猫町倶楽部での質問 [4]/今後の予定は適当—『マゾヒストたち』(16)-(松沢呉一)
「猫町倶楽部での質問 [3]/今もまだ日本人街娼はいる—『マゾヒストたち』(15)」の続きです。
次は何をテーマにするのか
猫町倶楽部の私のトーク部分では、『マゾヒストたち』だけでは話がもたないし、飽きるだろうと思って、「東京ヘビマップ」「銭湯巡り」をここ数年間続けてきたことについても話しました。
「東京ヘビマップ」は去年までで23区内の大きな公園や川、神社は一通り回りました。細かなところは残ってますけど、どうしても行っておきたい場所やもう一度行っておきたい場所も今年中には終わります。
銭湯巡りを始めたのは、全然関係のないテーマから始まって、そちらのテーマは完了しながら、そのうち銭湯を制覇すること自体が目的化したのですが、これもあと30数軒なので、今年中には終わります。
「東京ヘビマップ」も「銭湯巡り」も、「行ったことのない東京に行っておきたい」というのがもうひとつのテーマだったのですが、東京を走っている線路はすべて利用し、7割から8割程度の駅は利用して、だいたいのエリアに足を踏み入れたので、この目的も果たしてしまいました。
懇親会で、本になるかどうかとは関係がなく、「このあとは何をテーマにするのですか」と聞かれたのですが、とくに決まっていることはないです。
包茎や女の立小便のようなテーマはつねに出てきますけど、「東京ヘビマップ」「銭湯巡り」のあと、年単位で取り組むようなものは今のところメドがありません。
東京の銭湯が終わったら、次は埼玉や千葉を制覇しようかと少しは考えていたりもしますけど、そんなに代わり映えはしないので、なにかのついでに行く程度かな。
今回、大阪に行って、大阪の銭湯にも面白いのがあることに気づけたので、今後大阪に行くのが楽しみですけど、次々と潰れているとは言え、人口比で東京と同じくらい大阪には銭湯が残っているので、住まない限り、到底制覇はできそうにない。
こういうテーマは発作的にやってくるものなので、事前にはわからないということもありますし、条件がどんどん悪くなっているので、やりたいことができにくくもなってます。『闇の女たち』は全国各地を毎月のように取材して歩いていたついでにできたことです。『マゾヒストたち』は雑誌があったからできたことです。
その点、「東京ヘビマップ」「銭湯巡り」はそういった条件がなくてもできることです。しかし、このふたつについては「ビバノン」でもたまに書いているくらいなのは読者受けが悪いためです。当初はこれらについても書いていこうと思っていたのですが、読む人が少ないと書く動機が消えます。あとはただただ私の中の好奇心です。
猫町倶楽部では陰毛の話もして、「東京ヘビマップ」「銭湯巡り」よりもこちらに興味を抱く人が多かった印象です。アジア以外では男も陰毛の手入れをするのがデフォルトになっていることを知らなかったという人もいました。
毛に対する反応のよさは「ビバノン」読者と同じ。「毛から世界を見る」シリーズを60回以上やってきたのは需要があったからです。これもおおむね書くべきことは書いた感じかな。
どちらかと言えば私が取り組もうとすることは「出版社の需要」「読者の需要」から外れる方向に進んでいて、たぶん今後もそうなると思いますけど、好奇心はまだ衰えてないので、気の向くまま、なにかしらやるんだろうと予想してます。
※思い切り逆光だったので、うまく撮れなかったですが、大阪でもっとも古いと言われる源ヶ橋温泉の建物。昭和12年に出来て、銭湯としては日本で唯一有形文化財に指定されてます。定休日だったのですが、建物だけ見ておきたいと思って行ってきました。
大阪だと勘が働かないため、ふだん持ち歩かないスマホを持って行ったのですが、人に聞いた方が楽しいので、いろんな人に聞きながら接近して行ったら、おばちゃんが「あそこはもう潰れたんやないかな」と言います。潰れたのではなく、近くに大きなマンションが建設中で、その振動で建物が崩壊する可能性があるので休業中と貼紙が出てました。風呂に入っている時に天井が落ちてきたら大惨事ですから。おそらく工事中は補償してくれるのでしょう。東京にも戦前の銭湯は辛うじて残ってますが、決まって木造の宮造りです。対して関西は石造り。営業を再開したら入っておきたい。
地元の人たちの反応を見ていて面白かったのは、有形文化財であろうとも、この銭湯の認知度はさほど高くないってことです。他の銭湯は知っているのに、ここは知らなかったり。こういうのを面白がるのは観光視点であって、日常的に入るのは新しくて設備が充実している銭湯です。
なお、源ヶ橋は「げんがざきやなくて、げんがさき、げんがさき」とおばちゃんに注意されました。濁らないのです。二度言わんでも。
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