松沢呉一のビバノン・ライフ

オープン風俗嬢とクローゼット風俗嬢—セックスワーカーの集まりで注意すべき点(下)-[ビバノン循環湯 450] (松沢呉一)-3,352文字-

トラブル続出—セックスワーカーの集まりで注意すべき点(中)」の続きです。

 

 

スケジュールを合わせられない

 

vivanon_sentenceそこで今度はもっとこぢんまりと、信頼できる人たちだけで集まる会を開く動きになったのだが、これもまた難しい。風俗嬢の皆さんは、スケジュールを合わせるのが大変なのだ。

通常、学生や会社員の飲み会だったら、平日の夜8時からで問題は生じにくい。会社員は残業があるとか、学生はバイトがあるとかで、2割から3割程度は来られないのが出てくるが、それは次回ということで納得してもらえばいい。あるいは日曜日は休みの人が多いので、日曜日に集まりをやる手もある。家族がいると、家族サービスがあるために時間がとれないというのもいるけれど、それも全体の2割から3割程度だろう。

しかし、風俗嬢の場合は遅番もいる。彼女たちのために店が終る深夜1時からにすると、早番のコたちは翌日のことを考えて出られない。早番でも子どもがいると、夜も出られない。通しで出ているコだと休みの日しか出られない。休みもバラバラだから、どんな曜日のどんな時間にしても、半分以上は無条件に出られないのだ。

その中でも比較的集まりやすい日の集まりやすい時間を探してようやく日程を決定し、飲み屋の予約をとる。

ところが、来ると言っていたのが次々とキャンセルになって、当日になっても、「遅番のコが休みになったので、続けて出なければならなくなった」だの「彼氏と会わなきゃいけなくなった」だの「子どもが熱を出した」だのとドタキャンが続き、10名の予定が半分しか集まらないなんてことになる。

広く呼びかければ、その中で都合のいいのが集まるため、一定の数を確保できるが、よくわからん人たちも集まってトラブルが起きやすい。こぢんまりとやろうとすると、本当にちょっとしか集まらなくなる。皆の都合を聞き、日程を合わせ、出欠を確認し、会場を予約し、それでも集まりが悪くて、主催が自腹で穴埋めをしたりして、続けるのが困難だ。

結局、もともと気心の知れたコたちが数名で集まって飲み会をやったり、カラオケをやったりするだけになってしまった。これはこれで意味があって、「友だちが欲しい」というのがいたら、こういう会に連れていけばよくて、私では解決できない悩みも解決できる可能性がある。

House party, Drinks and 1940s

 

 

うらん組の場合

 

vivanon_sentenceワタシが決めた』や『ぐろぐろ』の文庫などで表紙でイラストを担当してくれた元風俗嬢の佑天寺うらんは現役時代に「うらん組」という風俗嬢グループを結成していた。純然たる遊びのグループで、皆でディズニーランドに行ったりしていたのだが、これもなかなかうまくいかずに自然消滅してしまった。

ぐろぐろ (ちくま文庫)彼女は雑誌にガンガン出ていて、連載も持っており、この会のことも雑誌で告知し、集まりのことをそこで報告していたため、どうしても雑誌に顔出しをしているコたちが中心になってしまう。雑誌に出ているコらは、その前から面識があったり、面識はなくても互いに雑誌で顔を見ていて、書いたものも読んでいるため、話が通じやすいのだが、それ以外のコたちがグループの中に入りにくい。

雑誌に出てしまうので、そもそも取材NGのコは参加するのが恐い。雑誌に出さないで欲しいと申し出ればいいのだけれど、気の弱いタイプはそれが言えずに、現場の空気に流されやすい。

また、そういうコたちが参加したところで、自分は雑誌にも出られないので、肩身の狭い思いをしてしまい、雑誌に出られるコと出られないコとの間にミゾが生じやすい。

ということから、この会は雑誌に出ているコらが中心の会になっていたが、結局、参加したコが所属している店からのクレームで表立っての活動は中止になり、そうこうするうちに自然消滅したんじゃなかったかな。

 

 

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