久保憲司のロック・エンサイクロペディア

Charli XCX “BRAT” モリッシーの『Viva Hate』もそうですけど、時代の変化を一番最初に歌にするのはイギリス人なのかもしれないですね

 

一体世の中がどんな世界なのか僕にはよく分からないです。

昔よりはよくなっていると感じます。

トランプが勝つのか、ハリスが勝つのか、日本では“もしトラ”ということでトランプ勝利ということになっていますが、どちらが勝つのか全く分からないです。

この戦い、色々な含みを持っているが、一言で表すなら、男性が勝つのか、女性が勝つのかということであると思っています。

男と女にどちらが勝つとか表現、紅白歌合戦みたいでとってもおかしいと思うのですが。

白人かカラード(こういう表現が正しいのか分かりませんが)かという戦いも含まれていそうですが、なんかもうこっちの戦いはオバマの時と比べるともう決着ついているような気がします。

こちらの方はもうなんとなく、カラードの時代になるでしょうということなのでしょう。

カラードの時代という表現もおかしいですね。カラフルな時代になるということはみんな分かっているのです。スタートレックの運転席の世界になるということは西洋社会ではもう容認されたのだと思います。

100年前、黄禍論というのが議論されましたが、バカみたいな話ですよね。

モリッシーが『Viva Hate』の「ベンガリー・イン・プラットフォーム」で、西洋社会にいるアジア人は寂しそうに見えると歌いましたが、そんなの完全に間違っていたというのがよく分かります。考えてみたら『Viva Hate』ってアルバム・タイトルからすごいですよね。ザ・スミスを解散して、逆張りをやっちゃったのでしょう。ザ・スミスが左のバンドって思われていたから、「スェードヘッド」「ジ・オーディナリー・ボーイズ」とかみたいなみたいな、オイ・パンクが歌いそうな曲目の曲を持ってきたりしたのでしょう。

 

 

 

駅のプラットホームで寂しそうにしているアジア人を見て、モリッシーは僕も君と同じだよ、頑張れと歌うべきだったのに、西洋社会に馴染もうとすると辛いよね、帰った方がいいよって、捉えられるような歌い方をしてしまったのです。

ほっとけよですよね。

京都から神戸へ行く電車で、神戸に近づくにつれて、バイトに行くんでしょうね、アジア人の子が乗ってくるんですけど、辛そうだなって、思わないすよね。頑張れ、日本で成功したらいいねとか、思うすよね。

『Viva Hate』で当たっていることって、「エヴリディ・ライク・サンディ」くらいなんですよね(多様性の中で「スェードヘッド」「ジ・オーディナリー・ボーイズ」として生きたいと思うのは間違ってないすよ)。AIのお陰で毎日IT企業からお小遣いもらって、細々と何もしないで灰色の空の下で暮らしていけそうな未来が見えているような気がします。オルダス・ハクスリーの「すばらしい新世界」の世界ですね。

『Viva Hate』になるって、1988年に予想してたの、すごいですけどね。でも、お前そっち側やったんって、笑ってしまいますけど。

話を戻しますが、今回のアメリカの選挙の争点って、女性の時代になるかどうかなんだと思います。

女性の時代という言い方もおかしいですけどね。

8年前にトランプとヒラリーが戦った時は、まだ世界は女性の時代じゃなかったのです。女性が大統領って嫌だよねって、人が女性の中にもいたのだと思います。それからMeToo運動があって、女性の間で、私たちはこの世の中の被害者なのだという認識がどんどんと広がっていったのだと思います。

ウクライナ、ガザの戦争を見ていて、戦争するの男だよね、嫌だよねという空気もあると思います。

今度はどっちが勝つんでしょう。僕はなんか色々問題がありそうですけど、ハリスが勝つような気がするのです。もうそろそろ、女性の中でなんで私たちが被害者なのよという空気が世の中に溢れているような気がするのです。

イギリスのチャーリーXCXの最新作『Brat』なんか聴いているとそれがよく分かるんですよね。もう男性目線なんかまったくない、女性が女性として、楽しく生きるということが歌われているのです。

 

 

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tags: Charli XCX Morrissey

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