松沢呉一のビバノン・ライフ

全業種がハッピーな法改正の方向-ゲイバー摘発を受けて 3(松沢呉一)-2,586文字-

風営法をどう改正すればいいのか-ゲイバー摘発を受けて 2」の続きです。

 

 

 

接待の要件を厳密にする方法

 

vivanon_sentence前回書いた方向に続いて、もうひとつの選択肢は「接待の範囲を狭める」ということです。

その際、どこに線引をするか。多くの人の実感としては「飲み屋の従業員と客が話し込んでもいいではないか」ということになろうかと思うのですが、「会話」を接待から外すのは難しい。接待の最重要な行為が会話ですから。

銀座のクラブでも、六本木のキャバクラでも、ホステスは客の話を聞き、相槌を打ち、質問に答えるという会話が接待の中身です。膝に手を置く、煙草に火をつける、酒を作るなどもあるわけでけど、会話を2号の要件である接待から外すと、少なからぬクラブやキャバクラも2号許可がいらなくなりかねない。

接待の内容で区切るIMG_3033のではなくて、物理的な差に線引をするしかないのではないか。つまりは「ボックスか、カウンターか」です。俗説として成立してきた「接待はカウンターでは成立しない」という基準を法律にすればいい。実際に警察は長い間そう運用してきて、とくに支障はなかったわけですから、そうすることに問題があるとは思えない。

せいぜい「ガールズバーで、実質的にキャバクラのような業態が成立していることを放置していいのか」という批判が出るくらいかと思います。「いいんじゃね?」と私は思うのですけど、よくないと思うのであれば、カウンター越しでできることも制限すればいい。「ボックス席に同席すること」以外に「指名制があること(注)」「体を接すること」を接待とすればいいわけです。

カウンターの店では、指切りや手相を見るのは諦めましょう。ゲイバーでは「ごぶさた」と言って股間を揉むことを諦めましょう。

カウンター越しであれば、カラオケのデュエットは放置でいいでしょう。しりとりもいいと思いますよ。トランプもいいでしょう。ただし、トランプの「スピード」は手が触れることがあるので、やめておきましょう。「ポーカー」や「ダウト」はOK。カルタも要注意。

 

 

 クラブ業界と飲み屋業界は対立か?

 

vivanon_sentence以上の大きくふたつの方向があり、「接待営業は深夜の営業を可能にして、接待のあるスナックやバーは2号許可をとる」「接待の要件を狭めてスナックやバーは現状のまま深夜酒類提供営業の届けだけで営業できる」というふたつを比較した時に、当然、後者の方がいいわけです。

しかし、ここでもうひとつ、考慮しなければならないことがあります。ここまでの風営法改正の動きです。成立はしなかったにしても、現状の改正案がチャラにならない限り、このふたつの改正はさして意味がありません。

 

 

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