「RAMONES」 なぜパンクがナチのイメージをよくとり入れてたのか。パンクとは負け犬、世界から嫌われていた子供たち、後ろ指を刺されていた子たちの音楽だったからです [全曲解説(後編)]
→前回よりつづく
ラモーンズのデビュー・アルバムの全曲解説の続きです。ラモーンズって別に3コードが命だったわけじゃないんです。ラモーンという名前がビートルズのポール・マッカートニーがホテルに泊まる時の変名ポール・ラモーンからとられているように3コードと言う縛りがあったわけじゃなく、どちらかと言うとポールのように6度マイナーなんかを使って世界を征服しようとしてたんですけどね。
なぜ早く演奏しよう、曲も短くしようとしたのかというと、彼らが大好きだったMC5のメッセージ “キック・アウト・ザ・ジャムズ・マザーファッカー“=『ジャム(即興演奏、まだラモーンズ が登場するまではマリファナやってたらたら長い演奏する奴らが多かったのです)やっている奴らをブチかましてやろうぜ』というメッセージを引き継いでいたからです。ギターのジョーイのギターが当時誰も弾いてなかったモズライトやリッケンバッカーを弾いていたのはMC5のギターのフレッド・スミスがモズライトとリッケンバッカーを弾いていたからです。
そして、ラモーンズ のマネジャーはMC5のA&Rで、その弟分だったイギー・ポップのストゥージズのマネジャーをやっていたダニー・フィールズです。イギーはダニーからラモーンズのことを聴かされて「俺みたいに言うことをきかない奴じゃなく、言うことをきく4人を見つけたんだな」と思ったそうです。マルコム・マクラーレンがセックス・ピストルズでやろうとしていた事をやろうとしていたのがダニー・フィールズであり、ラモーンズ だったのです。
4.「アイ・ウォナ・ビー・ユア・ボーイフレンド」
シーナ&ザ・ロケッツの「ユー・メイ・ドリーム」の元ネタ、いやこんな言い方はおかしいな。世界同時革命が起こっていたのでしょう。
「アイ・ウォナ・ビー・ユア・ボーイフレンド」はライブで休憩するため&シングル・ヒットを考えて作られた。ラモーンズのはヒットにはほど遠かったが、シーナ&ザ・ロケッツのはCMに起用され日本で大ヒットした。
「ユー・メイ・ドリーム」と同じくYMO主導のプロダクションで制作された次のシングル「ベイビー・メイビー」もパルコのCMに使われ、今でいうとiPhoneのCMに使われるようなものです。
細野さんはこの2曲だけは「僕らにトラック作らせてくれない」と言ってきたそうで、細野さんは世界でどういうことが起こっているか完全に分かっていた。ニック・ロンがプリテンダーズのキンクスの「ストップ・ユア・ソビング」だけは「プロデュースするよ」と言ったのと全く一緒です。
今や日本ロックの親玉みたいなシーナ&ザ・ロケッツはあの頃は時代の最先端を行っていたのです。本当はラモーンズもそうなるべきだったのですが、ラモーンズは失敗したのです。
何を言いたいかというと、これが後に起こるニュー・ウェイブ、第2次ブリティシュ・インベイジョンの原型だということです。ラモーンズはシンセサイザーという最先端の楽器(シンセサイザーが登場して10年経っていたが、ついにその奇妙な楽器が世界を制覇する時代が来ていたのです。普通の人には新しい音楽に慣れるのに10年の歳月を必要とするのでしょう)を使わなかったが、シーナ&ザ・ロケットはYMOと言う世界最先端のグループの力を借り後にいや、もうイギリスでは起こっていたニュー・ウェイブの同時革命を成し遂げたのです。 この頃クラフトワークも次なる展開を考えていました。それが何かと言うと新しい音楽であったパンクをどう自分たちの音楽に取り入れるかと言うことを考えていたのです。
クラフトワークとYMOは、パンクのミニマル性と自分たちの機械が生むグルーヴが(本人たちはマシーン・ミュージックと呼んでいたが、この頃はまだMIDIもなく人力で同期させていました。クラフトワークもスパークス、YMOを今だったらリズム・マシーンのスイッチを一つ押せば済むことを人力で、機械が叩いているように演奏していたのです)うまく調和すると思っていたのです。そして、それが新しいポップ・ミュージックになると思っていたのです。
クラフトワークはフランスにパンクを持ってきた、いや世界で誰よりも早くパンクを紹介したスカイドック・レコードのマーク・ゼラマティに相談していたが、結局自分たちの音楽にパンクを取り入れることは止め、YMOは自分たちの音楽に取り入れるのではなく、シーナ&ザ・ロケッツで実験を始めた。そしてその成果はスカイドッグ・レコードからリリースされたのです。
誰が一番最初という話ではないんですが、誰もが気づいていたのだフィル・スペクターがやったことを今の音楽の手法でやれば億万長者になれると、この手法は今もラナ・デル・レイ、ビリー・アイリッシュに受け継がれています。
ラモーンズもこのことが分かっていたのが、なぜか売れなかったのです。
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