自身をゾフィー・ショルやアンネ・フランクに喩えただけで大臣や警察までが乗り出すドイツの怖さ–ポストコロナのプロテスト[70]-(松沢呉一)
「ネパールの反中国感情が表面化—ポストコロナのプロテスト[69]」の続きです。
自身をゾフィー・ショルやアンネ・フランクに喩えただけで刑事犯?
11月23日に、ドイツのハノーファーで、こんな騒動がありました。
ロックダウンに抵抗する自分をナチスに抵抗したゾフィー・ショルに喩えたところ、妨害が入って、彼女は泣き出して壇上から降りてしまいます。
彼女はこう言っただけです。
はい、こんにちは。私はカッセルのヤナです。私はゾフィーショルのように感じます。ここで何ヶ月もプロテストに積極的に取り組み、スピーチをしたり、デモに行ったり、チラシを配布したり、イベントを登録したりしています。
カッセル(Kassel)はドイツの都市名。
彼女は時間を置いてもう一度壇上に出てきてこう言っています。
通りすがりの人などに侮辱されたことにショックを受けた(略)。本当にソフィー・ショルのように感じている。
以上はこちらの記事の自動翻訳に手を加えたものです。
これとは別の集会では、11歳の少女が誕生日パーティをこっそりやらなければならなかったことをアンネ・フランクに喩えて語り、どちらも支持する人たちがいる一方で、強く批判されてもいます。
外務大臣が乗り出すわ、警察が乗り出すわ
ハイコ・マース(Heiko Maas)外務大臣までがこれらについてツイートしています。
https://twitter.com/HeikoMaas/status/1330460397032366082
今日、ゾフィー・ショルやアンネ・フランクと自分を比較する人は誰でも、ナチスに立ち向かう勇気を嘲笑しています。これはホロコーストを偽装し、耐え難い歴史の忘却を示しています。コロナの抗議とレジスタンスファイターを結びつけるものはありません。何も!
以下詳しく説明していきますが、比喩表現がどういうものであるのかも考えたことのない頭の悪い人物がドイツの外相であることはよくわかりましたし、ドイツでは、自分や他者を過去のどんな人物になぞらえてもその人物を嘲笑していることになるとの宣言です。あるいは国家の決定に従わない行動をする国民には難癖つけて潰してやるとの宣言です。
さらに警察までがホロコースト否定の刑事犯罪に該当する可能性を捜査すると発表。民衆煽動罪の容疑でしょう。ホロコーストを否定しなくても、矮小化もまた対象になるのです。
ホロコーストの否定を法で禁じることの疑問がないわけではないのですが、陰謀論に簡単に流れる人々を見ると、しゃないのかと思ったりもします。そこはいいとして、では、このような比喩が矮小化になるのかどうか。比喩の機能から言ってなるわけがない。
言論に対する規制は拡大しないように要件を厳密にしなければならないことを見せる格好の例ですし、このような法はタブーを作り出す結果をもたらします。
Querdenken711とは?
上の動画の集会は、ミヒャエル・バルヴェク(Michael Ballweg)という人物が代表のQuerdenken711というグループの主催です。Querdenkenは「水平思考」のこと。既存の考え方にとらわれず、その外側にある多様な視点でとらえなおすってことです。この団体をどう評価するのかは別にして、私も日頃心掛けている考え方です。
Querdenken711はアンチ・ロックダウンのグループであり、サイトはこちら。このサイトでは、極右でも極左でもないと冒頭で掲げられていて、暴力も否定。下の方でアンチセミティズム(反ユダヤ主義)も否定しています。
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