば強くなる。長打を打つ打者がそんなにいないというのもありますが、そういう野球を僕は目指していますね。
〇監督になったきっかけ
-それでは監督になられたきっかけというのを教えてください。熱心に岐阜聖徳学園大側から誘われたというのは記事で読みましたが。
中日のスカウトをやっている頃、岐阜聖徳学園大の関係者の知人の方から連絡があり一度会ってほしいという方がいると。関係者の方とお会いしたのがスカウトに復帰して3年目(2021年)の1月。その際に今度監督をやってほしいと話をいただいて。
自分もずっと中日一筋でやってきて、当然恩義はある。ですから即答は出来ないですし、自分が取ってきた選手もいるわけで、その子たちを置いて出ていくのはどうか、というのもあった。
その年の11月がリミットだったので、家族にも相談して。じゃあやってみるかと。
-では監督を受けるとなってから中日に話をした形でしたか?
そうですね。近しい人には話をしていましたが、監督を受けるとなって、代表とか社長に話をした形でした。社長からはスカウトの幹部で考えていたけど残念という言葉をいただきましたが。こういう話はやりたくてもなかなか無いと思うのですよ。そんな中(お話を)いただけたというのはありがたかったな、と思います。
-監督業をやりたいという思いはあったのですか?
全然。特に無いです。ないけど・・・。こういう話っていうのはほんとにきっかけで。スカウトをやっていた時に、この子に教えたいな、と思うことはあるんですよ。ちょっとここだけ変えたらいいのに、とか。でもアマチュアには(中日にいる限り)教えられないわけで。そういう意味では今の立場だと、そういう事も言えるわけですし、触ることもできるので。でも大学の監督なんて夢にも思ってなかったです。
-そういう話が無ければそのままスカウトを続けていましたか?
そうですね。ドラゴンズに35年お世話になっていたわけですし。
-中日以外の世界を知らないといったら失礼ですけど、出ることへの不安とかは無かったですか?
でもスカウトをやっていたので、色々なアマチュアの現場を見ていました。それはいい勉強になっています。ほんとに厳しくやるところもあるし。うちなんかはのびのびやっていますけど。だからうちは明るいでしょ。
-本当にそうですね。挨拶とかはみんなしっかりしているな、と思いましたが。
挨拶は絶対にしなきゃいけない。そこは厳しくやっている。挨拶、礼儀。
-それこそ近藤監督が現役の頃は手を出す指導が当たり前でした。
当たり前当たり前。いいえ、が無いので。(きつく言いたくなることは)しょっちゅうです。でも我慢して抑えて。言葉を変えながら本人と話をしています。
-外部の人間が見ていて、ですが、岐阜聖徳学園大の中でコーチングスタッフと上手くコミニュケーションを取りながらやられているな、と思っていました。
任せるから、ですよ。野手は岡崎コーチと竹中コーチに任せているし。ピッチャーは僕と近藤コーチで見ている。近藤コーチも(これまでも)勉強してきているはずなので、僕が教えていることを見て勉強をしてくれればいいですし。いずれはOBとかが監督等を中心でやることになっていくと思うので、その土台はしっかりと作り上げていかないといけないな、と思っています。
-結構新しく監督になられると、自分のやりやすい人を連れてきてやられることが多いかな、という印象ですが。
全然。僕はお任せして。岡崎コーチとか一昨年までベンチに入ってなかったそうなので。岡崎コーチは社会人までやられて監督の経験もある方なので、その知識は使うべきですし。経験値は大事です。
-近藤監督はプロ野球の世界でずっとやっていて、アマチュアの学生野球と違う部分もあったかと思いますが。
ん~。でもどちらもそんなにやることは対して違わないというか、当たり前のことを当たり前にやっているだけ。自分の采配を見て思いません?奇襲をしかけたりとかないでしょ?
-そうですね。
それがピッチャーって一番嫌なんですよ。僕は自分がピッチャーでマウンドにいたら何が一番嫌か、を考えて采配を行っています。でも攻撃型のサインもあります。そこは岡崎さんですよ。そこでどっちをチョイスするか。話し合いをしながら(作戦を)チョイスをしていきます。それが今のところ上手くいっているかなと。外れる時もありますよ(笑)。スチールでもこうなったらこうだよね、と思いながらサインを出します。学生たちには分からないでしょうけど、こうなったら牽制ないよね、というのは(これまでの経験で)わかりますので。しぐさだとか。(学生たちは)そういうのを気付かないのかな、と思いますが(笑)。
-実際に中日の落合監督時代がそうでしたよね。最初に川崎先発という奇襲をやりましたが、それ以外は当たり前の采配しかしていないという感じで。
当たり前の野球をするのが一番いいですよ。そうすればミスも少なくなるし、相手がミスしてくれれば大量得点になるし。だから守備のミスでも出た方が絶対に負けます。
僕も普通のことをやります。厳しくこうやれとか何も言ってないですし。
-結局当たり前のことができるのが一番強いですよね。
そりゃそうですよ。それが一番難しいですが。派手なプレーなんていらないですよ。
-プロに行くような選手が出てきたらまた違うかもしれませんが・・・。
それはそれでいいかも知れないですけど。そういう選手を集めて全国に行きたいという気持ちはあるけれども、まずうちの大学でやりたいという子を取って育てていきたいと思う。そうすると人は増えてくる。増えたら増えたで別の心配も出てきそうですが。(笑)
第1回はここまで。
第2回はプロに入るところからスカウト業についての話となります。