ラスト5分勝負の分かれ目。福島県IH予選男子ゲームレポート
ラスト5分勝負の分かれ目
~~福島県インターハイ予選男子決勝ゲームレポート~~
福島のレベルアップ
決勝前日、FSG開志学園との準決勝を制し、決勝進出を決めた県福島商の水野コーチはこう言った。
「決勝は皆さんが予想している通りの結果になるでしょうね…」
と、勝ち目はないといった口ぶりだった。
だが、そのあとに続けて
「もし、うちが勝てるとすれば…それは奇跡しかないでしょう」と笑った。
福島県インターハイ予選最終日は、2面コートで決勝と3決だけ。このまま残って翌日の試合を見るかどうかためらっていたが、なぜか「奇跡」という言葉に何かが反応、1泊して見ていくことにした。
その予感が的中。いわき市総合体育館で展開されたまさかの結末を目撃することになる。
今大会はどの試合もスタンドに応援席がほぼ埋まっていた。
「久しぶりにたくさんの観客が集まったなぁ」と協会、高体連関係者もその熱気にほくほく顔だ。
しかも、最終日は月曜と平日にも関わらず、スタンドは賑わっていた。
福島商の応援スタンドには300人もの応援団がバス6台に乗って福島市からやってきた。これは3年全員と生徒会役員。
「今まではコロナ禍で応援もできなかったけれど、今年はもう解禁となったからには応援を」
と、公欠扱いで3年の6クラスごと1台ずつ学校側が決めたもの。バスケット部が頼んだものではなかったという。
県大会とはいえ、このカードは東北新人戦決勝と同じ顔合わせ。昨年の東北新人、東北NHK杯、今年の東北新人と3大会連続で福島対決となっている。もっと注目されていいのでは、と昨年のウインターカップでこのことを尋ねると、
「ありがとうございます。もともと弱小県の一つなので、秋田や名古屋、福岡などと比べるとメッカではありません。まだまだ盛り上げに欠けている。でもうちと帝京さんと2つとも最初勝てたのは大きいと思います。小・中学生が福島のチームで頑張ろうと思ってくれればいいな。もちろんそのためにやっているわけではないですけど、副産物となってくれれば。毎回そんなに勝てるもんじゃない。だからこそ(福大大濠戦)ここで勝ちたかった」
と福島東稜・渡部浩一コーチ。
福島県内でしのぎを削ることだけでなく、チーム内での競争なんだよと常日頃から意識づけしているという。
一方、全国大会初出場ながら3回戦進出の帝京安積・水野優斗コーチは
「初出場でよく頑張りました。最後は開き直ってうちらしいバスケットができたと思います。みんなが成長してやれることはやったんだと思います。持ってる力はあったし、それを引き出せなかったのは私の責任。
県内の切磋琢磨はいい刺激になっていましたし、全国どこも強豪校には留学生がいますが、東稜さんとやれることで苦手意識はなく、対策が絞れました。ただ、(東山は)外回りがシュートが入りすぎた。今の3年は1年から試合に出ていたメンバー。新しい布陣で新たなスタイルを確立したい」
と、新たなチーム創りに思いをはせていた。
話を今大会に戻そう。
福島東稜は、主力は昨年とほぼ同じ。全国大会での戦いに向け、スターター以外のベンチメンバーの個のレベルアップに力を注いでいたと思われる。キャプテン0加藤、留学生35ジョセフ(203㎝)に注目が集まる中、エースは6皆川だ。リパウンダー、内外角をこなし、時にはボール運びまでこなすオールラウンダー。
今回ゾーンを封印して、この皆川が福島商のエース4柳内にマッチアップしてきた。
柳内はなんとわずか2点に抑えられ、10点ビハインド。
地区予選では、福島商のスリーがさく裂し大量リード。終盤東稜がからくも逆転勝ちを収めている。攻防の基点となる柳内を封じたことで東稜が主導権を握る。 めめしかし前半終了間際に福島商はベースをつかみ反撃ののろ41-49と点差をひと桁にして後半につなげた。さらに3Q出だしでサウスポーシューター6鈴木のスリー、柳内のドライブで猛追、4Qには1点差と迫った。そして…
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