グッズ企画・制作 田代智子「“グッズを身につける文化” を、ファンの方々と一緒に創り上げることができた」インタビュー
宇都宮ブレックス グッズ企画・制作 田代智子さん
スタッフさんのお仕事紹介! Vol.4
「このグッズ、やばい! かわいすぎてマジでやばい!」と、テンションが上がるブレックスグッズの一つや二つや三つや四つは、誰にでもあるかと思います。そうしたグッズの企画・制作を担当しているのが、田代智子さんです。ブレックスが創設された当初からチームのファンだったという田代さんは、社員になって8年経った今も、チームへの愛と “応援する気持ち” をグッズという形に変えて、魅力的なグッズを作り続けています。(文・藤井洋子)
グッズを通してチームを応援
―現在のお仕事内容を教えてください。
グッズの企画・制作を担当しています。どのようなグッズを作るべきかを考えて、制作会社に「こういうものを作りたいです」とこちらからお願いすることもあれば、制作会社から提案を受けることもあります。
私はデザイン会社で働いていたこともあるので、グッズの企画・制作以外にもチームのポスターやブレックスをPRするデザイン制作物も作っています。
—ブレックスに入社されてからは、ずっとグッズの担当をされていたのですか。
2013年に入社したので今年で8年目になるのですが、私が入社した当時は今ほどスタッフもいなかったので、何でもやっていました。しばらくは試合会場でグッズの販売もしていました。Bリーグになってからは徐々にスタッフも増えきて、分業できる体制になってきたので、今は制作メインで仕事をしています。
—田代さんは、入社前からブレックスのファンでしたよね。
JBL2の時からずっとファンで、試合もよく観ていました。自分がブレックスのファンだったということももちろんあるのですが、地元、栃木県にプロバスケットボールチームができるということ自体がすごいことだと思っていたので、何かしらの形でチームに関われたら楽しいだろうなと思っていました。
—8年目というとフロントスタッフの中でもベテランになると思うのですが、最初の頃は苦労されたこともあったのではないですか。
本当にスタッフが少なかったので、売りに行って、作ってと、目まぐるしい日々でした。アウェーゲームでもグッズ販売をしていたので、体力面では少しきつかったです。まぁ、若かったから大丈夫でしたけど(笑)。
今でこそグッズが売れるようになってきましたが、ここに至るまでには売れない時期もあったわけで、どうしたらファンの皆さんに喜んでもらえるのだろうかと、すごく考えました。
ロット(生産するための最小単位)が足りなくて作れないとか、作りたくても売れる数を作れないなど、在庫を残さない適正な数を考え抜く苦しみはずっとありましたね。それが今は、作りたいものが作れるようになってきて…。というか、ファンの皆さんに作らせてもらっているという感じです。
—買ってくれる人がいるから作れるわけですものね。売れるようになったなと実感できたのはいつ頃でしたか。
私が入社したのがNBLになった年なのですが、そこから徐々に売れるようになって、Bリーグになる前年ぐらいからは、多くのファンの方々に喜んでいただけているという手応えは感じていました。その頃は売り場にも立っていたので、直接ファンの方々の反響をもらうことも増えました。反響をもとに「こうやったらもうちょっと購入していただけるんじゃないかな」と、工夫しながらやり始めたのもその頃です。
その後Bリーグが開幕して幅広いファンの方々が観てくれるようになったことで、その手応えをより強く感じられるようになりました。Bリーグ初年度はチームも優勝したので、さらに勢いがついたのだと思います。
—実際に試合会場でお客さまと接していたわけですが、その頃の印象的なエピソードなどはありますか。
会場が黄色いTシャツを身に着けたファンの皆さんで埋まった景色を見た時はうれしかったです。私自身はグッズを通してチームを応援しているという気持ちが強かったので、それが選手に伝わって、ちゃんと応援になっていると思えた時は、「やったな」という感じがしました。
あとは、ファンの皆さんに、「ブレックスのグッズはいいね」と言ってもらえるのはとてもうれしいことです。購入していただけるということは、欲しいと思ってもらえたグッズということですし、それが結果として出ているのでやっぱり売れるとうれしいです。
ロシター選手の記念Tシャツは反響大
—最近のヒット商品には、どんなものがありますか。
少し前に出した(ライアン)ロシター選手の記念Tシャツはかなり反響がありました。でも、私たちは「ヒットを出そう!」と思って作っているわけではないんです。売れるのはロシター選手やチームが活躍した結果であって、それを少しでも身に付けて楽しんでもらえるものを…と思って作っています。
—ブレックスに限らず、一般的に外国籍選手単体での商品は売れづらいということを聞いたことがありますが、ブレックスはそういう感じではなくなってきましたよね。
以前は、外国籍選手が定着していなかったというのも大きいと思います。今は「ブレックスと言えばロシター選手」というように、チームの代名詞のような存在ですからね。もちろん、ほかの選手のグッズもそれぞれ人気があるので、本当にブレックスファンはすごいなと思います。
—自分では自信がなかったけど反応が良かった商品、逆に、自信を持って作ったのに、あまり売れ行きが良くなかった商品などはありましたか。
あまり言いたくないですけど、いっぱいあります(笑)。例えばカーサイン。「BABY IN CAR」で、すごくかわいいデザインができたのですが、いろんなバージョンがあった方が楽しいだろうなと思ってブレックスのロゴバージョンとか、いろいろと種類を作ったんです。
それでも、私の中では「BABY IN CAR」が一番売れるだろうと思っていたのですが、結果は、これが一番売れませんでした。思い入れって怖いなって思いました(笑)。
—結果的に何が一番売れたのですか。
「BREX FUN IN CAR」というカーサインが一番売れました。よく考えれば、確かにそうなんですよね。皆さんブレックスのことを応援しているわけで、応援している方の中でお子さんがいて、ちょうどこういうカーサインを使う時期となると圧倒的に人数は少ないわけで。
こういうことは結構ありますね、思い違いというか(笑)。でも、こういったものも昔だったら1種類か2種類ぐらいしか作れなかったのに、それを何種類も作れるようになってきたことも、うれしいんですよね。
—この仕事の醍醐味や楽しさは、どんなところに感じますか。
自分がデザインしたものを購入してくださる方々がいるということがまずうれしいです。SNSでTシャツを着て「〇〇に行ってきました!」というような投稿を見ると、本当にうれしいですね。生活に溶け込んで楽しんでもらえているんだと思うと、すごくやりがいを感じます。
選手のことをより知ってもらえるようなグッズを
—会場の中で身につけてくれることはもちろん、さらに一歩進んで街中でも身につけてくれるというのは、デザイナー冥利に尽きますね。個人的には、新グッズ発表のスピード感がすごいなと思っているのですが。毎週のように新しいグッズが登場するのって、ブレックスぐらいじゃないですかね。実際、アイデアから形になるまで、どのような流れでやっているのですか。
うちの場合は、承認が早いというか、「やるぞ」となるとすぐに取り掛かれるのが大きいと思います。あとは、長年制作で関わってくださっている企業があって、「こういうものをいつまでに売りたいです!」と言うと、それに合わせて作ってくれるんです。本当だったら、「そんなにすぐにはできないよ」と断られるところを、「いいよ」と言って協力してくださる。そんな関係を築けたことが良かったのかもしれません。
—グッズの企画や制作は外注しているチームも多いと思いますが、ブレックスは社内で制作できるので、それもスピード感に違いが出る要因かもしれませんね。
実働は外に依頼となると、なかなか決済まで時間が掛かったりしますが、社内にデザイナーがいるのですぐに制作もできますし、そこは大きいかもしれませんね。その分、思い入れも強くなりますし。
—企画・制作の段階で、テーマにしているようなことはありますか。
直感で作りだす時は、“自分がほしいもの” なんですけど、やっぱり “ブレックスらしさ” ということを大切にしています。
あと、これを言うと怒られてしまうかもしれませんが、選手のことをより知ってもらえるようなグッズだったら、たとえ、それほど数量は売れなくても作りたいなと思って、押し通しちゃうこともあります(笑)。
—突っ込まれることはないですか。
「売ります! 頑張ってきます!」と言いきります(笑)。「絶対に出した方がいい。今は売れなくても、後々チームにとってあった方が絶対にいいから」と話して、説得します。
—熱意を伝えるわけですね。
もちろんリスクヘッジもします。受注生産にするなど、あまりロスが出ないようにしています。
結局「ブレックスファンの皆さんはすごい」という結論に
—チームの収益の中でもグッズが占める割合は、かなり大きいですよね(売上の12%:2019年6月期決算)。Bリーグ内の他チームと比べてもこれは特筆すべき点ですが、担当者としてはその辺りをどう受け止めていますか。
本当にありがたいです。数や購入者層など、数字的な部分も当然見ますが、「なぜ売れているのか」の答えにはいつも辿り着けなくて、結局「ブレックスファンの皆さんはすごい」っていう結論になるんです。
野球やサッカーと比べても、バスケットは会場に入れる人数は少ないじゃないですか。その中でグッズを購入される方の割合が、他のスポーツの比じゃないぐらい多いという話を聞いて、それだけ多くの方が買ってくださっているんだなと実感しました。
—それはバスケットというスポーツ全体がそうなのではなくて、ブレックスというチーム独特のものでもあるんでしょうね。
おそらく、ブレックス特有だと思います。
—そこまでブレックスのグッズが売れるようになったのは、なぜだと思いますか。
“グッズを身につける文化” みたいなものを、ファンの方々と一緒に創り上げた感じはしますね。グッズを持って応援することや、グッズを買うこと自体がチームのためだと思ってくださる方も多いです。そういうことが積み重ねられて今があるような気がします。
—まさしく、ブレックスは “グッズを持って応援する文化” を醸成していったチームですよね。セールス的にもうまくいっているということでもありますが。
2019-20シーズンでは、毎試合新商品を発売するというチャレンジをしていましたが、絶対にそうしようと思って始めたことではなくて、少しでもファンの皆さんに楽しんでもらえるようにとの思いでやり続けた結果です。それを一緒に楽しんでくれるファンの方々が、やっぱりすごいなと本当に思います。
どこかに必ず「いいな」と思えるポイントがあるもの
―ブレックスのグッズは、“かわいい” と “かっこいい” のふり幅も大きいですよね。グッズとして販売するにあたり、基準のようなものはあるのですか。
基本的には、ブレックスのファンの皆さんに買ってもらうものなので、皆さんのテンションが上がるもの。そう考えると、色で言えばブレックスカラーの方がいいかなと思いますし、一方で、普段使いを考えて、商品によってはカラーを変えてみたりもしています。
“かわいい” と “かっこいい” は、満遍なくですね。ブレックスファンの割合で言うと、女性が多いので、少しかわいい寄りが多いかなと思っています。私自身もかわいいものが好きで、どうしてもかわいい方に寄ってしまうので、そういう時は外部のデザイナーに頼んだり、男性のデザイナーに頼んだりして、いろんな方の心に刺さるものをと思っています。
ただし、軸はぶれないようにしたいですね。良くないなと思うものは出したくないので、どこかに必ず「いいな」と思えるポイントがあるもの、ブレックスが公式として出すに値するかどうかという部分を、私なりに見極めて出すようにしています。
(残り 1035文字/全文: 6042文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ