松沢呉一のビバノン・ライフ

セックスワーカー団体の存在意義をコロナウイルスで再認識する—コロナの時代に流行るもの・廃るもの[6]-(松沢呉一)

セックスワーカー救済のためのファンディングが世界各国で始まった—コロナの時代に流行るもの・廃るもの[5]」の続きです。

 

 

 

活動実績のある団体や個人じゃないと適切に配分できない

 

vivanon_sentence前回出したファンディングはほんの一部です。多くは第二ステージが始まってから、つまりここ10日ほどの間にスタートしていて、今なお次々と立ち上がっています。検索して眺めているだけで胸がいっぱいになります。

とくに米国では多数のクラウドファンディングが行なわれていて、エリア単位のもの、業種単位のものもよく見られます。

なんの実績もない母体が始めても信用されず、中には個人が始めたもので、スタートしてから日数が経っているのに、寄付がゼロというのもありました。どういう個人かもわからないので、寄付はできない。

そこそこの金を集めているのは、前回出したように、すでに活動をしている団体が主体か、そこのメンバーや信頼のある個人が主体です。

インドのArundhati Ghoshさんは、どこまでセックスワーク関連の実績があるのかわかりませんでしたが、社会活動家ですから、何も考えずにやったとは思えず、どこかの団体と話をつけて、自分は看板になったのではなかろうか。

なんの活動実績もない団体や個人では、「金をどう使うか」「どう配布するか」もわからないわけですから、いかに真摯な姿勢で始めたものでも信用されないのは当然かと思います。

無闇に金を集めたって、必要な人に届かなければ意味はない。まして、「援助を受けることを条件に、セックスワークをやめる誓約書にサインをする」なんて、弱味につけこむ宗教系、道徳系の団体だったら最悪でしょ。

※2020年3月29日付・伊「Meteo Week」。困窮する売春婦たちに財政援助すべきだとIcrse(International committee for the Rights of sex workers in Europe)などが提訴をしているという記事。

 

 

活動実績のある団体や個人がやる必要性

 

vivanon_sentence活動実績のある団体じゃないと適切なケアはできないです。この活動実績もアカデミズムや道徳に沿ったものではなく、「セックスワーカーが何を必要としているのか」を基盤にしたものじゃなければなりません。

役所と同じく書類を揃えさせるわけにはいかないし、住所不定の人たちこそ困窮しています。どこにどういうグループがあって、外国人ワーカーがどの程度いるのか、さらに詳細に「誰が困っているのか」まで把握していないと判断ができない。

クラウドファンディングを集める主体でも個人までは把握していないので、そこから各グループに委託すると書いているものもあります。どこに委託すればいいのかがわかっていればいい。

私も日本人街娼だったらどこにどういうグループがあるのかある程度わかっていたんですけどね。

このあと日本でもロックダウンになると干上がる人たちが出てきますから、クラウドファンディングをやった方がいいのかもしれないけれど、それに適した団体は限られます。国際的な連帯もしていった方がいいので、世界最大のセックスワーク関連団体のネットワークであるNSWP{Global Network of Sex Work Projects)などに参加している団体の方がよくて、となるとSWASHしかない。

しかし、具体的にシミュレーションをすると、ムチャクチャ大変です。

 

 

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