佐々宜央AC「間違いなく前進したシーズンだった」インタビュー後編【無料記事】
スイッチを入れる手助けをしたい
―テーブス選手については、どういう状況だったのですか。
サンロッカーズ渋谷戦でベンチにいる海を見た時に、「やっぱり試合に出られないのかな」という表情をしていました。でも僕は、この流れならどう考えても海が出るだろうということは分かっていたので、「お前、多分、出るぞ。スイッチ消すなよ」と声を掛けたんです。その5分後ぐらいに竜三さんから声が掛かって試合に出たのですが、その時の海のプレーは良かったですよ。
別に僕のおかげということではなくて、僕らは選手のスイッチがオフになっていることに気付かなければいけないですよね。
でも、さすがにブレックスはオフになるっていう選手は少ないです。そういった意味でも、やっぱり経験もあるし、レベルの高い選手が多いんだなと思いました。海は若いからそういう瞬間があったというだけの話で。
海の良さは、1日経つとまた普通に戻って、元気よくやってくれるところです。
だからブレックスのように、全員のスイッチがバーンと入った状況で戦いに行けるのは、やっぱり理想ですよね。
僕はそうやって、スイッチを入れる手助けをしたいとずっと思っていますし、今こうして話していて感じたのは、やっぱり比江島のスイッチは入れることがなかなかできなかったなと、あらためて思いました。
僕自身もまだ分からない部分もあるんです。どういうふうにしていったら、もっとパフォーマンスが発揮できて、どうやったら気持ち良くプレーさせてあげられるのか。
理想のエース像に、当てはめないでほしい
―もしかすると、ファンも同じかもしれません。応援したいけれど、どういう風に応援していいのかが分からないというか。
それは分かります。ただ、1シーズンを通して分かったことがあるとすれば、あいつはすごい選手だということです。
でもだからといって、“こういう選手であってほしい” というように、決めないであげてほしいです。エースはエースなのですが、どういうエースなのかという部分は、他人から決められるものではありません。
比江島は、自分でイメージを作らず、他人のイメージを追いかける人間なんです。
自分はどういうふうになりたいのか、どういう人間でありたいのかという部分は他人が決めることではなくて、自分で決めることなので、それぞれが考える理想のエース像に、彼を当てはめないでほしいです。
結局、比江島にパフォーマンスを出してほしいという思いはみんな一緒だと思いますし、その出し方、やり方について、まだ答えが見つかっていないだけなんですよ。
バスケットの戦術上で、まだブレックスにフィットしきれていないという部分もありますが、だからこそ本当に融合してきたら、めちゃくちゃ良くなると思います。
それが前回話したこのチームの「余白」の部分で、そういった意味でもかなり期待していますし、ACとしてはそこが一番重要な仕事だと思っています。
―いろんなことを言われるので、ちょっとかわいそうだなと思うんですよね。
そんなこと気にしなくていいんですよ(笑)。でもファイナル3戦目、負けた後の記者会見で言った、竜三さんの一言はやっぱりでかいですよね。
もちろん比江島自身もファイナルでパフォーマンスを出したかったと思いますが、それでも最後に背中を持ってくれる上司がいて、試合が終わった後もチームが成長していける可能性が感じられた。
それがスポーツの良さだなと思いましたし、正直、感激しました。
―私も感激しました。あの記者会見の映像はYouTubeで全国的に観られていますし、ブレックスがどういうチームなのかは、あの映像を観れば分かりますよね。
あれは本当にでかいですよね。竜三さん、実際はあんなにやさしい人じゃないですけど(笑)。
先程話したように、あれも一つのスイッチだったりするんですよ。あのタイミングでしか押せないスイッチ。それがどんぴしゃにビビビッって入ることもあると思うんです。
逆に、意図しない一言が、その人をめちゃめちゃ傷つける言葉になったりもする。
特にHCは、記者会見や選手の前で話さなければいけないことが多いから、すごく難しい仕事ですし、大変な仕事だなと思います。
―あのシーンを観て「また来年も観たいな、このチーム」と思いました。
僕も同じです。ファンから見ても嬉しいですよね。今シーズン、こういうチームを応援して良かったなって思いますよね。
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