松沢呉一のビバノン・ライフ

女の立ちションと男の包茎はつながっている—包茎復元計画[4]-(松沢呉一)

包茎の短所を思い出しました—包茎復元計画[3]」の続きです。

 

 

女王様の立ち聖水

 

vivanon_sentence年末年始のゴミ箱掃除として「婦人立小便論—消えた習俗[中]」「便所紙と人肥とズロースと袴—消えた習俗[下]」を出しましたが、あれは何年も前に「ビバノン」の下書きコーナーに入れていたものです。もともとあのパートはFacebookに書いたものだったため、改めて調べ直す必要があって、その踏ん切りがつかずに放置してました。

今回あれを公開しておこうと思ったのは、前回書いた包茎と放尿について考えていたためです。包茎はシッコが散りやすく、溜まりやすい。女もそうです。男はホース状に出るのに対して、女はシャワー状です。尿道が短く、広げないと陰唇にぶつかって、尿が散りやすく、垂れやすい。それが残りやすくもあるので、紙で拭く。

立って尻を広げるか、腰を突き出して陰唇を広げた方が散りにくいはずですから、現に昔はそうしていたように、立ってして紙で拭かない手もあるわけですけど、便器を汚さないようにするには中腰で前に出す方が適しているのではなかろうか。下着を横にずらせば、下に下ろす必要もない。

実際、女王様たちは、聖水を立ったままでする方法でも、顔面に腰を下ろす方法でも、多くの場合はコスチュームを脱がず、横にずらします。終わったあとは紙で拭いて、その紙をM男の口の中に突っ込んでおしまい。もしかすっと拭かない人もいるかもしれない。

脱ぐとM男に全貌を見られてしまうということもありましょうけど、それよりも女王様の着ている衣裳の事情です。上下がつながっているレオタード様のコスチュームだと、上まで脱がなければならない。つながっていなくても、ガーターベルトをしていると、外すのが面倒です。

そのようなコスチュームをつけている場合は、聖水ではなく、トイレで小をする際もその方法をとっていることが多いのだと思います。パンストを履いているとこの方法はとれないので、上下つながったコスチュームをつける時はあまりパンストははかないか、水分を摂らないようにしているかも。今度聞いておきます。

必要に応じて編み出された方法ですが、さまざまな場面に対応することができます。立ちション技術は身につけておいた方がいい。しかし、前に出すにはちょっとしたコツが必要で、その体験をしておらず、教えてくれる人もいないでしょうから、いきなりやろうとしてもできません。できるとさえ思っていない。もったいないなあ。

なんてことを考えているうちに、「そうだ、あの原稿を完成させるか」と思い立った次第。

※参考までにガーターベルトでストッキングをつなげるタイプのコスチューム。Amazonで2,980円。安すぎてちょっと怖い。

 

 

行動的であるはずの袴が立ちションを駆逐した可能性の皮肉

 

vivanon_sentenceいざまとめてみたら、すごく面白い。武家の作法が俗化したという側面もありぃの、和装から洋装への移行もありぃの、便所の変化もありぃの、下着をつけることによってしにくくなったという側面もありぃの、農村型から都市型への変化もありぃの、農村でも人肥を使わなくなったこともありぃの、安い紙の普及もありぃので、さまざまなことが関わっていそうです。

ここでまた女学校が登場するのも面白いなと。そこに関心のある私だからその面に着目しただけですが、女学生の準制服であった袴は、戦闘服であり、礼服でもありました。女が着ることもあったにせよ、どちらかと言えば男の服であったために、当初は女学生の袴に批判もあったようです。

男の着物だって前がはだけますが、ふんどしをつけているので気にしない。その点、明治であればノーパンですから、女は着物はそうはいかない。

袴は前がはだけない分、行動的な服でもあり、自転車だって乗れました(自転車と女学生の絵葉書はこちらに出してます)。

当初女学校の体育では体操やダンスが取り入れられ、ここまでは袴でよかったのですが、激しく動く運動には向かず、やがて女学校で行なわれる競技が徒競走や球技に拡大するとともに、ブルマーが導入されます(スポーツと女学生の服装については「ブルマーかスカートか—女言葉の一世紀 54」を参照のこと)。

 

 

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