ハロウィンのばか騒ぎを考える-ゴミと公共心 1-(松沢呉一) -2,845文字-
ハロウィンのゴミを叩くことの狭量さ
この土日はいずれも渋谷を通り過ぎました。外に出るとハロウィン騒ぎで道も歩けないので、ほとんど駅の外には出なかったのですが、おかしな格好をした破廉恥な若者たちがいっぱい駅構内や電車の中にもいまして、どうせ今年もゴミだらけなんだろうなあ、そして、それをここぞとばかりに糾弾するゴミがいっぱいいるんだろうなあと想像しておりました。
案の定、Facebookにはそういう投稿がいっぱい流れてきて、うんざりします。「マナーを守れないんだったら、ハロウィンのバカ騒ぎをやめろ」と。
もちろん、ゴミは捨てない方がいい。街を汚さない方がいい。ゴミをポイ捨てするような人間は注意されてもいい。
しかし、人が集まればゴミはどうしたって出るのです。それを「公共心がない」だのなんだの言うヤツらこそ公共心がない。あるいはこういうヤツらの公共心は狭い。
これに対しては、「昔からそんなもんだったろ」という指摘がなされています。その通り。どうしたって出るゴミくらいでこうも叩かれることはなかったと思います。この社会は狭量になってきている。
ハロウィンで騒ぐ人たちよりも、公共心をネタに若者叩きをしている人たちのバカ騒ぎの方がずっと害悪だと思います。前者はまだしも渋谷という街にもたらすメリットがありますので。
「昔からそんなもんだろ」という指摘とは別に、ゴミをどう考えるのかについては、ちょっと前にSEALDsのメンバーにも講釈を垂れていました。
「デモの最後尾でゴミを拾うのはいいこと。自分で出したゴミは自分で片付けることはいいこと。おかしな批判をされないための防御策としても間違っていない。しかし、その解決のためには他に方法があるのかもしれないと常に考えておいた方がいいし、ゴミを捨てても問題が生じにくい社会のありようを頭の片隅で意識しておいた方がいい。そうじゃないと、ゴミを拾わない人たちが悪いかのように思い込んでしまい、それを叩くクズになる」
そしたら、彼は「あ、この間、同じことを指摘している人がいました」と言ってました。同じことを考えている人は当然いるでしょう。これは「公共」をどう考えるのかという問題ですから、意識している人は意識しているはず。
彼に話した内容はメルマガでも書いたのですけど、ここで改めてまとめておきます。
※写真は、ハロウィンに関係あるのかないのか知らないですけど、土曜日に、渋谷駅の横のステージで歌を歌っていた人。こう見えて、心に沁み入るいい歌でした。
追記:この人はずれやまズレ子さんでした。名前はなんとなく知っていたんですけど、初めて歌を聴きました。
ソウルクィアパレードのゴミ
クィアパレードに参加するため
にソウルに行った時のことはこの「ビバノンライフ」でも何回かにわたって書いていたわけですが、他にもいっぱい韓国で学んだことがあります。
右の写真はまだ早い時間帯のもので、この市庁舎前広場が人でいっぱいでした。
当然ゴミが出るわけです。暑かったので、ペットボトルや缶の消費量はすさまじいものだったはず。このあと、パレードですから、空のペットボトルや缶を持って歩いた人はほとんどいないでしょう。
大きなゴミ箱が設置されていて、私はそこに捨てに行ってましたが、主催がベタベタと地面にポスターを貼ってましたし、ヘイトプロテスタントたちも、新聞や雑誌の類いを配布していて、そんなもん、いらんですから、その辺に投げ捨てる人もいるわけです。
左の写真の彼はたしか高校生じゃなかったかな。その足下を見ていただければ、どういう状態だったかわかりましょう。
こういう状態になっていると、他のゴミもその辺にポイ捨てされてしまいます。
日本だったら、ネトウヨやヘイターたちが「LGBTはゴミを出す。あいつら自身が社会のゴミだ」とここを攻撃してくるに違いない。
韓国でもそういう連中はいたかもしれないけれど、おそらくほとんどいない。なぜかと言えばそのことが他者の迷惑になっていないからです。
跡形もなく消えたゴミ
その翌朝のこと。
ソウルでは早起きだったので、朝の6時台に市庁舎前に行ってみたところ、ゴミひとつありませんでした。比喩ではなく、本当にないのです。前日の夢のような時間が夢のよう。
あえて言うなら、前日に続いて、なおヘイト行動をするプロテスタントたちが残っていたのが粗大ゴミだったくらい。
テントの類いは前日片付けていたはずですが、いったいいつ誰がゴミを片付けたんだろ。
ここから我が探求が始まりました。
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