力のない俺たちには時間がないんだ━━ファーストミーティング 明豊①
大分大会を圧倒的強さで制し、4年連続で夏の甲子園に出場した明豊。
しかし、投打ともに充実した戦力で臨んだ甲子園では、小松大谷(石川)に4-8の完敗を喫する。今年は春の九州大会で神村学園(鹿児島)を下して優勝するなど、実績も手応えも充分のチームだったが、これで夏の甲子園では2年連続の初戦敗退となってしまった。
スタートを切った新チームは、春夏の甲子園マウンドを経験した寺本悠真を除けば、甲子園経験のある野手はわずかにふたり。近年の明豊では、もっとも経験値の浅いチームと言っていい。
ここからどうやって「目標は日本一」を公言できるチームに仕立て上げていくのか。自らの記録を更新する大分大会の夏5連覇へ向けて。そして、悲願の日本一達成に向けて。「九べ」は大分県別府市にある明豊グラウンドで川崎絢平監督による最初のミーティングに密着。選手たちに向けられたメッセージをノーカットでお届けする。
仲間を大事にできない者とは野球をしたくない
夏が終わって、いよいよお前たちの年代が来た。今日はスタートにあたって、いくつかの確認というか、こちらが求めていることを、まずは伝えておかないといけない。去年も同じようなミーティングをしてスタートしたんだけど、俺が何を言ったか覚えている? まずは大きく、野球のこと以外にふたつ。これは毎年言っていることだけど、ひとつはここに集まった仲間を大事にできないやつと、俺は野球をしたくない。オリンピックでも見られたけど、SNSでいろんな人の悪口を言ったり、裏の見えないところで人をけなしたり、人を陥れたりするようなやつとは野球をしたくない。そもそも、そういうやつはスポーツなんかしなくていい。
『仲良くしてくれ』とかではなくて、当然ぶつかることもあるだろう。話が合う、合わないもあるだろう。もちろん日頃はライバルなんだけど、最終的にここに集まった仲間を仲間と思えない、仲間を大事にしない者とは野球をしたくないんだ。これは俺の勝手な感情かもしれんけど、そんなやつとは野球をしたくないし、野球を教えたくもない。そして、環境も与えたくないと思っている。
メンバーを外れる覚悟や怖さを持て
もうひとつは、メンバーを外れた時に、チームのために役に立つ気持ちがあるかどうか。チームの力になる気持ちがあるかどうか。もちろん上級生には、毎回確認する。もし自分が最後の夏にメンバーを外れたとして、チームのために必ず全力を注ぎますと思っている2年生。手を挙げろ。全員挙げたね。この約束は守れよ。まずはみんなメンバーに入りたいと思って野球をするんだけど、メンバーは20人だけだから。となれば、間違いなく外れる上級生も出てくる。だから“自分が外れる”と思っていないといかん。その覚悟や怖さがあるから頑張れるんだ。
ただ“自分は入れるだろう”と思っていても、前のチームの高木真心みたいに最後の最後で骨折してしまう者がいるかもしれない。高木はなんとか間に合ったけど、残念ながら間に合わない者がいるかもしれん。そんな時にチームのために役に立たない、チームのために動けない者とは野球がしたくない。それができないと言うのなら、夏の前にメンバーを外れた時点で野球を辞めてもらって結構。『僕はメンバーに入れなかったので野球を引退します』と言うのなら、それも結構。みんなはメンバーに入れるものと思って野球をやっている。それはもちろんそうだけど、入れなかったことを想定していないと、入れなかった時にとても受け入れられなくなるよ。全員で競争しているんだから、もちろん入れないこともあるだろう。まずは、その覚悟をしてくれないと困るということだ。