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【トピック】部活改革へモデルケースとなるか。更埴地区の中学生野球クラブが2年目へ

国の部活動改革で中学校部活動を地域に移行していく2023(令和5)年が迫ってきた。大きな変革に各地で戸惑いの声が聞こえる中、千曲市と坂城町の「更埴地区」で改革を見据えた取り組みが始まっている。

昨年4月、千曲市と坂城町の中学生を対象に更埴少年野球クラブ(以下、更埴ク)が設立した。部員減少への対応や部活動の改革を見据えた社会体育のクラブになる。千曲市内4校の野球部、坂城町内のクラブチームの顧問や指導者らが発足に動いた。

各チームに所属する生徒のほぼ全員に当たる60人ほどが更埴クに加入。千曲市教委の支援を受け、千曲市スポーツ協会に加盟し、同協会のスポーツ教室の一つとして活動の場を設けた。

年間最大20回の教室だが、コロナなどもあり月1回程度、計10回余り開いた。合同練習の形で、普段は部員が少なく練習が制約されるチームも刺激を受けながらの活動になった。

発起人の一人で更埴ク事務局の太田幸夫・更埴西中教諭は「市にはお金と場所のお願いをした」とし、外部指導者への謝金やグラウンド確保に配慮してもらった。

3年生が夏の大会で引退後は、「中3部」として高校野球を見据え硬式球を使って活動を継続した。

2年目の今年も同様の形で進める予定。しかし、各校の部員数は楽観できない状況が続く。太田教諭は「各校の部員数が持ちこたえているうちは、学校単位での大会参加になると思う。クラブが、野球をやりたい意欲のある生徒の受け皿になっていきたい」と話している。

【解説】改革まで1年余りに迫ったが、国や県から具体的な地域移行への施策は現場顧問まで届いていないようだ。そうした中、更埴クの取り組みはモデルケースとして注目されている。

1年ほどの準備期間で更埴クが立ち上がったのには、いくつかの好条件があった。指導実績豊富なベテラン太田教諭は、以前の勤務校で部活動の社会体育化を進めたり、中3生を対象にした硬式球教室を開いたりした実績がある。

また千曲市内4校すべてに「外部コーチがいるのも大きかった」と太田教諭。準備段階から打ち合わせに加わってもらった。特に週末の活動には外部指導者がキーマンになってくる。

千曲市には市立中学校が4校と行政範囲的にも大きすぎず、「全校が歩調を合わせやすい」と太田教諭。さらに「市教委も改革に向けた準備を進めており、支援を受けやすかった」と感謝する。

そして更埴クの会長に就いたのは、元千曲市教育長で県高野連会長も務めた赤地憲一さんと最強の後ろ盾を得た。

地域移行に向けて不可欠な要素がそろった形の更埴ク。こうした連携をほかの市町村立中学校でも構築していけるか。部活動は野球だけでなく、いわゆるマイナー競技を含めて多彩だ。

財源、人材確保など非常に高いハードルが待ち構える中、国や県はどんな枠組み、支援策を打ち出し、市町村教育委員会がどのようにサポートするか、注目される。

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