松沢呉一のビバノン・ライフ

エクスティンクション・レベリオンは貧困層のことなど頭にない社会運動—ポストコロナのプロテスト[ボツ編3]-(松沢呉一)

香港のエクスティンクション・レベリオン/北京のエクスティンクション・レベリオン—ポストコロナのプロテスト[ボツ編2]」の続きです。2020年9月に書いたものです。

 

 

 

白人中産階級の運動

 

vivanon_sentence私が気づいたこと以外でどんな批判が出ているのだろうと気になって、XRに対する批判を拾ってみました。

XR(エクスティンクション・レベリオン)に対する批判は日本語版Wikipediaではカットされていますが、英語版Wikipediaに何点か掲載されています。

その中に、白人中産階級の運動でしかないという批判がありました。そこは想像していませんでしたが、これがもっとも大きなXR批判になっています(現在は新聞社の印刷所をターゲットにしたことでしょう)。

現に参加者の多くは白人であり、有色の人々の参加は少ない。しかし、これはやむを得ないかと思います。そんなことをしている余裕がある層は白人の中産階級ですから。もしXRが有色の人々の参加を拒むようなことがあったら別として、門戸を開いているのに生じる参加者のアンバランスについて差別だとするのは難癖。

立候補するのが少ない結果、男性議員の方が女性議員より多いことを差別だとするのが難癖であるのと同じです。その背景に差別があって、その反映であるなら、その背景を改善するしかない。

XRは逮捕されることを前提とし、逮捕を名誉だとする活動をするため、逮捕時や拘留時に警察の扱いに差があり、また、外国人労働者として働いている人たちは国外退去になりかねないため、そのリスクを引き受けることが難しいという指摘もあって、これもその現実の結果を反映しているに過ぎず、そのことをXRが非難されるのは筋違いだろうと思います。

しかし、この批判が高まったのは昨年(2019)10月の行動がきっかけであり、これを見ると批判は当たっていそうです。

 

 

 

 

電車をとめようとしたXRのメンバーを乗客が引きずり下ろしています。

この路線は労働者階級が通勤に使用しているものだそうで、乗客たちの様子からそのことが見てとれます。移民や外国人労働者が多そうです。環境保護のためには、末端の労働者や移民は不便を受け入れろという運動でしかない。そのことを瞬時に見抜かれました。

バナーに書かれた「いつも通りの仕事=死」(Business As Usual = Death)は彼らのキャッチフレーズですが、働かないと生きていけない人たちにそれを見せて何様のつもりだ。金持ちが住むエリアで高級車の前に寝転んだ時に出せよ。

XRには大学の研究者が参加していたりもして、この動画を見ても、それっぽくも見えますが、電車を利用している人たちよりいい給与をもらって、車も持っていたりして、長期の休みは飛行機に乗って学会に出席したりして、そのついでにバカンスを楽しんでいたりするわけですよ。知らんけど。

自分はCO2を出すような仕事をしておらず、生徒に環境問題を伝えているから偉い人って思い上がりがこういう行動を支えてます。これも知らんけど、ここでやったことは、そういうふうに見えてしまう。

支持を失う行動であっただけでなく、労働者階級を敵に回し、人種や階級の対立を煽る行動になってしまって、これは労働運動や反差別運動のみならず、内部からの批判も生み、謝罪をしています。

 

 

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