「日本バスケの成長が凄まじい」「歓声に嫉妬した」韓国代表歴の長い“チェ・ジュニョン”が沖縄アリーナで感じたコト EASL
東アジアスーパーリーグ(EASL)に参戦している琉球ゴールデンキングスは4日、沖縄アリーナに韓国KBLの釜山KCCイージスを迎え、91ー82で勝利した。通算成績は3勝0敗。グループBで暫定首位となっている。
日本、韓国、フィリピン、チャイニーズ・タイペイ、香港、マカオから計10チームが参戦しているEASLは、各地域が持つ独特なプレースタイルや、その地域における人気の高さなどが垣間見える貴重な機会だ。お互いの国のバスケ文化やリーグに対して選手やコーチ陣が所感を述べることも珍しくなく、アジアのバスケットボールの動きを観察する上で学びは多い。
今回のキングス対釜山KCCイージス戦後の記者会見でも、興味深い話があった。身長200cmの大型フォワードとして、長らく韓国代表でもプレーをしてきた#2チェ・ジュニョン(30歳)の質疑応答である。
「日本のバスケットボールの成長が凄まじいと感じています」「沖縄アリーナのファンの歓声にジェラシーを感じました」など、国際的にも存在感を高めている日本バスケの現状について賞賛を送っていた。
一問一答で紹介する。
「日本は新しいことを進めて進化している印象」
試合後の記者会見で質問に答える釜山KCCイージス戦後の#2チェ・ジュニョン
ーーー試合の総括をお願いします。
「(自身の前に話したHCと)同じく、リバウンドのところで優位性を許したことが、プレーしてても(敗因だと)思いました。琉球ゴールデンキングスの選手がすごく素晴らしいプレーをしていました。また、沖縄アリーナの雰囲気にも圧倒されて、なかなか自分たちのプレーができなかったです。ウォーミングアップでこのアリーナの雰囲気を感じた時、日本のバスケットボールが非常に発展しているなということを肌で実感したというのが感想です」
ーーーキングスの日本人選手の評価を聞かせください。
「自分はナショナルチームで10年以上プレーをし続けてきた中で、日本のバスケットボールとも密接に繋がってきました。その期間で、日本のバスケットボールの成長が凄まじいなと感じています。それは日本バスケ全体の印象ですが、KBL、そして韓国のバスケットボールとしても、日本のリーグから学ぶところは多いです。ベースボールでは大谷翔平選手が活躍し、バスケットボールでも八村塁選手というNBAプレーヤーが生まれています。そういった成長を、日本バスケと触れ合う中で感じてきました。正直な話、韓国もバスケットボールも盛り上がっていますが、まだEASLの認知度や人気はなかなか上がってこないというのがプレーをしていての実情です」
ーーー「沖縄アリーナの雰囲気に圧倒された」という話でしたが、今日の試合から刺激を受けた部分はありましたか?
「全てです」
ーーーそれはアリーナ文化なのか、バスケの技術的な部分なのか、どういったところですか?
「自分がプレーする釜山KCCイージスのアリーナも1万人くらいが入りますし、すごいアリーナであることは間違いないのですが、この沖縄アリーナの雰囲気を肌で感じて、ファンの雰囲気や歓声にはジェラシーを感じました。嫉妬しないと言ったら嘘になります。韓国のバスケットボールと日本のバスケットボールを比べた時に、韓国はどちらかというと同じことを繰り返すような文化がある一方で、日本はどんどん新しいことを画期的に進めていって進化している印象です。自分たちとしても、もっとそういうところを学んでいきたいなと思っています」
垣間見えた強い「危機感」 FIBAランキング54位に低迷する韓国
釜山KCCイージスのボードを掲げて応援するファン
「学ぶところが多い」と言ったジュニョンのコメントからは、低迷が続く自国のバスケットボール界に対する強い危機感がうかがえた。
韓国はコロナ禍の影響で、昨年沖縄アリーナなどで行われたFIBA男子ワールドカップの予選ラウンドを辞退したことにより、FIBAから失格処分を受けた。それ以前から代表チームの国際大会における成績が芳しくなく、今年11月に発表された最新のFIBAランキングではアジア・オセアニア地域の中で9番目となる54位。W杯、パリ五輪に出場した日本はオーストラリア(7位)に次いで2番目の21位につけた。
2年前の2022年11月時点では韓国が36位、日本が38位でほぼ同等だった。他競技と同様に、隣国のライバルとして競い合ってきたからこそ、この差が生まれてしまったことに対して歯がゆさがあるだろう。それでもジュニョンの「学びにしたい」というコメントからは、韓国バスケを再興したいという強い思いも込められていた。
一方、韓国バスケにとっては明るい材料があるのも事実だ。
例えば、コロナ禍で行われたEASL1年目の2022-23シーズンは日本での5日間集中開催だったが、KBLの安養KGC(現・安養正官庄レッドブースターズ)が初代王者に就き、準優勝もKBLのソウルSKナイツだった。ソウルSKナイツは2023-24シーズンも決勝に駒を進め、千葉ジェッツに敗れたものの、2シーズン連続で準優勝を飾っている。
代表チームに目を向けても、今年7月に日本代表のパリ五輪前の国内強化試合で対戦し、1戦目は素早いトランジションと高確率の3Pシュートを強調して85ー84で日本に勝利した。平均24歳という若手主体のメンバーで臨み、世代交代が進んでいることを印象付けた。
再びアジアの強豪に返り咲くべく、試行錯誤を始めているのだろう。
各国のチームが、それぞれの国を行き来しながら試合を行うEASL。フィリピンではバスケットボールが国技とされ、同じくバスケ人気の高い台湾では元NBAスターのジェレミー・リンがEASLに出場しているニュータイペイキングスに所属するなど、目玉選手もいる。お互いに刺激を受け合いながら、アジア全体としてバスケットボール文化を成熟させていきたい。