中絶全面禁止を図るカトリック=PiSとそれに反対するウィメンズ・ストライキ(Strajk Kobiet)—ポストコロナのプロテスト[41]-(松沢呉一)
「中絶をめぐるポーランドの記録的なプロテストとストライキ—ポストコロナのプロテスト[40]」の続きです。
中絶をめぐる長い闘い
ポーランドの中絶をめぐる議論は昨日今日始まったものではなく、以前から、ポーランドのカトリックは中絶の全面禁止を求めてきて、一進一退の攻防が続けられてきました。
リベラル派は制限なしの中絶を求めていて(もちろん、期限はあるとして、理由については問わない)、1997年に「困難な生活条件または妊婦の困難な個人的状況」による中絶を合法とします。
しかし、保守派はこれを憲法違反として訴え、この時も憲法裁判所は違憲とし、数ヶ月で撤廃となります。
2016年には保守派が、中絶の条件として認められてきた「重度の胎児の病気や障害」を外す法案を提出するのですが、反対派は同年10月3日にウィメンズ・ストライキ(Strajk Kobiet)を実施。どんな業種であれ、学生であれ、主婦であれ、女という属性で連帯してストライキをするもの。
この時もプロテストには数十万人が参加し、法案は流れています。
この傘は放水や催涙弾対策ではなく、雨が降っているためですが、これ以降、傘は運動のシンボルになったようです。
ウィメンズ・ストライキの始まりは1970年代らしいのですが、この時のポーランドのストライキがきっかけになって各国に広がって、世界60カ国からなる連合体「国際女性ストライキ(Międzynarodowy Strajk Kobiet)」が結成されています。
以降、断続的に行動は続きます。
カトリック=PiSの動き
「ドゥダ・ポーランド大統領のホモフォビアとLGBTプロテスト—ポストコロナのプロテスト[9]」に書いたように、政権党であるPiS(PrawoiSprawiedliwość)はキリスト教(カトリック)を支持母体とする保守政党で、昨年、PiSを中心とした保守派勢力が、憲法裁判所にこの件を訴え出ました。
アンジェイ・ドゥダ大統領はその支持基盤におもねるようにLGBTに対する攻撃を強めて本年再選されています。大統領選では現職のドゥダとポーランド市長のラファウ・トゥジャスコフスキ (Rafał Trzaskowski)の決戦投票となり、ドゥダは得票率51.03パーセント、トゥジャスコフスキは48,97パーセントですから、僅差です。
コロナウイルスとロックダウンによってもたらされた不安でキリスト教徒たちの保守化が進んだことが影響しているかもしれず、それを読んでLGBTを仮想敵にしたのだとすると、ドゥダ陣営は敏感です。
どの国でもコロナウイルスとロックダウンによってもたらされた不安の中で誰かを、あるいは何かを攻撃対象にしたいとの感情を持つ人たちが増えています。あるいは依って立つ強い存在を欲し、それは国家だったり、民族だったり、宗教だったりするため、その部分を強化することで数パーセントの得票が増えるってことはあるでしょう。
※Strajk Kobietのシンボルマーク
憲法裁判所の決定以降にストライキ
一週間ほど前の10月22日に違憲判決が出て、2016年に結成された団体「ウィメンズ・ストライキ(Strajk Kobiet)」が翌23日から30日までの連続行動を呼びかけます。それが前回見たプロテストの数々です。
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