【大学野球】阪神大学野球連盟2部東リーグ 第1節1戦目<前編>
高校野球をメインコンテンツにすると言いながら、当マガジン初の試合レポは恐縮だが大学野球となる。コンセプトとしては大阪勢の大学野球も対象になるようなので、取り上げてみる。また、大阪の高校出身の選手も数多くいるので、進路の選択肢の候補に入れてくれれば幸いだ。
さて、高校野球も各地で秋季大会が開幕しているが、大学野球もいよいよシーズンに入り、秋の神宮大会をめざす戦いが始まった。関西の5連盟も9月2日から開幕。その中で僕が出向いたのは阪神大学野球連盟、しかも2部リーグの試合だ。しかし、2部と侮るなかれ。1部リーグは天理大が5季連続優勝と圧倒し、どこが天理大を止めるかという見立てだが、2部は東と西に分かれた各リーグはどちらも混戦模様。特に2部東リーグは追手門学院大(以下・追門大)が3季連続優勝(昨春は2部西リーグに所属)しているものの、どこも実力のある選手が揃ったチームばかりで戦国リーグの予感を感じさせる。
そして、初日となったくら寿司スタジアム堺で行われた第1節の第一試合はその予感が現実のものとなった。第1節1日目の結果を以下に記す。
第1節 9月2日
【くら寿司スタジアム堺】
第一試合
摂南大
200000007 9
002002100 5
大阪経済法科大
第二試合
関西外国語大
003003100 7
200000000 2
追手門学院大
なんと、春季リーグ5位の摂南大が3位の大阪経済法科大(以下、大阪経法大)、同じく6位の関西外国語大(以下、関西外大)が1位の追門大にそれぞれ勝利した。
では、どのような試合になったのか。初日は4チームすべてが大阪勢ということもあり、この2試合を振り返りつつ、一部、選手のコメントなども取れたので、その模様をお伝えする。前編となる今回は第一試合を取り上げる。
まず、この試合のキーパーソンとなる選手の紹介だ。

摂南大・山田健介選手(3年・岸和田産)※写真中央
摂南大は1番を打つ山田健介(3年・岸和田産)が攻撃の起点にも得点源にもなり得るパンチ力のある打撃が持ち味。確実性もあり、3割を越える打率で春季リーグではベストナインを獲得した外野手だ。走攻守に牽引し、低迷が続くチームに勢いを与えたい。

大阪経済法科大の寺西優也選手(3年・阪南大高)
大阪経法大の打線の核となるのが寺西優也(3年・阪南大高)。春季リーグでは1番を打っていたが、この秋季リーグからは打順は3番に上がり主軸に。内角球を捌く技術と独特な打撃へのアプローチは1部リーグにいる選手と遜色ない。春は首位打者こそ逃したが、高い出塁率を記録した選球眼も魅力だ。
開幕試合ということもあり、春季リーグで活躍した選手に期待をかけてしまうものだが、新戦力の台頭があるのか。
◆9回までは大阪経法大ペースだったが…
大阪経法大は打線の核が寺西ならエースで主将の上島涼(3年・浜松開誠館)がチームの柱だ。しかし、1回表。摂南大が1番山田、3番吉田雅志(3年・尼崎小田)の安打でチャンスを作ると、5番雜賀竜兵(2年・京都翔英)の二塁への当たりで二塁手が逆を突かれて、打球は右中間へと転がる。これが適時二塁打となり摂南大が2点を先制。
対する大阪経法大も序盤からチャンスは作るものの、左横手から投げこむ軟投派の摂南大・小川浩佑(3年・東海大大阪仰星)を前に牽制死があったりとリズムをつかめない。しかし、打順が一回りした3回裏に2死走者なしから安打と失策でチャンスを作ると、3番寺西がつまりながらも右前へ落とす適時打で同点に追いつく。さらに試合は後半に入って、6回裏に2点取って勝ち越すと、7回裏にも1点を追加した。

摂南大の先発・小川浩佑(3年・東海大大阪仰星)。左横手から投げ込む軟投派だが、稀に上手で投げるなど変幻自在の投球を見せる。
立ち上がりに2点を失った大阪経法大の上島だが、それ以降は走者を出しながらも持ち味であるのらりくらりの投球で相手のスコアボードに0を刻んでいく。上島の球速は120キロ台中盤がほとんどだが、ナチュラルにシュートするストレートで微妙に相手のバットの芯を外し、多彩な変化球を駆使して、塁に出しても粘り強く投げ込んでいく投球スタイル。この上島の投球がチームの同点、逆転を呼ぶというのが春季リーグでも見られた展開だ。
8回終了時点で3点差、明らかに大阪経法大のペースで試合が進んでいた。また、上島は春季リーグで最多イニングを投げ、完投も最多だった。上島は春季リーグの桃山学院大戦、タイブレークまでもつれ、10回を完投した試合ではこう語っていた。
「自分一人で行くつもりでした。僕が今日、一人で投げれば、次の試合は多くの投手が全力で投げられるんで」

大阪経法大の主将も務めるエースの上島涼(3年・浜松開誠館)
もともと、次戦の戦いを見据え、チームのためにこのような思いで投げれる選手だ。主将になり、その思いも人一倍強くなったことだろう。このまま、上島の完投勝利で決まりかと思われた9回表に試合は暗転する。
摂南大は先頭の6番杉田悠輔(大阪電通大高)が初球を叩き右前打で出塁。さらに次打者も続くと、8番小畑悠人(3年・東洋大姫路)は遊ゴロに倒れるも併殺崩れで大阪経法大は一つしかアウトを奪えず。ここで嫌な予感を察知したか、大阪経法大は守りのタイムをとる。だが、ここから摂南大の猛攻が加速する。9番のところに代打・辻本寛人(3年・東宇治)を送ると、その辻本が中前適時打でまずは1点を返す。打順は1番山田に帰り、山田も右前打で続き満塁とすると、2番途中出場の黒松叶豊(2年・高川学園)に押し出し死球を与えて、1点差に詰め寄ると、大阪経法大はたまらず上島から中田準(2年・八頭)に交代。しかし、1点リードで1死満塁という酷な場面での登板。中田も摂南大を止めることはできない。4番辻の打球は無情にも左翼手の上を越えて、走者一掃の3点適時二塁打でついに摂南大が逆転に成功。さらに2点を追加し、一挙7点の猛攻で3点ビハインドから4点のリードを持って9回裏の守りに入る。
逆転された大阪経法大も裏の攻撃は残っていたが、摂南大の3番手・西海脩人(2年・熊本城北)がこの日、最速となる135キロの力強いストレートで相手をねじ伏せ、三者凡退であっさりとゲームセット。春3位の大阪経法大はエース・上島を立てて、9回までリードしながらも逆転されて初戦を落とすという痛い黒星となった。一方の摂南大は春季リーグ後半の勢いそのままに逆転勝利と幸先のいいスタートを切った。

摂南大・西海脩人(2年・熊本城北)。野手登録だが、力強いストレートで試合を締めた。
2戦目も初回から先制するなど、摂南大の勢いが続いたが、大阪経法大が後半に得点を重ねて逆転、さらに突き放して、コールドで勝利。お互い1勝1敗のタイと無難なスタートを切った形となった。どちらもやや投手層の薄さが気になるところ。打線はそれなりに機能しているため、投手のやり繰りをどうするかが今後の戦いの鍵となりそうだ。
第二試合は<後編>へ。