松沢呉一のビバノン・ライフ

国際コールガール組織構想—夫の知らない妻たちの顔[下]-[ビバノン循環湯 571] (松沢呉一)

結婚してから風俗の世界に飛び込む事情—夫の知らない妻たちの顔[上]」の続きです。

 

 

 

国際結婚した風俗嬢の知人

 

vivanon_sentence世の中のイメージと違って、風俗嬢には逞しいのが多いもの。風俗の仕事を経て、逞しくなっていくのもいる。多くはその過去を伏せているが、風俗の仕事のあと、別業種で活躍している人たちもいて、それも風俗で養った逞しさをバネにしているのではないかと思えたりもする。

おそらく風俗経験で逞しくなった知人が、先頃結婚した。相手は外国人である。どこの国か書くと身元がバレかねないので秘密にしておくが、もともと彼女はその国に日本人の友人がたくさんいて、遊びに行っているうちに、向こうの男と恋に落ちた。

夫やその親族だけでなく、向こうの国にいる日本人の友人たちは、彼女がずっと風俗仕事をやっていたことを知らない。日本にいる時も、風俗関係の知人とそれ以外の知人が混じり合っておらず、風俗嬢としての彼女を知っている人は、あちらの国で行われた結婚披露宴にも招待されなかった。風俗嬢としての彼女と知り合っている私ももちろん招待されなかった。招待されたところで、気楽に行ける距離ではないんだが。

彼女は世間一般の風俗嬢のイメージとは全然合致せず、顔立ちは派手めだが、化粧も髪型も格好も派手ではない。私らの前では下品なことも口走ることもあるが、上品な物腰で、知的な雰囲気もあって、事実、頭がキレる。そうと言われなければ、あるいは言われても、多くの人には長年風俗嬢をやっていたとは信じられまい。

顔を隠して裸で雑誌に出てもらったことはあるし、私の原稿には匿名でよく登場していたのだが、雑誌には一度も顔を出したことがない。仕事とプライベートの一線をはっきりと分けていて、仕事の場で知り合っていて、こうも長くつき合っている私はかなり珍しい存在のはずだ。しかし、この私もプライベートの彼女のことはあまり知らず、「結婚したんだよ」との報告をもらうまで、そんな男がいることも、その国に頻繁に遊びに行っていることも知らなかった。

その戦略がうまくいって、玉の輿というほどの金持ちではないにしても、夫はかなりの収入があるようで、あちらで優雅な生活をしている。たいしたヤツである。

慎重に行動する彼女なのだが、一方で、おっそろしく大胆でもある。

※Henri de Toulouse-LautrecStudy of a Woman

 

 

新婚早々の告白

 

vivanon_sentence結婚をして日本を離れてから、時々、国際電話をくれていた。

ある日の国際電話。

「あのさあ、私って、ずっと風俗の仕事をやってきたから、なんとか続けられないかと思っているんだよ」

新婚の妻が言うセリフとは思えないが、昔から、こういう女である。

彼女は学生の時に性風俗の世界に入って、以来、それしかしたことがない。10年以上、その世界でやってきて、そこで培ったノウハウを活かせなくなった生活はどこか空しい。どんな仕事でも、そこにやりがいを感じていたら、結婚後にも続けたいと思うのは自然なことだ。

 

 

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