マスク義務化の弊害さまざま—マスク・ファシズム[17]–(松沢呉一)
「シャルマンのフェイスシールドとフェイスシールドで電車に乗る人とboohooのマスク—マスク・ファシズム[16]」の続きです。
ロックダウンと自殺
フランスは9月12日に感染者数が10,561人に達し、フランス初の1万人超えです。翌日は7千人台に落ちましたが、なお増加し続けると予想されています。フランスの感染者増加は検査を拡大しているといった事情によるものではなく、現実に感染が拡大していることによるもので、陽性率が上がっているのです。
それに伴っては死亡者は増えてないですから、やっぱり諦めるのが最善策かと思います。再度ロックダウンなんてやったらフランス経済は取り返しがつかなくなります。
経済面だけでなく、精神医療関係者からも、再度のロックダウン反対の意見が出ています。前回のロックダウンの経験から、また鬱病が増加し、失業者が増加し、それに伴って自殺者が増加すると。
日本の8月の自殺者は前年比で15%増。昨年に比べると大幅増ながら、2015年の8月はもっと多いので、この増加分がそのままコロナ対策の影響とは言えません。
どこの国でも、ロックダウンによって不安の増加、鬱などのメンタルヘルスの悪化、幸福感の減少が報告されていますし、自殺者は確実に出ていても、データにはなかなか表れない。というのも、一方で自殺者は減少するからです。
自宅勤務になった人たちや学校が閉鎖された生徒たちは、人間関係のストレスから解放されるため、自殺者が減るのです。
この時期が過ぎて、自殺者が増えてきたのだろうとの推測はできますが、正確なことはわからんです。どこまでも正確なことはわからんですけど、新型コロナ対策による自殺者数の概算が出せるのは数年後でしょう。
なお、5月のスウェーデンの調査では、ほとんどの国民はライフスタイルを変更しておらず、メンタルへの影響もないという結果が出ています。ロックダウンしないから不安になるのではなく、ロックダウンするから不安になるのです。国民性もあるので、どこの国もそうだとは言えないですが、「厳しい対策をすればするほど、自殺者が増える可能性」を意識しておいた方がいいと思います。
※2020年9月10日付「NHK NEWS WEB」
マスクだったらなんでもいいという発想の間違い
ロックダウンができないとなると、やれることがもうないので、フランスも8月28日からマスク着用の義務化を実施したわけですけど、義務化に伴って、フランスの教育省は教員向けにマスクを配布したことがまた問題になってます。
普通の布製マスクだったため、ブルターニュ地方保健局は「有効な保護手段とは見なされない」と指摘、教員組合から「サージカルマスクを再配布しろ」と要求されています。
「マスクでも配っておけばいいだろ」と考えたどっかの首相と一緒です。
フランスの義務化はマスクに制限がないため、「マスクはなんだっていい」と考えた教育省と、「予防効果のあるマスクをしないと意味がない」と考える保健局とのズレです。
「スペインのマスク義務化は「意味のない義務化」の問題点を浮き上がらせる—マスク・ファシズム[9]」に書いたように、予防効果のあるマスクに限定した義務化ならまだわかるのですが、「なんでもいいからマスクしろ」という義務化はマスク幻想を高めるだけで、より効果がある対策をしなくなってしまいます。咳やくしゃみで唾液が飛ばないようにするだけだったら手か袖で十分。一般に市販されているマスクや手製のマスクはそれと大差ない。
※2020年9月11日付「SORTIRA PARIS」より
フランスはもともとマスク率が高かった
フランスでは義務化によってマスク率がどのくらい上がったのだろうと思って、以前も取り上げたYouGovで確認してみました。
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