松沢呉一のビバノン・ライフ

スウェーデン公衆衛生局によると70歳未満の致死率は0.1パーセント—罰則つき外出制限が日本に必要か?[5]-(松沢呉一)

COVID-19の致死率は0.4パーセントまで落ちている—罰則つき外出制限が日本に必要か?[4]」の続きです。

 

 

 

70歳未満の致死率は0.1パーセント

 

vivanon_sentence気分はすっかり脱コロナであり、コロナ禍に関する議論もおもに補償になっていますが、そもそもCOVID-19はどのようなウイルスであり、どう対処するのが正しかったのかについて判断するデータが出揃ってきているので、改めて考えて2波3波に備えておいた方がいいと思っています。間違っていたことは間違っていたと認め、軌道修正をし、次回は間違わないようにするってことです。

それをちゃんとやっておこうと思って、各国が公表しているデータを見ていたのですが、スウェーデン公衆衛生局のページを見ていたら、こんな数字が出てました。6月16日に公表されたものです。

 

 

推定致死率0.6パーセント、70歳以上の致死率4.3パーセント、70歳未満の致死率0.1パーセント

 

 

 

スウェーデンは病院と老人介護施設での対策に失敗をして、とくに高年齢の感染者を多数出してしまい、その分、死亡者が増えてしまったわけですが、表面上のその数字では、COVID-19の本来の致死率が出せず、この報告は「見えない感染」を推測した上での数値です。英語版のアブストラクトしか読んでないので、細かいことはわからんですが。

3月21日から同30日までのストックホルムのデータが元になっていて、報告書にまとまるのに3ヶ月かかっているのは、前回書いたように計算が難しいためだろうと思います。

70代以上を除くと、致死率は0.1パーセント。60代を入れてもこの数字。未治療の場合のインフルエンザの致死率ともはや同じでしょう。

この0.1パーセントには、基礎疾患を持っている人たちが含まれていますから、若くても基礎疾患を持っている人たちは70代以上と同じ扱いにして、対策の最重要対象にすることで、さらに一桁数字を落とすことが可能なはずです。

現実にはスウェーデンはその対策に失敗したために高い死亡者数が続いてしまいましたが、今現在そこに近づいています。

インフルエンザでは重症化する年齢分布が違うため、このような対策は難しくて、世代を問わずワクチンを接種する方が早いですが、ワクチンのないCOVID-19ではこれがもっとも賢い。働く世代は働けばいいし、遊べばいい。引退した世代はそこと接点を持たないようにするってことです。

なお、70代以上の致死率が高いのは、「基礎疾患のある率が高まるため」と「体力・抵抗力の低下」の大きくふたつの要因があって、どういう配分なのかを知りたいのですが、私では計算するのは無理なので、誰かやって。

 

 

スウェーデン方式のメリット・デメリット

 

vivanon_sentence公衆衛生局のアンデシュ・テグネルははっきりと世界の対処は間違っていると言っています。私もそう思います。スウェーデン方式は経済的なダメージが少なく、それによる倒産や失業も抑えられます。

そうは言っても、スウェーデン方式が可能な国は限られるという我が見込みは変わりません。

誰かのせいにしないではいられない人、権威が判断してくれないと自分では判断ができない人が多い国では、個人が対処をすることができないため、強い政府の強い姿勢を欲することになって、スウェーデンのような方法を政府がとると次の選挙で落とされて、強い姿勢の政権が誕生してしまいます。ヴァイマル共和国からナチスへの道。

よって日本では到底無理であり、危険過ぎますけど、スウェーデンのような方法もあり得ることを知り、それによって何が起きるのかを冷静に見ておく必要があります。その上で、日本に応用できる部分があるのではないかと検討する。

強制力のない要請に留まった点は日本はスウェーデンに近いとも言えるわけで、今後、「強制力のある営業停止・外出禁止を」という声が高まった時に対抗できるようにしたい。

スウェーデンも順風満帆ではなく、各国政府がスウェーデンに行くことを控えるように警告を出し、また、スウェーデンからの旅行者を敬遠するようになっています。これによって国内の観光産業や飛行機会社は大きなダメージを受けています。

スウェーデンは経済的停滞が少ない分、余裕があるので、こういった産業については補償をしていくことになるのでしょうけど、スウェーデンの方法が正しくても、他の国が認めない。

 

 

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