久保憲司のロック・エンサイクロペディア

ワイヤー『ピンク・フラッグ』 AIが世界を取り巻いたとき、僕たちはワイヤーが作ったような音楽を鳴らすのでしょう。これは過去、現在、未来の音楽なのです

 

ザ・クラッシュの『白い暴動』で、このアルバムこそポスト・パンクの原点です。そして彼らの反ロック、反黒人の音楽に当時のイギリスの若者たちは感化された、と書きました。当時を知っている人間としてはその爆発ぶりはコロナ(不謹慎ですね、すいません)やゾンビが増えていくような感じでした。

今でいうと、YOASOBI聴いて「めっちゃいいわ」と若い人が、ノートパソコンだけで打ち込みと生音の融合の音楽作りだして、それにボカロ使ってメロディ考えだすような感じでしょうか。

なんでイギリス人がここまでパンクに夢中になったかというと、妄想ですが、初めて産業革命を経験した人たちだからなんじゃないかかと思うのです。

イギリス人がめっちゃビールを飲むようになったのは、産業革命のせいだと言われています。当時は工場で働くというのは大変だったみたいで(今も一緒でしょうが)、一度動き出した機械を止めるより、人間を働かせ続ける方が安上がりだったため、人は工場に来ると食事休憩もとれずに八時間(もっと長かったかもしれません)延々と機械にへばりついていかないといけなかったそうです。手を極力止めず食事(栄養)を効果的に摂取する方法がビールだったそうです。農業時代より、金を稼げるようになったのですが、アル中になったり体を壊す人が続出したそうです。

この状況をなんとかしないと考えたのが教会の人たちです。ビールに変わる簡単に栄養が取れる食材として、それまで貴族しか飲めなかったカカオを、なんとか安く提供する方法として考えられていったのが、カカオの固形化チョコレートなのです。これがキット・カットなどの板チョコの始まりです。キット・カットがアルミに包まれ、割れやすいように作られているのはその名残なのです。

工場の仕事は、子供たちでも出来るような簡単作業で、大人と同じようにかりだされました。養う家族がいなから、大人より安く雇え、文句を言わない子供たちは重宝されました。酷いですよね、日本も一緒ですか「おしん」です。機械の発明によって子供でも機織りが出来るようになったのです。

なんか今と似てますね。AIの発達で倉庫の仕事などロボット管理でよくなったから、PC渡せば勝手に使い方覚える子供を安く使えばいいんじゃないなんてね。もちろん法律で禁止されていますから、そんなことおこらないですが、法律が完備してない国だと子供が今だに働かされいるのです。

こういう背景がパンクのあの怒り、絶望に染み付いているのじゃないかと僕は思うのです。そんなポスト・パンク・バンドを代表するワイヤーの音もそうやって聴けば全部理解出来るのではないでしょうか。

ワイヤーはポスト・パンク以外にアート・ロック、アート・パンクと言われますが、彼らのアートには、こうしたイギリスの労働者階級の怒りみたいなものを感じます。

 

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