第2回近畿×東海クラブ交流戦 1日目 試合レポ
高校野球などは3月まで対外試合禁止期間に入り、それ以外の野球界の多くもこの11月末の週末が今シーズンラストゲームになったところも多いだろう。
そんな中、今回は岐阜長良川球場で行われた第2回近畿×東海クラブ交流戦についてお伝えする。

会場となった岐阜長良川球場。高校野球のメイン会場になるほか、中日などプロ野球の一軍公式戦にも使用される
まず、社会人野球には会社登録チーム(以下、企業チーム)とクラブ登録チーム(以下、クラブチーム)の2種類があるが、今回は大阪、愛知、岐阜、三重に所属するこのクラブ登録チームによる選抜チームを組んでの交流戦となる。第2回となった今年は大阪の選抜チームを招いて、1日目は愛知選抜、2日目は岐阜と三重による選抜チームと試合を行った。結果は以下の通りになった。
1日目
愛知選抜
000000100 1
000000000 0
大阪選抜
2日目
大阪選抜
260000000 8
000000001 1
岐阜・三重選抜
1日目は愛知選抜の強力な投手陣に大阪選抜の打線が抑え込まれて、7回表の1点が決勝点となり、愛知選抜の勝利となった。
2日目は前日の鬱憤を晴らすかのように序盤から得点を重ねて大量リード。そのリードを守り切って快勝した。
今回は1日目の試合レポについて語る。

会場となった岐阜長良川球場のスコアボード
先に守る大阪選抜の先発は八尾ベースボールクラブの傳佐唯斗(興国高)。最速145キロのストレートを軸に自チームではエース格の投手だ。序盤はやや打ち込まれるシーンも目立ったが、3回ぐらいから調子を取り戻し、味方の好守備にも助けられ、4回無失点と見事な投球を見せた。

大阪選抜の先発は八尾ベースボールクラブ・傳佐唯斗。興国高時代から主戦投手の一角として活躍。
二番手の履正社ベースボールクラブ・塩山翔太(東大阪大柏原高)も1イニング限定ながら、空振り三振一つ含む三者凡退に抑える安定した投球を見せた。球速は球場のガンでは130キロも出ていなかったが、球速表示以上の伸びを感じさせる球を投げており、年齢も20歳と若くこれからが楽しみな投手だ。

1イニングながら三者凡退と安定した投球の履正社ベースボールクラブ・塩山翔太。年齢も若く、将来性の高い投手
この後、NSBベースボールクラブ・早川翔(尼崎工高→大阪産業大)、関西硬式野球クラブ・井上颯太(筑紫丘高)とつないでいくが、三番手の早川が2イニング目に1死満塁のピンチを招き、内野ゴロの間に三塁走者が生還。この1点が決勝点となった。
お互い1点が遠い試合展開の中で愛知選抜の投手陣の強さが際立っていた。この日、1試合だけとなる愛知選抜は小刻みな投手起用をしてきたが、その中でも今年のクラブ選手権準優勝の矢場とんブースターズからは二人の投手が躍動。先発の西浦貴志(菊華高→名古屋産業大)、クローザー役で登板の九谷瑠(堅田高→大阪大谷大)は主力投手としての力を遺憾なく発揮した。

愛知選抜チームの先発を任された矢場とんブースターズ・西浦貴志

試合を締めた矢場とんブースターズ・九谷瑠。今年のクラブ選手権準優勝に貢献した右腕
愛知選抜の中でも大きなインパクトを残したのが元ヤクルトのTJクラブ・中尾輝(杜若高→名古屋経済大)だ。1イニング限定ながら、左腕から振り抜く速球は唸りを上げて、最速で150キロを計測した。それ以外にも140キロ後半のボールを連発し、都市対抗などに出場するような企業チームの投手でもなかなかお目にかかれない力強い投球。さすがは元NPB左腕という実力を見せつけた。

元ヤクルトのTJクラブ・中尾輝投手。この日はMAX150キロを計測。左腕から投じる力強いストレートは健在だ。
全体的に投手陣の活躍が目立ったなかで両チームの5番打者の打撃が光った。特に愛知選抜のTJクラブ・黒川大輔(愛知啓成高→愛知学泉大)は4打数4安打でその内、二塁打が3本とその打棒がさく裂した。右に左に中堅にと打ち分け、投手も左右、アンダーとタイプ関係なく打ちまくった。黒川の打撃は得点にはつながらなかったものの、何度も得点圏のチャンスを生み出し、大阪選抜の投手陣に重圧を与えるには十分な活躍だった。

4打数4安打、二塁打3本と固め打ちの活躍を見せたTJクラブ・黒川大輔
一方の大阪選抜はNSBベースボールクラブ・柳澤太良(桜ヶ丘高→関メディベースボール学院)が3打数2安打と気を吐いた。特に7回裏には140キロ後半を連発する元プロの左腕・中尾の力強い球に振り負けることなく、ファウルで粘り、左前へ運んだ一打は見事だった。翌日の岐阜・三重選抜との試合でも打ちまくったようで、このいい感触を忘れずに来年の飛躍につなげていきたいところだ。

大阪選抜の打線の中で一際、気を吐く活躍を見せたNSBベースボールクラブ・柳澤太良
後編では大阪選抜の一部の選手のインタビューを紹介する予定だが、その選手たちがそろって口に出していたのが全日本クラブ野球選手権制覇という目標だ。高校野球が甲子園、大学野球が神宮というように社会人野球は都市対抗、全日本選手権という二大大会の目標がある。しかし、クラブチームにとってはそれに加えて、クラブ選手権で優勝。その優勝チームに与えられる全日本選手権への出場枠を得て、ドームの舞台でプレーするというのがチームとしての目標となる。その目標に向かって、日々の仕事をこなしつつも楽しさの中に真剣さを持って野球に取り組む。これらをグラウンド上で見れるのがクラブチームの野球の魅力ではないだろうか。この日は気温も低く、シーズンオフも近いこともあり、ややパフォーマンスを落としていた選手も見られたが、春以降、本格的なシーズンに入れば、高校や大学、独立とはまた違ったハイレベルなプレーを見せる選手もいる。

試合は全体的に愛知選抜のペースも野手陣の好守もあり、粘り強く戦った大阪選抜
野球人口の減少が叫ばれる中、実はチーム数の減少が著しいのは社会人野球である。特に平成の大不況以降、企業チームの登録数は減少傾向が続く。都市対抗などの檜舞台に立つことは少ないが、地域の野球の一翼を担っているのがクラブチームという存在も忘れてはならない。そんなクラブチームをさらに盛り上げる地域別対抗の交流戦は有意義なものであろう。是非とも来年以降も開催されることを願う。

試合後、大阪選抜、愛知選抜の2チーム全員で記念撮影。