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スカウティングコーチ堀部寿貴「やってやれないことはない—。〝敬意と謙虚さ〟大切に」インタビュー【無料記事】

伝えることの重要さを学んだ

これまでの仕事で、大変だったことはありましたか。
最初は、竜三さん(安齋HC)が求めている映像を抜き出すのが難しかったです。今も確認しながらやっているので、まだまだですね。

もう一つは、トップでプレーしている選手たちに、一体何を教えたらいいのかと考えることがありました。竜三さんは「何でもやってみた方がいいよ」という方なので、まずは自分で考えて、分からないところは聞きに行ってということの繰り返しでした。もがきましたね、この1年は。

あと、竜三さんに言われて印象に残っている言葉があって。スカウティングは、作る準備と伝える準備というのがあるんですけど、僕は映像を編集するという、作る準備の方に時間を費やしていたんです。でも、ミーティングでは、それをうまく伝えることができませんでした。なぜかというと、伝え方の準備が足りなかったからなんです。

竜三さんには、「作ることもよりも、伝えることの方が重要だよ」と言われて、どんなに時間を掛けて映像を作っても、選手が理解していないと意味がないなと気付きました。自分の伝え方によって選手の理解度が変わるわけで、竜三さんに「準備の割合を考えなさい」と言われました。

 

―そう言われて、どういうふうに変えたのですか。
ミーティングの2日前ぐらいに、家で一度通しでしゃべってみることにしました。前までは、映像が流れても、ここで何て言えばいいんだっけ?と行き詰まることもあったんですけど、準備の段階で自分が言いたいことが整理されるので、ミーティングでは思ったことをきちんと言えるようになりました。

 

―そういう時、選手は黙って聞いているのですか。それとも、ディスカッションなどもあるのですか。
みなさん静かに聞いてます。でも、僕としては何か言っていただきたいです(笑)。質問があったら、どんどん聞いてほしいです。

 

探求心を刺激される仕事

この仕事の面白さはどんなところに感じますか。
まだまだ、できないこと、知らないことが多いんですけど、そこに面白さを感じています。 探求心を刺激されるというか。それと、僕が常に心掛けていることは、今、このような歴史ある素晴らしいチームで当たり前の様に仕事をさせていただいていますが、それは当たり前じゃないんだということです。

このチームは僕なんかがいられるような場所ではないと思っているので、敬意と謙虚さを持つことが重要だと思っています。それにプラスして常に感謝の気持ちを持つこと。いろんな人との出会い、つながりでここまで来られたので、感謝の気持ちは絶対に忘れずにいたいです。

 

理想としているスカウティングコーチなどはいらっしゃいますか。
名古屋でユースコーチをされている末広朋也さんという方です。末広さんは、長い期間、代表のアナリストをやられていて、僕が大学の時に代表のお手伝いをしたことがあったんですけど、その時にお会いして、すごく影響を受けました。先日も末広さんに会いに名古屋に行き、練習を見学させていただきました。

 

―お話を聞いていると、いろんな方から刺激を受けているようですが、これまで恩師などから言われて影響を受けた言葉などはありましたか。
中学の校長先生に言われた「与えられた場所で頑張りなさい」という言葉は印象に残っています。どんな場所に行っても自分の最大限の力を出すということを大切にしています。

高校時代、バスケット部の監督に言われたのは、「やってやれないことはない。やらずにできるわけがない(※平櫛田中という近代日本を代表する彫刻家の言葉)」。何かにチャレンジする時には、出来なそうだなと不安になることもありますが、やらなきゃ何も生まれないし、失敗しても何か得るものはあるので、行き詰まった時に、この言葉が僕を導いてくれました。

 

 

 

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