松沢呉一のビバノン・ライフ

ミルクティー・アライアンスとインドネシアのプロテスターたち—ポストコロナのプロテスト[42]-(松沢呉一)

中絶全面禁止を図るカトリック=PiSとそれに反対するウィメンズ・ストライキ(Strajk Kobiet)—ポストコロナのプロテスト[41]」の続きです。

インドネシアに関する記述は3週間ほど前に書いてあったものなので、内容がちょっと古くなってます。

 

 

ミルクティー・アライアンス

 

vivanon_sentenceタイ政府とプロテスターの駆け引きがまだ続いていて、目が離せないですが、実質的な集会禁止令が出たあとに、放水車が登場し、それに対抗して傘とヘルメットが広がってからは香港と完全にダブります。戦術的にも香港を参考にしているようです。

 

 

 

 

違いは5項目の要求を意味する香港の5本指と、全体主義に対する反逆を意味するタイの3本指くらい。

タイのプロテストに対して、同じく自由や民主主義を求める者として黄之鋒が連帯声明を出したのはグッと来ました。

あんまり私はチェックしていなかったのですが、香港、タイに台湾が加わってミルクティー・アライアンス(The Milk Tea Alliance)としてインターネットで結束したって話は面白いなあ。

民主主義、自由、人権を求めるこの3か国のプロテスターが中心ですが、インドもメンバーらしいです。ミルクティーといえばインドを除くわけにはいかないですし、これらの国にとっての共通の敵は中国ですので、そこでもつながってます(始まりはここにあるようです)。

インドはインドで問題が山積みで、あまりに問題が多いので、気楽には触れられない国で、全体としてはヒンディー・ナショナリズムが高まっていて、対中国の闘争心はそれに裏打ちされてもいますから、私はあんまり肩入れしたくないのですが、政府や国全体の話ではなく、その国の民主主義や人権、自由を重んじるプロテスト運動家たちの連携ですから、どこの国でもいい。ミルクティーの需要が多ければ。

ロシア、ベラルーシの民主化運動やオーストラリアの反中国プロテストも入れる動きがあるようですが、ミルクティーの消費量が多くない点で異論が出ているようです。

その点、ネパールもミルクティー文化圏ですし、反政府運動も激しくなっていて、多くの国民が反中国ですから、仲間に入れてやって欲しい。

ミルクティー・アライアンス加盟国ではないですが、メキシコでもナイジェリアでも、自由、民主主義、人権というベタな言葉が重い。ウイルスを恐怖したあまり、それを放棄した世界への異議申し立てがポストコロナのプロテストです。

と言いきりたいところですが、国歌主義者や民族主義者、Qアノンのような陰謀論者のプロテスト、宗教の原理主義からのプロテストも強まっているので、自由、民主主義、人権を守る方向に進むとは限らないのがポストコロナのプロテストです。

英語版WikipediaよりThe Milk Tea Allianceのマップ

 

 

雇用創出法は可決されても抗議はやまず

 

vivanon_sentence

タイに限らず、香港の影響を受けているプロテストは世界中に散見できます。

一見、そのようにも見えるのですが、あんまりクローズアップされていないのがインドネシアです。プロテストが好きなヨーロッパのメディアはインドネシアのプロテストを取り上げてはいますが、香港、ナイジェリア、タイのプロテストほどの好意は感じられません。

ミルクティーの消費が多くないのかもしれないですが、ミルクティー・アライアンス加盟という話も聞きません。香港、タイ、台湾はいずれもインターネットの普及率が9割前後に達しているのに対して、インドネシアはその半分にも満たない(現在4割程度)こともネックになっているかもしれない。

あんまり注目されず、報道も少ないエリアこそ私の出番なので、今回からインドネシアも見ておきます。

インドネシアは行ったことがなく、ほとんど知識もない。しかし、一点のみ興味があります。これは追々見て行くとして、最近のプロテストをまず観てください。

 

 

 

 

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