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日本代表河村(ビーコル)が輝くのは「ドラクエ」のおかげ!? “日本唯一”のチームである横浜ビー・コルセアーズと日本代表にある共通点

ⓒJBA

ニュージーランドが日本の強みを必死で消そうとしてきた。それが75-94で敗れた、84日の強化試合だった。

 彼らの目的は河村勇輝と富樫勇樹というスピードとクイックネスに優れたPGの良さを消すこと。具体的には、日本の攻撃になったときにオールコートでプレッシャーをかけにくることで、日本のPGにボールが簡単にわたらないようにしていた。PGからではなく、他のポジションの選手から日本の攻撃が始まるように仕向けることで、リズムやペースを崩そうとしてきたのだ。

当然ながら、今後の試合でも同じような対策を立てて試合に臨んでくるチームもあるはずだ。

だから試合後のスタメンを務めた河村へこんな質問が飛んだ。

 「相手が河村選手対策を徹底してきたら、日本代表は苦しくなるのではないですか?」

8月4日の試合で先発した河村@JBA

河村は落ち着いて、こう答えた。

 「日本代表は僕1人で打開するようなチームではないので(心配はない)。このあと渡邊雄太選手だったり、ジョシュ・ホーキンソン選手が入ってきて、彼らが、ファーストオプションにもなるでしょうし……

僕が逆に、ロールプレイヤーに徹する時間帯も増えてくると思うので。そこはあまり心配していないです」

 

以下に、この記事のテーマとなる2つのキーワードの意味を改めておさらいしておこう。

 

(バスケットボールの)ロールプレイヤー

チームの求める特定の役割に徹した選手のこと。いわば職人的な仕事をするタイプ。

 

(娯楽用の)ロールプレイングゲーム

直訳すると「特定の役割を演じる遊び」。はっきりとした特徴を持つキャラたちを操作するゲーム。

 

なぜ、この2つがリンクするのか。

その秘密を明かしたのは、河村を輝かせている張本人。横浜ビー・コルセアーズの青木勇人HCだ。

中央に立つのが青木HC©B-CORSAIRS

 

実は、Bリーグ24チームのなかで唯一、ビーコルだけが成し遂げている偉業がある。

 

まずは、以下の2022-23シーズンの1試合平均のアシストランキングトップ10をよく見てほしい。驚愕の事実に気がつくはずだ。ビーコル河村がトップに立っているという事実だけが話題になるのだが、評価されるべきはそれだけではない。

 

1位 河村(横浜ビー・コルセアーズ) 8.5回

2位 ペリン・ビュフォード(島根スサノオマジック) 7.9

3位 並里成(群馬クレインサンダーズ) 7

4位 久保田義章(京都ハンナリーズ) 6.3

5位 富樫勇樹(千葉ジェッツ) 5.6

6位 ディージェイ・ニュービル(大阪エヴェッサ) 5.5

7位 チェハーレス・タプスコット(茨城ロボッツ) 5.3

8位 藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース) 5.1

9位 ベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷) 5

10位 森井健太(横浜ビー・コルセアーズ) 4.9回

 

4チームで構成されるBリーグのなかで、ビーコルだけが唯一、アシストランキングトップ102選手を送り込んでいるのだ。

B1には24チームもあるわけだから、アシストランキングトップ10に選手を送り込めないチームのほうが多いわけで、偉業といっても大げさではない。

同一チームからアシストランキングトップ10入りという偉業を果たした森井と河村

 青木HCは胸を張る。

 2人がしっかり機能しているのは、チームにとって誇らしいことだと思っています。

 昨シーズンは、河村選手がスタメンで、その後に交代で森井選手が出てくる形でしたが、相手チームはすごく嫌だったと思います。平均得点でリーグベスト5、アシストがトップの河村選手がベンチに下がったと思ったら、普段の練習で河村選手とバチバチにマッチアップして、しばしば止めることがある森井選手が出てくる。ディフェンスができて、なおかつ色々なところにパスを共有できる選手が河村選手に続いて出てくるわけですからね。すごいことですよ」

 

では、なぜ、それが可能になったのか。

 「PGがパスを供給して、そこからフィニッシュにつながるシステムを意識して作っているからです。私が就任した1年目のシーズン(2021-22シーズン)の途中に河村選手が入るにあたって、森井選手に加えて、当時いた生原(秀将)選手もプレーメイクが上手かったので。

PGを軸に、ウィングとビックマンが得点をとるシステムを作れば、それぞれの特長を生かしたチームができるのではないかと考えたのがきっかけです。その結果、2人がアシストランキングに入ったのだと考えています」

 

これはつまり、河村だけのチームであるように見えながらも、そうではないということを示している。特定の1人に頼るのではなくて、チームとして機能する。そんなチームバスケットを見事に構築したということになる。

「やはり、目立つのは河村選手だと思うのですが、それ以外の選手も、自分の役割にプライドを持って、試合に出たら、必ず爪痕を残してくるのです。だからこそ、一人ひとりにどのような仕事を与えるか、その調整がすごく大切だと思って、取り組んでいます」

河村の存在を知ってビーコルに興味を持ち始めたライトファンや、日本代表のファンも、“ビーコル沼”にはまるポテンシャルを秘めているようなチームになったことに青木HCは自信を持っている。

 

「確かに、多くの人は河村選手のことに興味をもって、うちの試合を見始めるのかもしれない。しかし、河村選手がしていない仕事に全力で取り組んでいる選手がたくさんいるのがビーコルなんです! 

河村選手のようなスターもいるけど、こっちにはヒーローがいて、チームが機能するための仕事に高いレベルで遂行してくれる仕事人がいて……。それぞれの選手が、自分の仕事にプライドを持ちながら、1つのチームになっているんですよ。見ている方にそういうストーリーが伝われれば面白いと思います。

それって、ドラクエのようなロールプレイングゲームみたいですよね」

 

自慢の息子たちを紹介するかのような柔和な表情で語った青木HCはしかし、最後にこう付け加えるのは忘れなかった。

「アシストを記録するのはもちろん素晴らしいことですが、その前にスクリーンをかける選手がいて、パスを受けてからのシュートを決める人がいるからこそ、アシストは記録されるんですよ」

 

もちろん、当の河村も同じ意見だ。7月末にはこんな話をしていた。 

「福岡第一や東海大で日本一になったことも、Bリーグでたくさんの賞をいただけたことも、1人でできたことでは全くないので。たくさんの人に支えられて、たくさんの人が自分を鼓舞してくれて、やってきた人生なので。1人では全くできなかったと思うし。だからこそ、そうやって支えてくれた方に恩を返すのは当たり前かなと僕は思っています」

仲間を大切にする河村@JBA

 

ここまで読めばわかるはずだ。ビーコルは河村のワンマンチームだと思われがちだが、そうではない。

 

得点ランキング5位、アシストランキング首位の河村は、チームのために得点を取るという仕事と、チームメイトのために良いパスを送る仕事と、両方を高いレベルで遂行できる。その意味で、河村は究極のロールプレイヤーという顔を持っているということなのかもしれない。

 

そして、今、河村の役割に注目すべきなのは、その特長が日本代表で大きく輝く可能性があるから。

 というのも、日本代表のホーバスHCが、一人ひとりのロール(役割)を明確にしたチーム作りをする指揮官なのだ。

情熱的に指揮を執るホーバスHC@JBA

彼が女子の日本代表のHCとして指揮した東京オリンピック。そのチームのキャプテンだった髙田真希は以前、こう語っていた。

「ホーバスHCが、各選手としっかりコミュニケーションを取って、『君にはこういうことを求めている』と役割を明確にしてくれたのが大きかったです。若い選手から、私のようなベテランまで、何を求められているのかが明確になっていたので、良いプレーができた。それがメダルにつながったと思います」

 (詳細については、この記事を参考)

 

現在の日本代表を見ても、そのコンセプトにブレがないことはわかるはずだ。Bリーグでの出場時間が必ずしも長くない選手であっても、日本代表に呼ばれ、大事な役割を与えられているからだ。それはホーバスHCが率いるチームもまた、各選手のロール(役割)を大切にしてする指揮官だからである。

そこにロールプレイングゲームのドラクエのようだと青木HCが指摘するビーコルとの共通点がある。

河村とホーバスHC@JBA

ビーコルという各選手の役割が明確化されたチームで輝く河村は、これから始まるW杯に挑む日本代表でもまた、まばゆいばかりの輝きを放つ可能性が高い選手なのだ。

ⓒJBA

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