津田大介のメディアの現場

vol.0 「メディアの現場」創刊にあたって

津田大介の「メディアの現場」2011.8.31(vol.0/創刊準備号)

ども、津田大介です。

ここ1年ほど「津田くん、有料メルマガやればいいじゃん」って話をされることが多くなりました。ソーシャルメディアが普及したことで、90年代後半から存在した「有料メルマガ」というオールドなビジネスモデルが個人のマネタイズ手段として新たに再定義され、多くのジャーナリストがこぞって有料メルマガビジネスに参入している状況を受けてのことでしょう。

有料メルマガに興味がなかったわけではないですし、いくつかそういうお話もいただいていたのですが、ただでさえ筆の遅い僕のことですから、「まぁ普通に毎週メルマガ出すとかムリムリ」と思って放置しておりました。

最近は原稿書き以外の仕事が増え、マスメディアやニコニコ生放送などへの出演がメインの仕事になってきました。そんな中、昨年末ぐらいからぼんやりと考えていたのは、「政治――特に政策にフォーカスしたネットメディア作りたいな」ということだったんですね。

とにかく新聞やテレビの政局報道がクソつまらない。細かい政策のアジェンダや、政策を実施した際のシミュレーションなど、もっとこっちが知りたい話を報道してほしい。日本にそういうメディアがゼロとは言いませんが、少なくともネットにはなかなかないなぁと。

ポップカルチャーニュースサイトの「ナタリー」を作った時もそうだったんですけど、僕の場合「世の中にそういうメディアがないんだったら作るか!」的な発想になるんですね。なので、実際に作るコンセプトとかを昨年末くらいからちょっとずつ考え始めたんです(原稿書きから現実逃避するためにという説もありますが……)。

その時はまだ僕ものほほんとしてまして、「『Huffington Post』の日本版っぽいものプロデュースします。なんせあのメディアはAOLに200億円で買収されたんですよ!」的な適当なことを投資家に言えば、それなりに金も集まって面白いことできるかな……くらいに思ってたわけですね。

で、本格的に作る準備始めようかなと思っていた矢先、東日本大震災が起きました。大震災が起きた直後の自分の感情の揺れ動きや、情報発信のスタンス、ソーシャルメディアの可能性などについては、いろいろなメディアで書いたり語ったりしているのでそちらをチェックしていただくとして、東北地方に何度も取材に行って行政や現地の人の話を聞いている中で、「政治メディア作らなきゃな」という思いが、改めて違う形で大きくなっていきました。

そんな矢先にJ-WAVEさんから「『JAM THE WORLD』の火曜日ナビゲーターをやらないか」という話をいただき、7月からナビゲーターに就任することになりました。「ニュース番組」を毎週持つというのは自分の中でも相当貴重な経験で、毎週ヒーヒー言いながらニュースと向き合ってます。

時事ニュースと日々向き合うようになって僕が感じたのは「ネットならではの新しい方法論で、自分のコンセプトが100%生きる形のメディアを作りたい」ということでした。

だとすれば、人からお金を出資してもらってメディアを作るのは厳しいなと。「金は出すけど口は出さない」なんてスポンサーは、現実問題としてなかなかいないですから。

実はこの間、芸能事務所的なところやマネージメントオフィスから「津田くんマネージメントするよ」というお話もいただいていたんです。実際、目の前の仕事に忙殺され、日々のスケジュール管理もままならなくなっている状況でしたから。でもやっぱり自分は、自分の金で、好きなように、好きなタイミングで、好きなことをやりたいなと。結局マネージャーも自前で雇って、自分で金を稼ぎ、それを原資に新しいメディアを作るという方針……というか「覚悟」を6月くらいに固めました。

とはいえ、メディア作るとなると、人雇って記事作ってという部分に大きなコストがかかります。実際、ある程度毎月の運営費がそれなりの金額で入ってこないと、メディアとして継続するのは厳しい。毎月固定の運営費を継続的に払えるようにするには、固定の収入源を確保する必要がある。だとしたら、現時点でそれを実現する方法は有料メルマガしかないな、と。

ということで、このメルマガは基本僕が新しく作る政治メディアの原資を稼ぐための手段という位置づけになります。でも、それだけでは面白くないので、その政治メディアを作っていく過程も随時レポートしていこうと思ってます。

幸いなことに僕はテレビやラジオ、雑誌といったマスメディアで仕事する機会が多く、そのうえでニコニコ生放送やUstreamなど、新しいネットメディアでもたくさん仕事をさせていただいています。そして何より僕にはツイッターという強力な情報発信手段があります。新旧両メディアで縦横無尽に活動できている今だからこそ、メディアの「現場」がどうなっているのか、「中の人」が今何を考えてどのようなコンセプトで情報を伝えようとしているのか、僕の目線から伝えることに意味があるのではないかと考えました。

さまざまな視点から解説されるニュースを読むことで読者がメディアの未来像を描けるようになる――そんなメルマガが作れればいいなと思っております。

メディアを選択することは、自分たちが現在置かれている状況を冷静に見るうえで、とても重要な作業です。情報が爆発的に増え、マスメディアや政府、行政全般に対する信頼度が落ちている今だからこそ、メディアに序列を付けず、多様な情報にアクセスし、自分なりの判断基準を持つことが求められているのでしょう。このメルマガがそのための一助となれば幸いです。

たぶん僕のことなのでうっかり発行遅れたりすることもあるかと思いますが、長い目で見ていただければありがたいです。

このメルマガも、やがて形になるであろう政治メディアも、読者の皆さんと一緒に楽しく作っていければと思っております。

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