松沢呉一のビバノン・ライフ

銭湯で感じるコロナ禍の影響—新・銭湯百景[10]-(松沢呉一)

銭湯がブームなんだってよ—新・銭湯百景[9]」の続きです。

 

 

たしかに銭湯に行く人が増えているみたい

 

vivanon_sentence前回の椎名町・妙法湯に行った数日後のこと。

何度も来たことがある銭湯がえれえ混んでました。ロッカーが足りないってことはなかったのですが、椅子が足りない。洗面器はあったので、椅子がないまま、しゃがんで体を洗いました。椎間板ヘルニアで足が痺れてますけど、しゃがむのが辛いってことはない。

数えてみたら、ここはカランが27あって、椅子が15しかない。洗面器は17。洗い場だけで16人いたわけです。

知る限り、ここはどの曜日のどの時間帯でも客が1人か2人しかいないってことはない程度には客が入っています。この日は日曜日で、住宅街にある銭湯はどこも日曜日は混みますが、それにしてもこんなことは初めてです。

椅子が15しかないのは、それで足りるからであって、これだけ人がいるのは異例ってことがわかります。

とくに休みの日に娯楽として銭湯に行く人が増えているかもしれない。

これは場所によりけりではあって、人形町に職場のある人が「昨年、人形町の世界湯が潰れたのは日本橋界隈のサラリーマンたちが自宅勤務になったためではないか」と言ってました。入浴料が100円になる日が毎月あって、彼も時々行っていたそうです。

他の場所でもそれらしき人たちを見かけますが、外回りのサラリーマンが一仕事終えて、社に戻る前に風呂に入ったり、深夜まで残業なので、晩飯に出たついでに風呂に入ったりするものです。

実際のところ、世界湯は、何が理由で廃業したのかわからないですが、近隣の会社で維持されている銭湯は厳しいことは間違いなくて、仕事の合間や終わったあとにジョギングをする人たちの更衣室として使われている千代田区の銭湯も客が減っていそうですから、1割か2割程度の近隣住民の客数が増えたところで維持できない銭湯もありそうで、喜んでばかりはいられません。

※この写真は前回の妙法湯

 

 

女装のおじさん

 

vivanon_sentenceこれとはまた別の日の別の銭湯。

洗い場にいたら、脱衣場に黄色い髪の毛のボブカットの人物が入ってきたのが見えました。背が高かったので、「女だ」とは思わず、「女装の人か」とすぐに判断できました。手術前のトランスジェンダーっぽい人はいますが(手術代を貯めるために風呂なしのアパートに住んでいたりする)、女装の人は相当に珍しい。女に見えたら男湯に入れないですから、女装のまま来ることはまずない。距離があるのではっきりとはわからなかったのですが、服は男物だったかも。

やがて洗い場に入ってきたのですが、50代か60代と思わしきおじさんでした。素人女装ではなく、プロだと判断できました。というのも、ウィグを外しても、髪の毛が長いのです。その時は縛っていなかったですが、ウィグをする時は縛ってウィグの中に入れているのだと思います。

 

 

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