松沢呉一のビバノン・ライフ

香港のロックダウンと強制検査—ポストコロナのプロテスト[96]-(松沢呉一)

ウクライナのタレント大統領ゼレンスキー—ポストコロナのプロテスト[95]」の続きです。

 

 

香港初のロックダウンと強制検査

 

vivanon_sentence香港のプロテストはコロナ禍で完全に潰された感があります。中国政府の規定路線ではあっても、コロナ禍がその路線実施に勢いをつけたと言っていいでしょう。「パンデミックは民主主義を強化した」と言っているような人々は香港の現在を見ていないのではなかろうか。いったいどこが強化されたと。

私としても、香港を直視するのは辛いのですけど、なお闘いは続いているとも言えますので、「ポストコロナのプロテスト」で取り上げておきます。

昨日の早朝で終了しましたが、香港の一部で23日から25日までの48時間、香港初のロックダウンが実施されました。

 

 

 

 

昨年11月以降、香港全域でコロナ対策としての規制は強化されていますが、今回は九龍の中心部である佐敦(Jordan)周辺のエリア限定の完全封鎖で、最大9千人と見られる住民と、ここ2週間以内にこのエリアに一定時間立ち寄った人は全員強制検査。 「もっと検査しろー」とうるさかった日本の検査厨の理想郷到来。黙っていてもあっちから検査に来てくれるんですぜ。

実際に検査したのは約7千人で、陽性はたったの13人。香港の全人口の千分の一ですから、13人でも十分に多いとは言え、やる必要あるか?

これが前日に発表されるや否や逃亡した人たちもいたようですが、多くの人はこの情報をつかみ損ねていたようです。

中国のやり方を香港に適用ってことです。中国のウイルス対策を称賛する人々にとってはこんなことで刑事罰にできるのも羨ましくてしょうがないことでしょう。逃げた人たちを突き止めて逮捕しかねない。違反者は25,000香港ドル、日本円で30万円以上の罰金と懲役6ヶ月です。

中国本土と違って、今回のロックダウンではエリアから出られないだけで、外出は可能だった分、まだしもゆるいと評価するしかないのが悲しすぎます。

ちなみにマスクは昨年7月に義務化され、違反すると645香港ドルの罰金。日本円で9千円弱。「マスクしろ」「鼻を出すな」とマスクの意味もわからないまま騒ぐマスク厨にとっても理想郷。

※2021年1月23日付「風傳媒」 ロックダウン初日の様子を伝える台湾のメディア。これによると、キャリー・ラム(林鄭月娥)行政長官は、昨年7月に「(ロックダウンのような)極端な方法は決してとらない」と言っていたそうです。信用できるはずがないです。

 

 

香港全域でやるつもりらしい

 

vivanon_sentence強制検査は今回が初ではなく、すでに小規模には行なわれていたようです。今回は、このエリアの下水からウイルスが発見されたということから、大規模強制検査ということになった模様。下水云々は本当かどうか知らないですが、衛生環境が悪いのは事実。

上の動画内で説明があるように、この地域は古いアパートが立ち並んで、狭い部屋をつなぐ通気口から感染が拡大しやすいとされています。部屋と部屋とが通気口でつながっているとすると、大部屋に多数の人がいる状態と同じになりましょうね。

このエリアには貧困層や南アジア(おそらくインドやネパール)からの移民が多い。一方でアッパークラスが多数集まっているクラブは放置されているため、その不公平さが批判されていますが、集会も現在実質禁止されているため、そんなんでデモをやったらすぐ捕まります。

そもそも住宅難を解消しない香港政府に対する不満もあるのですが、そんなんでデモをやったらすぐ捕まります。

店も営業できなかったはずで、その補償はどうなるんだろうと調べてみても、見つかりませんでした。土日でも、ここに住んで別の場所の職場に行かなければならない人たちもいるわけですが、「休んだ分の給与をカットするようなことはしないように」と香港政府が言っているだけ。カットしたところで罰則も何もありゃしないようです。しかし、そんなんでデモをやったらすぐ捕まります。

※2021年1月25日付「REUTER」 中国版ロイターの日本語記事

 

 

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