久保憲司のロック・エンサイクロペディア

プリンスはずっと自分(黒人)というものを探していた [久保憲司]

Prince And The Revolution/Parade: Music From The Motion Picture Under The Cherry Moon

プリンスには一度だけ会ったことがある。挨拶しただけなので、プリンスがどんな人かも全くわからないのだが、背が低いのにびっくりした。もちろん高い靴を履いていたので、僕より高かったと思うのですが、プリンスが僕より背が低いというのは一発で分かった。背が低いと言っても僕より1センチ低いだけですけど。噂によるとプリンスは157センチだったそうです。その時、あーこの人が何で日本製のHS・アンダーソンのギターを弾いているのか、一発で分かった。同じ型のフェンダーよりネックがスリムに出来ているからだろうと思った。

カート・コヴァーンがフェンダー・ジャパンのストラトキャスターやフェンダーのジャガーやムスタングというショート・ネックのギターを弾いていたのも同じ理由だ。彼も背が低く、手が小さかったからだ。カート・コヴァーンは背が低いと言ってもプリンスよりはでかかったと思います。カートと会ってもこの人は背が低いなとは思わなかったので。

 

プリンスが亡くなったのに、一体僕は何の話をしているんでしょう。でも、音楽業界で背が低いというのはとっても不利なことだと思うのです。特に黒人の世界では。名前のある人はみんな背が高い人じゃないですか、ハウリン・ウルフ、サン・ハウス、アルバート・キング… バンドをやるためには背が高くって、他のメンバーを威圧していかないと、大変なことになるんです。

背が低いとリトル・ウォルターみたいに狂気に走るしかないです。リトル・ウォルターの名前を語って、営業しているやつをぶん殴るよりもすぐにピストルで撃ち殺す。とんでもない人です

プリンスの時代はもうこんな風に力でねじ伏せていく時代ではなかったのですが、でも彼は色々と大変だっただろうなと思います。「ウィ・アー・ザ・ワールド」の時に突然参加するのをやめたのもきっと自分が背が低いというのがみんなにわかるのが嫌だったからでしょう。

でも、だからこそ彼は孤高の人として頑張り続けたんだと思います。

プリンスが本当に天才だったかどうか、僕みたいな凡人にはよくわかりません。マイルス・ディヴィスがプリンスとは何か説明しています。プリンスとは4人から出来ていると言っているんですけど、4人目の名前出てこなかったみたいで、僕が足します。リトル・リチャードだよ。おじいちゃん、しっかりしてや。

「プリンスはジェームス・ブラウンとジミ・ヘンドリックスとマーヴィン・ゲイとリトル・リチャードから出来ている、だから悪いわけないだろ。」

 

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