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町田洋介AC「ブレックスは全員が自己犠牲を払って、それを厭わずに戦えるチーム」インタビュー【無料記事】

短期決戦だからこその賭け

―川崎のビッグラインナップは、シーズン中に醸成していったイメージがありますが、ブレックスのビッグラインナップについてはわずか数日で形にして、試合で機能したということになりますよね。それができた要因はなんだったのでしょう。

ビッグラインナップをやっている時に、ディフェンスで相手を止めなければいけないということがまず先にあったのですが、うちはリバウンドも取れるし、そこは問題ないとして、逆にオフェンスがどうしてもおかしくなる可能性が高いから、そこへの配慮は僕らコーチ陣3人でいろいろと話し合ったりもしました。

だから、もし何試合もビッグラインナップを使わざるを得ないという状況が起きていたら、結果は分からないですよね。続けていったら悪い部分も出ていたかもしれません。短期決戦だからこその賭けの部分はあったと思います。そういう風に捉えているので、勝って良かったですけど、単純に喜んだというより、ハマって良かったなとただホッとしました。

 

―その時期に新しいことを取り入れるのは、確かに不安がありますよね。

「もうやるしかない、勝つには」。本当にそういうマインドでした。普段、竜三さんの会見を見ていると、「自分たちのやるべきことをやる」と話していて、いつも “自分たちの” ということをずっと言ってきていますよね。実際みんなそれに則って頑張ってきた中で、今までやってきたことと違うことが入ってきた時に、拒絶まではいかないけど、やっぱり最初はうまくいかない部分もあったんです。

5対5の練習をするにしても、片方のチームに大きい選手が3人いて、もう片方のチームには1人しかいないとなると、難しいじゃないですか。なんとなく雰囲気的にもあまり良くないなという時間があったのも確かで、練習初日とか2日目くらいは練習自体が締まらないというか、しっくりこない感じがありました。僕らも、「まあ、そうだよね」という感じで受け止めていました。

でもうちの選手たちは大人なので、結局「やるしかないですもんね」みたいな感じでしたね。実際ここまで負けていたし。もちろんそういう風には言わないですが、そう捉えてやってくれたんだと思います。

あの2試合は、うちの外国籍選手のリバウンドや球際が本当に強くてそれも良かったのですが、それで勝ったというよりは、やっぱり総合力だと思います。それも今までの蓄積だと思うから、そこはチームの手応えとして残った部分でした。

 

―オフェンスでうまくいくか少し不安だったということですが、それはどのようにして解消していったのですか。

ライアンやジェフがドリブルでボールを運べることが大きいです。そこからどう入っていくのかというプレーを、既存で持っているプレーの中で少しアレンジを加えました。ただでさえ新しいことをやっているのに、内容まで新しくしてしまうと、それこそみんなおかしくなっちゃうから、そうならないためのわずかなマイナーチェンジを加えていったという感じです。

練習できたのは3日ぐらいの期間だったので、やれたのはそのぐらいでした。あとは、リバウンドを取って走るしかない、みたいな()

 

―ずっと同じメンバーで、お互いのことを分かっていたということも大きいのかもしれませんね。

そうですね。ジョシュ(スコット)やLJ(ピーク)がいるにしても、やっぱりそれはあると思います。でも、LJがいたのはすごく大きくて、LJを出している時間帯は、LJ3番で普通のラインナップをやっているわけです。そこで、そのまま川崎に対抗できる時間帯がありつつ、ビッグラインナップができた。LJがいなくてそのラインナップができなかったらと考えると…。

ずっとビッグラインナップで戦い続けるのは本当にきつかったと思いますし、マコ(比江島慎)始め、日本人選手がパブロ・アギラールにマッチアップする時間が長いと、それも多分難しかったと思います。ですから助かりました、LJの頑張りに。もちろん、LJだけじゃないですが。

 

仕事の面としては悔いが残った

―ファイナルに話を移しますと、1戦目は少し硬い印象を受けましたが、近くで観ていて選手たちの様子はいかがでしたか。

多分、選手は緊張していましたよね、やっぱり。ゲームの入りから硬かったのは、多分、観ていて感じた通りだと思います。最初に80のランで試合に入って、その後盛り返しましたが、最初にリードを取られてしまうと、追う展開を好まないうちとしては難しいところもありました。

今回のファイナルは僕がスカウティングをしたのですが、守り方も含めて相手の対策の部分で、もうちょっとできたかなという気はしています。

2戦目はシュートやオフェンス面の調子は間違いなく良くなって、1戦目を活かしてアジャストしたと思いますし、対策の部分も1戦目にマズかった部分をうまく修正できました。逆に言えば、それを最初に持ってこれていれば、たとえ選手の硬さはあっても、もうちょっと違うゲームになったかなと思っています。

みなさん「良いシリーズだった」と言ってくれますが、僕らサイド(コーチ陣)からしたら、2戦で方をつけられた可能性もあるので…。そんなこと当たり前ですけど、でもやっぱり課題というか、僕らの仕事の面としては悔いが残りました。

 

―先日、テーブス海選手に話を聞いた際に、「悩みながらのシーズンだった」と話されていました。1シーズン通してテーブス選手の成長をどのように感じますか。

彼が苦しんでいたのは分かっていました。僕が海と話した時は、大変さはありながらも「すごく成長を感じられている」とも話していました。僕個人としては、そういうステップを踏んで良かったなと思っているんです。今後、プレーヤーとしてやっていく長いキャリアの中で、今、海が抱える悩みが活かされると思います。

うちみたいなチームにいて、どうやってベテランを使っていくのかを考えたり、田臥(勇太)さんから話を聞けたり、ナベ(渡邉裕規)や(鵤)誠司という、いろんなタイプのガードがいる中で、それを経験できることも、海にとっては間違いなくプラスだと思います。

本人にとっては、もっと思い切りやれたほうがいいと思うだろうし、そこは能力がある分大変なんだろうと思いますが、考えてプレーできない選手は、先々、生き残ってはいけないと思うので。彼は日本代表で中心となってプレーすることを将来的には考えていると思うし、僕もそうなってもらいたいです。ならば、必要なステップなんじゃないかなと、僕は思います。

僕たちはすごく海に期待していて、本人も自分自身にすごく期待しているというか、自信もあった中で、周りの評価やチームの中での役割にギャップがあったりしたけど、それを受け止めながらも頑張ってくれました。

 

 

 

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