【高校野球】第106回全国高校野球選手権大阪大会 準決勝の結果&決勝戦の展望
27日に決勝をかけた準決勝二試合が行われた。試合結果は以下のように。
準決勝
◆シティ信金スタ(舞洲)
第一試合
大商大高
000100000 1
10100001X 3
東海大大阪仰星
【バッテリー】
大商大:浅岡、松本、小野坂–西澤
仰星:壹崎結、野本–十河
第二試合
(5回コールド)
履正社
20000 2
5610X 12
大阪桐蔭
【バッテリー】
履正社:髙木、古川、藤原、辻–嶋田
大桐蔭:中野–増田
事実上の決勝戦という声も多かった二強による第二試合はまさかの結果となった。履正社が新チームから磨いてきた機動力を用いて、幸先よく2点を先制したものの、エース・髙木大希が乱調。特に変化球の抜け球が多く、カウントを取れず、ストレートを狙い撃ちされた。藤原僚人を準々決勝の先発で起用したことを考えても、この試合は髙木がある程度はゲームメイクをしてくれるだろうと想定したはず。それが1回を持たずに降板。この時点で勝負あったと言えるだろう。大阪桐蔭は11安打を放ったが、長打は徳丸快晴の左中間への二塁打のみ。パワー自慢の強力打線というよりはコンパクトなスイングでしぶとく野手の間を抜いていく当たりで、さらに四球などでつないで得点を重ねた印象だ。
敗れた履正社に話を戻すと、ここまで失点、失策なしと盤石だった守りが乱れての敗戦はやや悔いが残る負け方だった。投手陣の整備は急務といったところだろうが、私はそれよりも攻撃面が気になる。今年の履正社は前年のチームと比べると大きい当たりを放てる選手が少なく、今年から飛ばない新基準バットになることを見越してか、当初から機動力を前面に押し出したチームスタイルだった。ただ、機動力に頼る野球だけではこのような劣勢を跳ね返すのは難しい。昨年は森田大翔、坂根葉矢斗といった大砲がいたからこそ、要所の機動力が生きた。そもそも2019年に全国制覇をした時は盗塁0で強打で全国の強豪や好投手を圧倒した。かと言って、打撃は水物と言われるだけあり、強打一辺倒も考え物。機動力が機能している部分は残しつつ、どれだけ強打も混ぜていけるか。多田晃監督が昨夏の甲子園出場、逃した今年の戦いを経て、履正社をどんなチームに作り上げていくのか注目したい。
先に第二試合を語ったが、第一試合は緊張感ある一戦となった。大商大高は思い切って1年生の浅岡慧を先発に起用したが、その立ち上がりにつかまった。ただ、失点したイニングは最少失点で凌ぎ、その後も二番手の松本天誠が無失点に抑え、反撃のムードは作れていた。大商大高としては「ウチは追う展開の方がいい」と高橋克典監督が語るほど、想定内かつ理想的なプランで試合を進められていたはずだ。しかし、安打数では仰星を上回り、再三、走者を出しながらもあと一本が出なかった。春はやや安定感を欠いていた仰星の守備陣も要所で好プレーを出すなど、投手陣を盛り立てた。攻撃面では好機で4番・藤田心一に犠飛、適時打が飛び出すなど、4番のここぞの一打も光った。決勝戦もこの4番のバットがキーとなるだろう。
◆決勝戦の展望
さて、決勝は1985年以来、39年ぶりとなる夏の決勝進出となった東海大大阪仰星と2年ぶりの甲子園に王者復権を狙う大阪桐蔭のカードとなった。どのような決勝になるだろうか。その展望を語ってみたい。
まず、東海大大阪仰星は日頃から打倒・大阪桐蔭を心掛けているだろうが、夏は2年連続で敗退しており、その思いはより強いだろう。ただ、例年と比較すると、枚数はいるが、投手陣に絶対的な柱がいないといった印象だ。おそらく、決勝は準決勝での登板がなかった壹崎晃心の先発が予想される。弟・結希と同様にキレのいい変化球で大阪桐蔭の打線を翻弄して試合をつくりたい。打線は勢いづくと止められない打線が大阪桐蔭の投手陣相手にも発揮できるかどうか。鍵となるのは準決勝で2打点の活躍を見せた4番・藤田心一、ここ2試合は不本意な打撃となっている1番を打つ小日向悠太の2年生コンビ。彼ら上位打線が機能すれば、得点力も期待できる。
一方の大阪桐蔭はエース・平嶋桂知、来年のドラフト候補で2年生右腕の速球派・森陽樹を結果的に決勝までに温存できたのは大きい。ただ、平嶋は5回戦の大商大堺戦では本調子とはいえない投球だった。そこは気がかりではあるが、本来の投球ができれば仰星の打線の勢いを削ぐには十分な実力を持つ。また、秋の新チームから懸念された守備に関してもこの夏は6試合を戦って、1失策と安定している。打線は徳丸快晴が安定した打撃を見せており、4番として申し分ない働きを見せている。決勝も準決勝と同じく強引にいくことなく、低く強い打球を意識した打撃を心掛けたい。広く、風も強い舞洲という球場の特性を意識したいところだ。風向きや強さによっては要所でのラマル・ギービン・ラタナヤケのパワーも重要になってくるだろう。
決勝がほぼ40年ぶりという仰星に対して、甲子園を含めた決勝の舞台に慣れている大阪桐蔭。選手層だけでなく、経験でも分があり、これまで大阪桐蔭が決勝に進出した時に見られるワンサイドゲームになる可能性も大いにある。ただ、準決勝の第二試合がまさかの結果になったように何が起こるのがわからないのが高校野球だ。仰星も府内では上位進出の常連校。これまで準決勝の壁に阻まれ続けた上林健監督にとっても待ち望んだ舞台のはずだ。用意、準備してきたものを出せるか。両校による「これぞ激戦区・大阪だ」という決勝戦らしい戦いを期待したい。