珍しいチンコの話[ビバノン循環湯 439] (松沢呉一)-4,121文字-
一部、「アクションカメラ」の連載に出したが、この形では数年前にメルマガ読者限定のevernoteで初公開。内容はすべて15年以上前のもの。
「変わった客」の話はSMクラブに勝てない
雑誌が性風俗店を取り上げる際の定番ネタとして「変わった客」というテーマがあるが、私はヘルスやイメクラでは積極的にはそういう話を聞こうとはしない。そのネタはどうやってもSMクラブにはかなわないからだ。
カミソリやメスで体を切り刻まれて血の海の中でのたうち回る客、ひたすら金玉を蹴られるプレイだけを望む客、乳首を切断して欲しがる客、縛られて屋上に放置されたがる客、肛門に腕を入れて欲しがる客、頬に串を刺して欲しがる客など、ヘルスやイメクラでは存在し得ない客がSMクラブにはわんさかやってくる。
それに引き換え、ヘルスやイメクラの変わっている客はたいして変わってない。ノーマルの範囲と言っていい。
それでもボチボチ面白い話が出てくるのはイメクラだ。
高田馬場にあるイメクラのコが言っていた話。ここはマジックミラーで女のコを覗いたあとで、そこに乱入してプレイをする趣向である。
「中に入ってきて、何もしないお客さんがいるんだよ。“しないんですか”って聞くと、“覗いている時に出しちゃった”って」
「そりゃ、覗きが好きなんだから、そこで出すのがもっとも興奮する。生身の乳やマンコには興味ないんだろ」
「でも、オナニーをしているところを覗くんじゃないんですよ」
ここはただ寝ているところ、雑誌や本を読んでいるところ、体操をしているところ、泣いているところ、オナニーをしているところなど、覗く内容も指定できる。
「雑誌を読んでいるところを見て興奮するっておかしくないですか」
「どこで興奮するかは人それぞれだよな。オレはちいともわからないけど。オレは乳を揉んでナンボ、マンコをなめてナンボのつまらない人間だからさ」
店のスタッフによると、泣いているところを覗くコースを希望する客もけっこういるらしい。失恋か何かわからないが、部屋で一人さめざめと泣くのを見ると、胸がキュンとするところまでは理解できなくもないが、それでチンコがギュンとするのはよくわからない。
フェチなお客
続いて新大久保にあるイメクラで働いているコの話。
「この店ってフェチが売りだから、すっごい楽な客が多いんですよ。私が脱いだソッスクにチンコを押し付けているだけの人とか。私はそれを見てニコニコしているだけでいいんですよ」
「脱がないのか」
「脱いだらつまらないんだって。足のニオイを嗅がせると、ソックスに射精しておしまい。下着まで見たがる人もいるけど、その人もそれ以上は見たがらない」
「こんなふうにマンコをなめたりしないのか」
「全然。あ、そこ気持ちいい」
たしかに一般のヘルスに比べると、イメクラには変わった客が多いわけだが、女のコは脱がず、勝手にオナニーをして帰っていくのが変わっているんだったら、SMクラブの客はほとんど全員変わっている。フェチの話だって、SMクラブの方がずっと豊富である。
SMクラブに行きつつ、こういうイメクラに行っている人も多いのだろうし、今まではこういうプレイを理解してもらえるのがSMクラブの女王様しかなかったため、やむなくSMクラブに通っていた客が、覗きやフェチに特化した店が出てきて、そちらに流れているということもありそうだ。
実際、SMクラブで聖水をいただいていた客で、最近はオシッコ専門店に行っているのがいる。オシッコが好きなだけで、SMが好きではなかった人は、そっちの方が話が早く、料金も安い。
それにしても、SMクラブにはもっとすごい人たちがたくさんいるので、イメクラでそういう話を聞いてもそんなには驚かない。「へえ」ってだけだ。
(残り 2757文字/全文: 4385文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ