『ジギー・スターダスト』 この頃のロック・ミュージシャンが僕に教えてくれたことは学校教育を受けなくっても自分で努力すればなんとかなるということ [全曲解説(4)]
『ジギー・スターダスト』全曲解説 (1) / (2) / (3) / (4)
→前回(3)からつづく
今回で『ジギー・スターダスト』全曲解説完結です。長い間お付き合いくださってありがとうございました。このアルバムを聴くのが楽しくなっているでしょうか?あーそうだったのかと、おもしろおかしく聴ける箇所が増えて、聴くのが楽しくなっているといいのですが。
「ハング・オン・トゥ・ユア・セルフ」
「スター」がヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「アイム・ウェイティング・フォー・ザ・マン」を下地にしているとすると、この半音の移動を強調した「ハング・オン・トゥ・ユア・セルフ」はセックス・ピストルズ、パンクの誕生を予感したような曲です。
ブライアン・イーノの「ニードルズ・イン・ザ・キャメルズ・アイ」もそうですが、「アイム・ウェイティング・フォー・ザ・マン」は本当に色んなアーティストに影響を与えています。ハンマー・ビートのようなリズムが生む新しいサイケ感が、クラウト・ロックにも影響を与えました。アメリカでは全く相手にされなかったのに、イギリスというかヨーロッパに多大な影響を与えました。このリズムというか狂気がデヴィット・ボウイの「ヒーローズ」と並んでソ連の鉄のカーテンを壊したような気がします。
大きく言えば「ヒーローズ」も「アイム・ウェイティング・フォー・ザ・マン」の子供のような曲です。ロマン派のアーティストたちがヨーロッパの社会、政治、経済を変化させたように、これらの曲が人々の考えを変えていったのです。ピート・タウンゼントがちょっと前のザ・フーのコンサートで「この赤い楽器はファシストを殺す」といつもの彼のように謙遜しながら冗談のように言ってましたが、本当だなと思うのです。ウクライナで戦っている人たちの耳には今どんな歌が聴こえているのかとっても気になります。デュア・リパよりも「ヒーローズ」「アイム・ウェイティング・フォー・ザ・マン」や、U2の「ニュー・イヤーズ・デイ」とか流れてそうです。
「ハング・オン・トゥ・ユア・セルフ」はロック・スターが売れて、自惚れるじゃないぞと歌っているような気がします。
彼女は早口言葉の嵐だ(うるさい)から、今夜のショーには来るだろ
照明に祈るよ
彼女は僕のお金じゃなく、僕の彼女を欲しがっているんだ
彼女は魅力的な太もものコレクターだから
彼女はエレクトリックなドリームを夢見るカム・オン いいものを手にいれたのだから
カム・オン 成功すると思っているなら
しっかりやらないといけないね踊れない、しゃべれない、ただ遊ぶだけ
でも僕たちはタイガー・バーム(みなさん覚えてますか)みたいに動く
盗んだギターでとことんやる
君は祝福されている、だって僕らスパイダーズ・フローム・マース(バンド名です)カム・オン いいものを手にいれたのだから
カム・オン 成功すると思っているなら
しっかりやらないといけないね
「ジギー・スターダスト」
次は「ジギー・スターダスト」です。歌詞読めばどんな内容か一発で分かるでしょう。
ジギーはギターを弾く(チャック・ベリーのジョニーと一緒ですね)
そして、スパイダーズ・フロム・マースのウィアードとギリー(バンド・メンバーの名前です)とかっこよくジャム(演奏)するでもジギーはジミヘンの真似をして無理して左で弾いたら
カタワになったのだ
そしてスパイダーズ・フロム・マースはジギーのバンドになったジギーはいい歌手だった
日本の猫みたいに目をひん剥いて、髪も振り下ろして歌う
彼はみんなを縛首にするように突き放したり、舐めまわすように笑ったり出来るんだ
バンドはみんなぶっ飛んでて、その白い舌は吊ってんだファンが俺たちの仲を引き裂こうとしたとき
俺のバンドはどこにいた
ビールで軽く酔っ払っているし
彼のファンを虐めようか
それとも、ジギーの美しい手を潰してやろうかジギーはゆっくりと
俺たちに魔法をかけていった
ファンはバカで
彼は生まれつきクールな奴だって
でも彼はやり過ぎたのさ
でもさ、彼はギターを弾けたんだよジギーは自分のエゴとセックスして
自分の心に囚われた
ハンセン病の救世主みたいにね
でも、彼のファンが人を殺した時
僕はバンドを解散させなければならなかったオー・イエー
ジギーはギターを弾いただけなんだよ
LSDをやっておかしくなったヴィンス・テイラーというロックンロール・シンガーのことを思って作った歌とされてますが、この頃はロックやっている奴はみんなこんな風になるのじゃないかと思われてました。ヴィンス・ティラーがどうおかしかったかというとLSDをやって、予知能力を得られたと勘違いしていたのです。彼の代表曲はクラッシュのカヴァーした「ニュー・ブランディ・キャデラック」です。イメージとしてはイギリス(パチモン)のジーン・ヴィンセントです。
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