リテラシーの向上だけではデマに対抗できない—BuzzFeedの姿勢を支持する 1-(松沢呉一) -2,968文字-
デマサイトの実情が明らかに
このところ、BuzzFeedが力を入れているデマの検証記事には敬服します。
中でもデマサイト「大韓民国民間報道」の運営者にインタビューをしたこの回は出色です。
赤字だったのかよ。やり方が悪かっただけで、もっと賢いヤツがやれば利益を出すことができるのかもしれないですが、こういうことをしたところで、そう簡単に利益を出せるものではないことを知らしめた意義は十分ありましょう。デマは儲かるらしいと思い込んでいる浅薄なヤツらが真似をすることを防止する効果が少しは期待できます。
この人物はもっとひどい目に遭って、それを引続き公開して社会の教訓になって欲しい。
彼が内情を公開し、サイトを閉鎖する判断をしたのも目的が金だったためでしょう。赤字ですから、やめてもまったく惜しくない。儲かっていたら、意地でも続けた可能性が大です。
月に千円にしかならなくても、デマじゃないことを地道に出していった方が自身のためになるし、面白がる人がいるでしょうにね。なにしろ千円でも黒字ですから、デマで赤字よりずっとマシ。
利用者がリテラシーを高めることは期待できない
Googleもデマサイトに広告を出さない対策を始めてますし、Facebookもシェアの際に警告が出るようになったようです。
GoogleやFacebookが、ひとつひとつ丁寧な検証をする暇があるはずがなく、記事にあるように、機械的に判断するしかない。あとは利用者の通報ですが、どういう方法にせよ。シャレとしてのフェイク記事やフィクションの領域までがその影響を受ける可能性が出てきそうです。
ちょっと前に木野トシキのブログをFacebookでシェアしようとすると警告が出るため、彼はブログ提供サービスを別会社に移動させましたが、あれもURLで判断されていたのだろうと思います。
本当はこんな対策をとらなくても、利用者がリテラシーを高めて、デマ情報を相手にしなければいいだけなのですが、それを期待することは無理です。残念ながら、「上から下」のこういう規制しか有効な方法はなさそうです。
以前、私はネットのデマはいずれ淘汰されると思ってました。テレビや新聞、雑誌が発信する情報を一方的に受け取っていればよかった時代から、情報を精査し、取捨選択しなければならにない時代に移行し、その過渡期においては記事を疑い、考え、調べる癖のない人たちが騙されるだけのことで、リテラシーが高まれば、デマ記事は消えていくと予想してました。つまりは、ネットは今までのようなリテラシーなき人々をリテラシーのある人々に移行させる学習機会を与えるものであるとさえ考えていたわけです。
もちろん、そうなったところで意図してデマを流す人間は出てきますが、相手にされなければそれまで。ただの便所の落書きですし、そうなればデマを流すことのうまみもなくなって、必然的にデマは減るはずです。10年もあればそうなるはず。
しかし、いつまで経っても、デマ記事が減る様子はなく、それを信じる人たちも減りそうにない。むしろ悪質なものが増えていく。ある段階で私の想定は完全に間違っていたと悟ります。遠い遠い将来はわからないとして。
リテラシーの欠落ではなく、リテラシーが発揮されない問題
なぜ私の読み通りにならなかったのか。リテラシーを発揮する環境や条件が失われているってことです。
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