コーチ、部長、監督で甲子園出場!福知山成美・井本自宣前監督が語った本音とは
高校野球において、強豪校の監督交代は何かとニュースになる。昨夏限りで福知山成美の監督を退任した井本自宣氏もその一人。現在は34歳の審研人監督に後釜を託し、一教員として野球部を支えている。そんな井本前監督にこれまでの指導者生活や今後の人生計画についても語ってもらった。
プロフィール
井本自宣(いもと・さだよし)
1973年10月29日生まれ。京都府出身。福知山商高(現・福知山成美高)-龍谷大。97年に国語教員として母校のコーチに就任。2007年4月から部長を務め、14年8月から監督になった。監督としては19年春に甲子園出場。昨夏限りで監督を退任している。
教員を志した理由
元々は高校野球の指導者よりも国語の教員になりたいと思っていたんですよ。高校を卒業した後に浪人して、京都の予備校に入ることになりました。文系だったので、英語、国語、日本史を選択していました。僕は高校の時に大河ドラマや時代劇が好きだったんですよ。それで日本史を勉強し始めると、教科書でしか見たことがなかったものが、京都にあると考えたら、日本史が凄く楽しくなってきたんですよ。
国語でも平安時代や室町時代の文学作品の舞台が京都にはあるじゃないですか。そうなったら、古典も好きになってきて、三国志も好きだったから、漢文も好きになっていきました。それなら国語教師になろうと思って、龍谷大学の文学部に行きました。
母校に赴任した経緯
教壇に立てるなら、母校に限らずどこでも良いと思っていました。教育実習で母校に戻ってきた時に田所孝二先生(現・岐阜第一高監督)が監督になって、野球部を一人で見られていたんですよね。大学4年生の時に教育実習で初めてお会いして、「井本です。龍谷大学で野球をやっています」と話したら、普通の先生は「教科の指導とか大変やから頑張りや」とかいうじゃないですか。でも田所先生は『帰ってきたんか。教育実習も短いけど、しっかり練習出て、後輩の面倒見たらなアカンで』と勉強のことは一切言われませんでした。
面白い人だなと思いながら冬に帰ってきて、その時は就職も決まっていませんでしたが、田所先生とお話しさせて頂いたら、国語の教員がいないということになって採用されました。走るのが好きだったから、就職が決まらなかったら、自衛隊に行こうかと思っていました(笑)。
田所元監督の凄さ
大学野球のレベルが凄かったので、教員になって野球を指導できるんだったら、自分がやってきたことを後輩に伝えたいと思っていました。田所先生とやりだして、やってきたことは確かに間違っていなかったんですけど、考え方や技術論が僕と比べたら天と地くらいの差だったので、高校生に教えてやろうと思っていたことが恥ずかしく感じました。
田所先生は指導の引き出しがドラえもんのポケットみたいに出てくるイメージなんですよ。練習メニューの引き出しがポンポン出てくるので、引き出しの違いにビックリしましたね。野球は同じメニューの繰り返しになりましたが、選手は飽きていなかったと思います。同じ練習でも意識や取り組みの仕方を変えられるので、マンネリ化することは少なかったと思います。初めて甲子園に出た時は冬は雪が積もっていたし、今みたいに室内練習場もなかったので、ランニングくらいしかすることがないですが、単に走らせるだけじゃなくて、レースを入れることで子どもらは全力で走るんですよ。ああいうのはなかなかできないです。
僕が見た中で天才的な発想力を持つ人は田所先生以外にいないです。采配でもめちゃくちゃポジティブシンキングな人なんです。試合中に怪我人が出たら、「あー」となるんですけど、「そうなん?じゃあ、次はこいつやな」みたいなポジティブシンキングなんです。
海外に行かれたり、社会人野球を終わってからも営業マンの経験があるので、社会的な経験値が僕らとは違うから、真似をしろと言われても無理ですね。
だから、最初は引き継ぐのが嫌でしたよ。部長をしていて、監督の姿を見たら、「絶対に無理や」と思いました。僕も40歳になっていたので、それくらいで引き継ごうと思われたいたんじゃないですかね。プレッシャーを感じることはなかったです。
3ポジションで甲子園を経験
ある人に「監督では1回しか甲子園に行ってないけど、部長、コーチの3ポジションで甲子園に行っている人はあまりおらんのちゃう?」と言われました。立場で想いが全然違うので、3つを経験できたのは大きかったです。
コーチの時は試合の采配をするわけではないし、責任がないじゃないですか。どちらかといえば、選手にベッタリで、チーム全体のことよりも出ている選手の練習であったり、個人の能力を上げることに力を注いでいたんですよ。だから地方大会から甲子園で負けるまで、楽しかった思い出しかないです。
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