チュニジアのフェイスマスクとブルカ・ニカブ・ヒジャブの関係—ムスリムの女性が頭部を隠すことの議論を整理する[1]-(松沢呉一)
「チュニジア革命(ジャスミン革命)から10年目のプロテスト—ポストコロナのプロテスト[112]」の続きなのですが、広くはプロテストに関わりつつ、新型コロナとは離れるので、以降は独立させました。
チュニジアのプロテスターはヒジャブ率がムチャクチャ低い
プロテストの動画を観た範囲で、チュニジアはイスラムが国教のわりにブルカ(برقع)やニカブ(نقاب)は皆無で、ヒジャブ(حجاب)がわずかに見られるだけです。
たまたまかもしれないと思って別の動画もチェックしました。
以下は1月26日。
マスク着用率は、口の下に下げているのを含めても3割から4割程度。前回の動画でもそうでしたが、とくに若い女子はマスクをしていないか、マスクを下げて口を出しているのがよくいます。これだけの近距離で位置が固定されて、あれだけの声を出す場合はした方がいいとも思いますが、あとはそれぞれの判断で。
前回の動画ではわずかに見られましたが、この動画ではヒジャブはゼロです。頭を覆っているのはパーカーのフードです。パーカーのフードでも頭部を隠すことはできるとしても、アラブ社会でもヒジャブとは見なされないのではなかろうか。国によるか。
さすがプロテスターと思ったのですが、観光の動画やMVをチェックしたら、中年以上で時折ヒジャブが見られる程度で、ブルカやニカブは皆無。若い世代ではヒジャブもあまりいない。革命後の世代はほとんどしないようです。都市部とそれ以外はまた違うでしょうが、チュニスではそういう状態(そのうち数字が出てきますが、チュニジアでのヒジャブ率は2割台)。
ここで改めてブルカとニカブとヒジャブについての説明。
ブルカは顔がすべて隠れるもの。目の部分も隠されて外からは顔が一切見えない。ここに出した写真がそうです。
ニカブ(ニカーブ)は目だけ出ているもの。スリットがあるだけで、ほとんど目が見えていないものと、目から下はパーツが別になっていて、比較的広く目の周辺を出すものなど種類があります。それぞれ名称が違うようですが、省略。
ヒジャブ(ヒジャーブ)は顔は出ていて頭部だけを覆うもの。日本で見られるのはほぼヒジャブだけでしょう。東京だと新大久保によくいます。
名称は国によっても違っているのですが、以下、この定義で言葉を使っていきます。
フランスを筆頭にこれらを法で禁じる動きがここ20年くらい進んでいますが、国によってこの3種のうちの何を禁じているのか、どの場所で禁じているのかが違います。
また、この3種はざっくりどれもムスリム女性の衣裳とされていますが、正確にはその位置づけも違います。
私自身、理解していなかったところもあるので、さらに整理をしつつ、フランスの例を確認します。
※Wikipediaよりアフガニスタン女性のブルカ
ブルカ・ニカブ・ヒジャブ
それまでにも繰り返し議論にはなっていたのですが、2004年、「フランスの公立学校における宗教的シンボルに関する法律」(Loi sur les signes religieux dans les écoles publiques françaises)が制定されて、大きな議論になりました。
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