松沢呉一のビバノン・ライフ

秋山理央の動画を無断使用-厄介な「レイシストカウンター」批判 20(松沢呉一) -3,093文字-

独立映画鍋からの回答について-厄介な「レイシストカウンター」批判 19」の続きです。

 

 

これが問題の発端

 

vivanon_sentenceここまで奥歯に物が挟まったような言い方しかできず、読んでいる方々もイライラしていたのではないかと思うのですが、著作権者が「もう公開していい」と判断しましたので、先に私の方から説明しておきます。

昨年11月のことです。カメラマンの秋山理央から、「レイシストカウンター」について連絡があります。仮編集の段階で、彼の動画が使われていたのですが、この経緯を聞いて呆れました。

2014年2月に、わたなべりんたろうからインタビューの依頼と動画の使用についてのメールが届きます。すでに信用できない人間と判断していた秋山理央はこれを無視します。

にもかかわらず、YouTubeで公開された「予告編」(すでに削除されている)では、秋山理央の動画が使用されていました。

使用されていたのはこの動画の一部です。

 

 

同年11月に、仮編集が終った知らせと、「出来ましたら使用許可をいただけたら幸いです」と書かれたメールが届きます。

許可していないにもかかわらず、仮編集版でも動画は使用されていました。広く公開するものではないですから、著作権侵害とまでは言えないにしても、本人の申告通りだとすると、法外に高い金を払って編集をしてもらっているわけです。許可が得られなければ動画を外さなければならず、そのためにまた金を使うことになるはずです。「断るわけがない」と思っていたのでしょうか。

使用していたのは上の動画に加えて、以下の動画の一部です。

 

 

秋山理央は仮編集版を観て、「面白くない」「クォリティが低い」「カンパの使い道が不透明」の3点を挙げて断ります。ここでのカンパはクラウドファンディングではなく、製作費に関するカンパです。

この話を聞いた段階で、私は自分の出演についてペンディングにしつつ、ほとんど断ることを決めていたため、このあと辞退することをわたなべりんたろうに伝えます。ソウル・フラワー・ユニオンの中川敬も丁寧なアドバイスを添えつつ、すでに辞退を伝えてました。

 

 

クラウドファンディングで動揺

 

vivanon_sentence続いて、わたなべりんたろうは、使用料を払うと言い出します。編集し直すのに金をかけるんだったら、使用料を払った方がいいということでありましょうが、無断で使用してはいけないことを認識していたわけですよ。

これも秋山理央は断ります。

あの仮編集を見れば出演を辞退する人が続出するだろうから、映画として成立しないだろうと我々は考えていました。確信していたと言ってもいい。なぜそこまで確信できていたのかの事情は次回説明します

しかし、12月に入ってクラウドファンディングが始まったことを知って愕然とします。出演者の名前を見てさらに愕然。結局、あれ以降、誰も降りていなかったのです。私らは「どういうことだよ」と動揺。しかも、「あれでカネ集めかよ」と。

この時に、ここまでの経緯を知って、「あのクラウドファンディングに協力するのはまずい」と説得に動いた人もいますが、辞退した我々が公然とこれを批判するのはためらわれます。すでに無関係ですから。

私もそれに対する危惧をメルマガに書くに留めました。ここに至ってもなお辞退をせず、それぞれの判断で出演し、クラウドファンディングに名前を使われていることを容認しているんだから、何かあったら彼らが責任をとればいいでしょう。

以降は関心さえ抱かないようにしてました。あんな映画に協力したり、推奨したりしている人を見ると、情けないし、腹が立つし。

 

 

断ったにもかかわらず、秋山理央の動画を使用

 

vivanon_sentenceしかし、無関心ではいられなくなりました。公開が始まってから、秋山理央は「自分の動画が使用されているようだ」と言います。

これで私はブチ切れました。いかに差別反対のためであろうと、カウンターのためであろうと、やっていいことと悪いことがあります。

秋山理央は2011年IMG_3132から今までずっとデモ動画を撮り続けています。地を這うような撮影を続けてきたのです。

食費を切り詰めて深夜バスに乗って全国を回り、皆がデモのあと酒を飲んでいる時にも、「できるだけ早く公開したい」と深夜まで編集をする。時にはデモ主催者や参加者から難癖をつけられながらも、4年間にわたり撮影し続けてきたことを知っている私としては、やすやすと「自分で撮らなくても秋山理央の動画やスチールを使用すればいい」と考えただけでも許しがたいのですが、断ったにもかかわらず、使用したのは、相手が誰であってもやってはいけないことでしょう。

許さん。

 

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