中国を真似ていいのは独裁国家だけ—帰国した殺人犯から考えたこと[5](最終回)-(松沢呉一)
「ロックダウンによる餓死者—帰国した殺人犯から考えたこと[4]」の続きです。
買物に来た12歳の少女をも力で潰す香港警察
この間の日曜日は、台風を動きを少し気にしつつ、香港の中継を観てました。289人が逮捕されました。
違法集会と言っても、とくに荒れていたわけではなく、警察は集まった人たちを片っ端から拘束していたように見えました。もはや逮捕する根拠があるかどうかなんてことはどうでもよくなってきています。誰でもいつでも捕まる都市となりました。
家族で買物に来ていた12歳の少女が逃げようとして機動隊に体当たりされ、地面に押しつけられてました(リンク先で動画が見られます。この動画は科大チームが撮ったもので、私は中継では観てません)。家族は彼女がパニックになったと説明しています。彼女はこの前に警察の横暴さを見て怒っていたそうなので、怖かったんじゃないですかね。
2020年9月6日付「立場新聞」
実際、こんなことをする警察から逃げるのは当たり前。何も間違ったことはしていない。
ホントに中国共産党はひどい。香港政府も香港警察もひどい。
ベラルーシは甘かった
最近、ベラルーシからも目が離せません。
以下は8月中旬のダイジェスト映像。
この動画ではよくわからないかと思いますが、ベラルーシのプロテストは、女性三人組による呼びかけから始まっているため、おばあちゃんやおばちゃん、女子学生がしばしば前面に立っています。
そこも注目ですが、ここではマスク率に注目。マスクをしているのは1割もいないでしょう。
スウェーデンのような根拠のあるものではないため、ほとんど話題になってないですが、前に見たように、ベラルーシはノーガード作戦です。感染者は日本と同じくらい。人口は900万人台ですから、日本に比して人口比で10倍以上ですけど、ヨーロッパにおいては飛び抜けて感染者が多いわけではありません。致死率は1%を切っていて、ここは何かからくりがあるかもしれないですが、結局ロックダウンをしてもしなくてもさしたる違いがなかったことを示していそうです。
ベラルーシのプロテストは、不正選挙疑惑がきっかけです。選挙なんてやっているからいけない。中国を見習え。反政府のデモをやらせるからいけない。中国を見習え。それをメディアが報じるのもいけない。中国を見習え。
独裁なんだから、中国のようにロックダウンをして、そのどさくさに反対勢力を逮捕、拘留してしまえばこんなことにはならなかったはずです。中国に比してベラルーシの独裁は甘いのです。
独裁政権を維持するためには、あらゆる自由を制限するしかなくなります。さもないとベラルーシのように独裁が危うくなる。中国のように12歳の子どもでさえ潰す。事実を報じるメディアは潰し、ウソ八百を官製メディアが流す。少数民族は強制収容所に送り込む。ナチスのやったことが中国で進行しています。
中国自身が認めているように、ウイルスに対する中国のやり方は民主主義国家じゃないからできたことです。民主主義国家は真似るべきではありませんでした。
しかし、ウイルスへの恐怖のため、あちらこちらで中国化が進んでしまいました。個人として中国化してしまった人も少なくありません。ベラルーシは中国を真似しなかった点は天晴かもしれない。
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