松沢呉一のビバノン・ライフ

ベラルーシのスリッパ革命と反ゴキブリ・プロテスト—ポストコロナのプロテスト[79]-(松沢呉一)

感染者数に照らしてもベラルーシのプロテストはコロナ対策への不満とはほぼ無関係—ポストコロナのプロテスト[78]」の続きです。

 

 

巨大ゴキブラーにスリッパで闘うプロテスターたち

 

vivanon_sentence8月の選挙のあとの盛り上がりは日本でも報じられていた通りですが、反政府デモは拡大の一途。警察なり軍なりの暴行のひどさ、また、逮捕後も暴力が続き、逮捕後に数十名の行方がわからなくなっているとも言われてました。

ここまでを見てもおわかりのように、ベラルーシの警察なり軍はただの暴力集団であり、平気でウソを言いますから、行方不明についても一笑に伏すことはできないように思います。

8月23日。

 

 

この映像では反独裁旗が多数出ていることがわかります。

ゴキブリの絵が出ていますが、これはルカシェンコ大統領のことです。セルゲイ・チハノフスキーの発案です。

1921年、ロシアの詩人コルネイ・チュコフスキー(КорнейИвановичЧуковский)によって発表された子ども向けの詩「タラカニッシェ(Тараканище)」に基づいています。この詩はロシア圏ではよく知られるものらしく、巨大なゴキブリの独裁者が支配する世界の話。哺乳類も支配されているのですが、最後はスズメに食べられます。

タイトルのタラカニッシェはモンスターゴキブリの意味。ロシア語でゴキブリはタラカン(таракан)で、接尾語がつくと、「ゴキブラー」みたいな感じじゃないでしょうか。

チハノフスキーが立候補する際にも「ストップ・ゴキブリ(Останови таракана)」を掲げていました。プロテスターたちの中にはスリッパを手にした人たちがいるのはこれを踏まえていて、反ルカシェンコ・プロテストはスリッパ革命(Тапочка Revolution)とも言われています。

※英語版Wikipediaより「タラカニッシェ」。これがオリジナルの表紙のよう

 

 

ウィメンズ・マーチにも暴力行使

 

vivanon_sentenceベラルーシのプロテストの特徴は女性参加者が目立つことです。

女性グループの呼びかけによるウィメンズ・マーチ(Женский марш)も行なわれています。

 

 

 

この段階では平和的なデモなので、あんまり再生回数は多くないですが、後半、チハノウスカヤも出ています。たぶんリトアニアから自分で配信した動画です。プーチンも出ていて、なんか言うとります。短髪の人が呼びかけ人の一人だと思います。

ここでもマスクに注目。マスクをしているのは警察または軍隊で、参加者はせいぜい1割程度。つけている人も 口の下に下げています。移動していますから、これでよし。

おそらくここには戦略もあって、警察が手を出しにくいようにしていたのだろうと思うのですが、9月に入って警察は女たちに対しても暴力を行使し、多数逮捕されています。

9月12日。

 

 

ベラルーシの場合は即日釈放にはならないかもしれないし、一生戻って来ないかもしれない。

 

9月13日。

 

 

 

警察か軍隊のマスクをとろうとしているシーンがありますが、あれは顔を写真に撮って公開する作戦です。そうはうまくいかないでしょうし、それで逮捕されかねない。

こういうことになってくるとマスク率が上がります。それでも1割から2割か。警察は拘置所や刑務所で意図的にウイルスを感染させるという噂もあってのことです。

 

 

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