トランスジェンダーのセックスワーカーが次々と殺害される—ポストコロナのプロテスト[30]-(松沢呉一)
シリーズとしては「血まみれにされた#ENDSARS—ポストコロナのプロテスト[29]」の続きですが、内容は「メキシコのセックスワーカーが直面している危機は何億もの人が直面している危機—ポストコロナのプロテスト[28]」の続きです。
トランスジェンダー+セックスワーカーが殺される国
ラテンアメリカではトランスジェンダーのセックスワーカーが殺される事件が抜きん出て多い印象があります。
チワワ(Chihuahua)州では、セックスワークに従事するトランスジェンダー女性の権利団体Trans Women’s Union Force of Chihuahuaの創設者であり、代表でもあったミレヤ・ロドリゲス(Mireya Rodríguez Lemus)さんが数日間行方がわからなくなったのち、9月2日、遺体で発見されました。
発見場所は自宅でしたが、携帯電話のやりとりから足がついて犯人は逮捕されています。
こう言ってはナニですが、メキシコなのに法律はしっかりしていて、ヘイトクライム法があって、性別に基づくヘイトクライムは過重処罰され、この性別には性自認、性指向が含まれるため、今回のケースでは最長で懲役60年になるとのこと。
トランスジェンダーの活動家の殺害は今年2件目です。メキシコ全土ではなく、チワワ州で2件目。
これに対してセックスワーカーたちと支援者によって、公正な判断を司法に要請する行動がありました。どんな立派な法律があっても、セックスワーカーだと、殺したことがはっきりしていても免罪されやすいらしい。なんちゅう裁判。
以下は「ホルナダ」による映像。
ここにもアナキズム・マークが。次回軽く出てくるように、メキシコのLGBT運動は左翼運動から始まっていて、今もつながりが強いようです。
またも同じ州で殺された
この行動があったすぐあと、今度は同じチワワ州の別の町で、またもトランスジェンダーのセックスワーカーであったレスリー・ロシャ(Leslie Rocha)さんが殺害されています。
以下は立て続けに殺害されて、セックスワーカーたちは恐怖におののいているという内容。
2020年9月6日付「REUTERS」
メキシコには32州ありますから、この何倍も殺されていることになります。
6年間に473名のLGBTが殺された
メキシコのLGBT権利団体Letra Eseが、2013年から2018年までのLGBTの殺害事件を調査した報告書「Informe Crímenes de Odio por Homofobia」を出しており、この6年間に、LGBTであるために殺されたのは473名、年平均79名が殺されています(上の「ホルナダ」の映像には441名と出てましたが、期間の違いだろうと思います)。。
ということになっているのですが、この調査はちょっと注意が必要。「LGBTであるために殺された」のではなく、正確にはたんに「殺されたLGBTの数」です。確実にヘイトクライムが混じっているでしょうけど、「どこまでがそうか」は確定しようがないのです。
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