松沢呉一のビバノン・ライフ

ウィーンの乱射事件と反移民・反イスラムの新しい動きDo5—ポストコロナのプロテスト[53]-(松沢呉一)

ハチャル・フンデッサを殺害したのはオロモ解放軍内アバー・トビー?—ポストコロナのプロテスト[52]」の続きです。

 

 

 

世界に広がるEndSARS

 

vivanon_sentence

ナイジェリアは落ち着きを取り戻し、放火、破壊、略奪の被害に遭った事業所や店舗に対しては国が補償すると発表。警察官や兵士も17名殺されたと大統領は発表してますが、SARSを解散すると発表した以外に具体性は何もなく、そのくせ放火、略奪をした者たちを厳しく罰する旨を述べています。

また、俳優出身の政治家がインターネット規制を言い出して、皆さん、激おこ。たしかに今回、ネットが騒動を拡大して、略奪にまで至った可能性が大ではあれ、その契機はレキ虐殺であって、この真相を究明しないまま、情報を拡散したネットに原因を求めるのは本末転倒で、レキ虐殺がフェイクだと言い張る政府の代弁者でしかない。その政治家もすぐに撤回をしていますが。

レキ虐殺が契機だったとは言え、プロテスター側でも略奪にまで至ったことで直接行動に絶望したのが多いと見えて、「選挙で白黒つけよう」という呼びかけがなされたりしています。これもこのシリーズで取り上げようと思っていたテーマなのですが、「選挙はどこまで信用できるのか」という問題があって、不正選挙が行なわれている国が少なくない。また、負けた側が「不正選挙だ」と言い出して騒ぎになって人が死ぬことがあまりに多くて、ナイジェリアで次の選挙がスムーズに済むとは思いにくい。

ともあれ現在は人が死ぬような状態ではなくなっているわけですが、レキ虐殺はあまりに衝撃的な展開だったため、アフリカ各国だけでなく、ベルリン、ロンドン、パリ、ウィーン、ニューヨーク、トロントなどで、その地に住むナイジェリア人たちがナイジェリア大使館に向けてのプロテストを行なってました。

見た範囲で一番揉めていたのはウィーンです。

 

 

 

 

大使館の職員が説明に出てきて、もみくちゃになっておしまい。説明に出てきた分、誠意があると思うのですが、誠意があるとかないとか、もうそういう話ではないですわね。

この数日前には、ウィーンで反移民勢力がデモをやっていて、移民が騒ぎを起こすと彼らの思うつぼなので、マリファナでも吸って平和的にやった方がいいのにな。

ナイジェリアのMVでは、紙に巻いたマリファナらしきものを回しているところが出てきます。ナイジェリアだったらその辺に生えていそうですから。念のために検索してみたのですが、マリファナは違法ながら、ほとんど黙認状態みたいです。ウィーンがどうかは知らんですけど、ヨーロッパですから、自分で吸う分くらいはやっぱり黙認じゃないですかね。

 

 

シナゴーグを狙った凶行か?

 

vivanon_sentenceそんなことを考えていた矢先に、ウィーンでムスリムによる銃の乱射。

 

2020年11月4日付「CNN

 

単独犯なのか複数なのかもまだはっきりしておらず、シナゴーグが狙われたのではないかとの見方もなおはっきりしないのですが、もうそうだったとしたらバカすぎでしょ。反イスラエル・反シオニズムはいいとしても、ヨーロッパにいるユダヤ人は反シオニズムの人たちも少なくないわけだし、イスラムの指導層とユダヤの指導層が対立を回避すべく奮闘していることも見てきた通り

イスラム国がイスラムを代表するわけではないにせよ、ユダヤ人虐殺を夢見てナチスを肯定するムスリムが少なからずいます

今現在の反ユダヤの中心はムスリムであり、ネオナチは反ユダヤではなく、反ムスリムです。反ユダヤを捨てたわけではないにせよ、優先順位は圧倒的に反ムスリムが上。

これがウィーンで起きたことにも怖さがあります。

 

 

 

next_vivanon

(残り 1761文字/全文: 3376文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ