松沢呉一のビバノン・ライフ

高嶋政宏は自分で書いた本を出すといい—高嶋政宏著『変態紳士』[追加編2]-(松沢呉一)

変態は早咲きがいいのか遅咲きがいいのか—高嶋政宏著『変態紳士』[追加編1]」の続きです。

 

 

 

誰もが高嶋政宏になれるわけではないけれど

 

vivanon_sentence前回書いたように、早く目覚めた方が安全だし、自分をわかっているので、コントロールがしやすい。しかし、私の「性欲低下に伴って見えにくかった欲望が浮上する説」からすると、早く目覚めようにも目覚められない人もいます。歳をとってからでも、暴走しないようにセーブしつつ、ちょっとずつ語って、ちょっとずつ人の話を聞いておくのがいいと思います。

相手かまわず語って嫌がられ、本にまでしたのは高嶋政宏もまた遅咲きの暴走をした結果か。しかし、暴走しても死人が出ていないのはやはり実績のある俳優だからであり、それを容認する事務所(夫婦ともに東宝芸能)や妻に恵まれているからであって、芸能人であってもなかなかできない。、

その果てに俳優としてもこんな役をやっているんですね。

 

 

 

 

真似をしようとしても真似できないですけど、人の真似をしても意味がないことを語っているのですから、真似をしようとしなくていいのです。

全部観ないと、どういう役かわからないですが、明らかに笑いをとる役どころです。紫のパンツってところが変態ぽい。

 

 

表紙の打ち出しはマゾ

 

vivanon_sentenceこれとも関わるのですが、あの表紙はちょっとひっかかりました。いい意味でもなく悪い意味でもなく、「あれ?」と思いました。

全裸に首輪はマゾの衣裳です。あとは体にルージュで「ブタ」「糞マゾ」とでも書けば正装です。

四半世紀前くらいまでは、雑誌のグラビアで、パンツ一枚で首輪をしたM男を女王様が連れ歩くなんてことをやることがありました。犬の散歩ですが、今だと通報されるでしょう。一般の映画でも、そんな撮影をする場合は通行人を完全にストップして、見られないようにしないと通報されかねない。すぐに通報する行動が市民に定着したのだと思います。

今でもSM専用のラブホテルだと、全裸に首輪で廊下を歩かせるような人たちがいますし、パーティでもそういう光景は見られます。イヌやブタの設定ですから、M男さんは人の言葉は禁じられてブヒブヒ言ってます。

女王様のボンデージは拘束具からの発展なので、女王様で首輪をつけるのがいてもそんなにおかしくないですけど、男のSはまずつけない。

高嶋政宏はM性があるにせよ、自認としてはSだと言ってます。だから緊縛講習にも行っています。SMショーが好きなのも、縛られているM女が好きだからです。だったらダンディな格好をしてサングラスをして縄を手にした緊縛師らしい格好をしてもよかったはず。

ここは記号としての効果なんだろうと思います。打ち出しはSでもMでもなく、「変態」です。男の場合、SよりMが変態の記号になります。女は女王様の方が記号性が強いでしょう。ヒールをはいてボンデージ姿でムチを手にすれば変態記号は完成。

銭湯のイメージを出すには木造で富士山のペンキ絵があるのが簡単確実。映画やテレビの舞台に、鉄筋のマンションの1階にあるタイル絵の銭湯は起用しないのと一緒です。

 

 

 

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