松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシア社会民主労働党と国家社会主義ドイツ労働者党と国家ボリシェヴィキ党と岡崎体育-(松沢呉一)

 

書くことは考えること

 

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3月6日のMaking-Love Clubのあと、おっさんが若い世代がやっていることに口出ししない方がいいと思いつつ、主宰である中川えりなに、その日のトークについて具体的な例を挙げて、もう少し事前に調べた方がいいとアドバイス。そうしないとどうしても議論が上滑りします。これは最初から私が感じているMaking-Love Clubの課題です。着眼点はいいけど、ツメが甘いのが惜しい。

所詮、一人の人間がわかっていることなんて世界のほんの一部です。残りの「わかっていないこと」は調べないとわからない。断片でしかない報道を見てもわからない。あの世代よりずっと長く生きている私だって、なおわからないことだらけで、わからないことをわかるためには数ヶ月かかったりもします。ナチスがそのいい例です。

あの日、朝までカラオケをして、帰りの電車が一緒になったMaking-Love Clubのスタッフには「公表するかどうかは別にして、言語化する癖をつけた方がいい。なんでもすぐに文章にした方がいい」との話をしました。私がそんな説教じみたことを好き好んで話したのではなく、文章を書くことについて聞かれた流れです。

もやもやしたものをそのままにしておかない。なんか変だなと臭ったら文章にする。そうすると、あら不思議、どこが変かがくっきり見えてきます。文章にしてまとめることで、自分の考えていることがやっとわかり、自分自身に欠落した点が見えてきたりもします。欠落したところは調べて埋めるか、考え抜いて埋めておく。

その癖が身につくと、観たり聴いたり読んだり体験したりしたことの意味がとらえられるようになってきて、その情報の真偽も判断しやすくなり、矛盾点に気づきやすくなります。与えられた情報の先に行ける。あるいは与えられた情報の外で考えられる。

その時に私は「書くことは考えること」と言いました。いいことを言いますでしょ。

 

 

スペツナズとは?

 

vivanon_sentenceその日のカラオケで、私は岡崎体育の「スペツナズ」を歌いました。

 

 

 

これを受けて若者が「MUSIC VIDEO」を歌って、岡崎体育を介して新旧世代の交流が成立しました。この日は「感情のピクセル」も歌ったぜよ。中川えりなはマイペースにちあきなおみと藤圭子を歌ってました。

この時、「スペツナズはナチスの特殊部隊だ」と解説したのですが、正しくは、ロシア軍の特殊部隊でした。お詫びして訂正します。この曲を最初に聴いた時に、「主人公が向かうのはウクライナだろうか」なんてことを考えていたのに、ナチスのことを考え過ぎで、すっかり入れ替わってました。

あんなに偉そうなことを言ったのに間違ってやんの。「いくら調べていても間違いは起きる」「間違えた時は速やかに訂正する」「あとで恥をかくので偉そうなことは言わない」ということも学んでいただければよろしいかと。

 

 

ナチズムと社会主義

 

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前にも書いたように、国家社会主義ドイツ労働者党ロシア社会民主労働党の鬼っ子みたいなものです。ナチズムは、どこから何をどうもってきて作り上げられたのかについてはまだ私は見極められていないところがありますが、ロシア社会民主労働党から生まれたボリシェヴィキにアーリア民族至上主義と反ユダヤを加え、オカルトをまぶしたのが国家社会主義ドイツ労働者党、すなわちナチスと言ってもそんなに間違ってないでしょう(トゥーレ協会はナチスの前身ドイツ労働者党の結成に深く関与していて、この流れからすると、あとから加えたのではなく、ナチスの根幹がオカルティズムということになりましょうが)。

ヒトラーがボリシェヴィキを批判していたのは、ユダヤ勢力が背景にいるという陰謀論に基づいていて、そこを反ユダヤにすげ替えたのがナチズム。

とくに初期ナチスでは社会主義者たちが力をもっていて、左派を形成していたことはすでに見た通りです。

ナチスの旗の赤は社会主義の赤です。

 

 

 

 

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