ラブホテルの「ホンネとタテマエ」 ・・・誰が警察をサポートしているか -ろくでなし子再逮捕 [6] -(松沢呉一) -3,148文字-
「「こっちはいいのか」の擁護論が迷惑な理由・・・行き過ぎた規制は違法店を生む -ろくでなし子再逮捕 [5]」の続きです。
ラブホも「ホンネとタテマエ」の二重構造になっている
風営法の運用はいたって恣意的であり、ゆるめたり、絞り上げたり、こっちは放置して、あっちは摘発したり。クラブも長らく黙認されてきて、ここ数年急激に締め付けが厳しくなり、ついに法改正に動くことになったわけです。
「ビバノンライフ」でここまで書いてきたように、現状の風営法改正案については大いに疑問があるのですけど、法律を変える以外に方法はなく、そのために動いたクラブ業界は今後の手本になろうと思います。「警察はFUCKだぜ」と薄っぺらな警察批判をしていても解決しません。しかし、もっとも学ぶべきは、表面には出ないまま、もっとも改正によって得をする社交ダンス業界です。日頃の活動や力を行使できるネットワーク作りがいざと言う時にモノを言う。事が起きてから慌てても間に合いません。
風営法で改正すべき点はまだまだあります。風営法の届けが必要なはずのラブホテルの世界でも、旅館業法の届けだけで営業する方法が長らく放置されてました。ほとんどの利用者は区別できないながら、法的には二種のラブホがあったわけです。今もあるんですけどね。
風営法のラブホと旅館業法のラブホの二種で、後者はラブホにしか見えなくても、法的にはビジネスホテルと同じ扱いです(写真のラブホは湘南にあり、風営法の届けを出しているラブホだと思います。クリスマスシーズンに合わせて出してみました)。
後者のラブホの多くは違法営業です。「多くは」であって「すべては」ではありません。旅館業法のラブホでも合法の範囲でやっているケースがあります。フロントに人がいるタイプのラブホがそれ。今は気後れすることなく、ラブホを利用する人たちが出てきているため、こういうラブホも成立するようになりました。対して、フロントが無人のラブホは風営法の届けを出していないと違法です。
旅館業法のラブホは、アダルトグッズと同じで、客が勝手にエロ目的で使っているだけということになっています。どこもかしこも「ホンネと建前」という二重の構造になりやすいのは規制が厳しすぎるからです。
突然「偽装ラブホ」として摘発が始まった
こういう二重のラブホで安定してきたわけですが、違法の業態のラブホが「偽装ラブホ」として、4、5年前から問題にされ出して、兵庫県を中心に、次々警察が入りました。兵庫県警が率先しているように見えたのは、ラブホに反対する市民グループの活動が盛んだったからに他なりません。
2011年に「偽装ラブホ」を締め付けるため、旅館業法のホテル、つまり一般のホテルではソファーの設置ができなくなくなります。意味がわかりにくいでしょうが、ラブホでは、ソファーが必須です。まずそこでイチャイチャして、「そろそろシャワーを浴びるか」になるか、そこでまずは一戦を交える。対して一般のホテルでは硬い椅子とテーブルがあればいいので、一般のホテルではソファーの設置をできなくすることで、偽装ラブホの営業をしにくくしたわけです。それ以外にもホテルの構造や料金表示などで改正が行われました。
その際、期限を区切って、いわば既得権として、条例がどうあれ、新規に風営法上のラブホとして届けができるようになる措置がとられ、風営法の要件を満たしている「偽装ホテル」は風営法の届けを出し、要件を満たしていないホテルはビジネスホテルやカプセルホテルに転じ、現在は落ち着いています。地域住民や警察がうるさくない一部の地域では、引き続き違法営業を続けているケースがありますが、以下に書いているように、ここは黙認でいいと思います。
これらに比して、今のところ、アダルトショップは無届けに対しても警察は寛大です。浄化作戦の際には、大量のDVD屋が捕まってますが、あれはモロ出しを売ってましたので、わいせつ物頒布の容疑だったかと思います。風営法違反による摘発も可能ですけど。
警察はやる時はやる。その判断は警察に委ねられます。その時に「他の店も無届けなのに」と言っても無駄です。「はあ、そうですか。じゃあ、そちらも摘発しますね」と言われて終わり。その程度のことは理解しておいて欲しい。
警察にそのような意図が仮になかったのだとしても、北原みのりの経営する「ラブ ピース クラブ」は人質をとられたに等しいわけで、なぜこんなことがまかり通ってしまうのかをよーく考えていただきたい。
普段から、こういう業界のこと、性表現のことをちゃんと考え、法律までを調べていれば安易な発言はできないわけで、事件が起きてから急に飛びついて、なにかしらの意味がありそうなことを言いたがるから、「こっちはいいのか」といった安易な発言になる。しばらく黙ってコツコツと調べ、考える作業をやってから発言した方がいいと思います。この機会にその作業を始めましょう。
私がこれから書いていくことはその参考にしかなりません。この問題の答えはひとつではないので、それぞれが自分の頭で考えていくしかないと思います。
誰がこういう状態を作り出したのか
そもそもの問題は、警察がいつでも摘発できる状態を作り出してしまっていることにあります。しかし、それは警察の責任だけにするわけにはいかない。この社会が望んでこういう状態を作り出しています。どうしてこうなったのかを最初から辿ってみましょう。
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