久保憲司のロック・エンサイクロペディア

ジャックス『マリアンヌ』・・・マリア様の子供、キリストは罪を改めないと許しくれません。でも僕らはロックが好きなんだからずっと罪人なんです

 

ロックというのは嵐の中で生まれるものなのです。

ローリング・ストーンズの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」です。

俺は嵐の晩に生まれた
俺がうぶ声をあげた時、お袋は降りしきる雨に打たれてた。
だけど大丈夫
俺はジャンピン・ジャック・フラッシュ
楽しい、楽しい、楽しいぜ。

キースによると「クロス・ファイヤー・ハリケーンはドイツ軍によるV2ロケットの爆撃だよ。俺はダットフォードが爆撃されている時に生まれたんだ」そうだ。

NHKの朝ドラ「まんぷく」に続いて「なつぞら」も主人公は空爆にあっている。イギリスのロックも日本のカップ・ラーメン、アニメというサブ・カルチャーもそういうことを経験した人が生んできているんだということを僕たちは忘れてはいけないという気がします。

世界が崩壊することを経験した人たちが新しい地平線を築いてくれたのです。彼らは世界がなくなったから、何かを作らなければならなかった。そんな彼らが作った世界に僕らは生きているんだということを心に刻んで生きていかなければならないなと思っている今日この頃です。

と考えつつ、僕ももう54歳でこのまま何も社会に貢献出来ず、死んでしまうのか思うと悲しくって仕方がありませんが、でも仕方がないですよね、自分の人生はこんなものだったなと諦めている次第です。

でも死ぬまでにいいから、歴史に残るものをなんか一つ作りたいなと思っています。いちご大福、カツ丼、たまご丼、オムライス、ケバブ、トルコアイス、ノーパン喫茶などなど。

そろそろノーパン喫茶再ブーム来るんじゃないですかね。一度ノーパンしゃぶしゃぶという形で再ブレイクしたんですよね。メイドカフェとノーパン喫茶をくっつけるというのはダメなんですかね。メイドカフェの萌えとノーパン喫茶の萌えは違うんでしょう。昔僕らが萌えた吾妻ひでおのエロみたいな感じにならないですかね、ならないですよね、なっても流行らないですよね。

ロシア、中国で社会主義、共産主義を懐かしむカフェとかが流行ったみたいな感じで、昭和を懐かしむ感じみたいな感じでしかノーパン喫茶は復活しないのでしょうか。

というか俺子供の頃、ノーパン喫茶行ったことないんです。行こう、行こうと思っていたらブームが終わってしまったんです。家の近所にはエミルマというノーパン喫茶がありました。しかし、それがあったのは全然近所じゃなく、天下茶屋というディープな所で、あの頃の俺は自転車に乗ってそんな遠い所までよく行ってたな、気が狂ってたんだろうなと思います。

エミルマというのは丸見えの反対で、そんな名前を店につける人だから気が狂っているような人だと思うのですが、というかこの人はノーパン喫茶が大好きで、自分の理想のノーパン喫茶を作ったのです。どういう店かというと一階は普通の喫茶店で、その床がマジック・ミラーになっていて、地下の喫茶店からノーパンで歩いている従業員が見えるという仕組みだったのです。この人が気が狂っているのは、オープンする一ヶ月前に自分だけで自分の理想のノーパン喫茶を一人で楽しんだのです。一億くらいで(そんなにかかってないかな、今だと5千万くらいで出来るのかな)店を改装し、自分が雇った授業員にパンツを履かないでもらって、誰もいない地下の喫茶店で一人楽しみオッサンは「痴人の愛」とか江戸川乱歩のような気もしますが、ノーパン喫茶ですからね。ノーパン喫茶をバカにするな。

普通こんなお店「あそこ丸見えでんがな、そんなのあきませんよ」と警察から許可がもらえないのですが、このオーナーには秘策がありました。授業員にはヒモに毛がついたようなパンツを履いてもらうから丸見えじゃないですということで風俗営業許可を取ったのですが、警察が視察に来た時、従業員の人全員がこのパンツが気持ち悪いと誰も履いてなく、「あんたこれ丸見えやん」と逮捕、営業許可を剥奪され、このお店は一ヶ月くらいで潰れてしまったのです。

警察もこんな人を相手にして大変だったでしょうね。でもこれがロックだったのです。違う、違う、俺が話たかったのはロックは嵐の晩に生まれるということでした。

そして、僕たちの嵐とはこちらなんですよ。

嵐の晩が好きさ
怒り狂う闇が
俺の道案内
嵐の晩が好きさ
なぐりかかってくる
雨のオトコたち
俺は湖に船を出す

(中略)

何も見えない嵐の晩に
激しく狂ったオトコたちにかこまれて
俺はマリアンヌを抱いている

「マリアンヌ」ジャックス

「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」と全然違いますよね。「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」はメジャーで、俺たちのロックはマイナーなんです。悲しいですよね。今の日本のロックにマイナーの曲は少なくなったですけど、メガデスのマーティ・フリードマンが「日本のロックは3コードのような曲でも、ディミニッシュとかオーギュメントみたいな難しいコード出てくるんだよね」と半分誉めながらも貶しているようなことを言ってた。日本語はシンプルだからそういうコードを使ってメロに緊張を与えないと飽きられるということでそういうコードが使われるんだろうけど、僕は早く外国みたいにシンプルでも受ける曲が日本でもたくさん生まれないかなと思っています。K-POPのブラック・ピンクなんかはもうほとんど欧米の曲になってきているので、日本からもそう言う楽曲が生まれてくることを期待します。シンプルってどう言うことかと言うとダンス・ミュージックなのですよ。欧米はダンス・ミュージックをいつも求めているのに、日本はそういうのを求めてなかったのです。

 

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tags: Patti Smith The Rolling Stones ジャックス

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